2009/05/25

Saya's 薬学ニュース vol.97-「マスクは効果乏しい」 英紙、交換必要と報道/乳がんの新治療薬を承認/ワーファリンの過量投与で薬局に家宅捜索/スイッチOTC候補18成分を8月末に審議へ/感染研が「新型インフルエンザ」情報サイトを開設/コーヒー飲みアルツハイマー病予防?…カフェイン効果に期待

<Today's news>
1. 「マスクは効果乏しい」 英紙、交換必要と報道
2. 乳がんの新治療薬を承認
3. ワーファリンの過量投与で薬局に家宅捜索
4. スイッチOTC候補18成分を8月末に審議へ

5. 感染研が「新型インフルエンザ」情報サイトを開設
おまけ. コーヒー飲みアルツハイマー病予防?…カフェイン効果に期待

「マスクは効果乏しい」 英紙、交換必要と報道
2009年4月30日-m3.com 提供:共同通信社  ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
新型インフルエンザをめぐり、英紙デーリー・エクスプレスは、マスクを着用しても感染を防ぐ効果は乏しく、大量の使用済みマスクがかえって被害の拡大を招く恐れがあると報じた。「マスクはぬれるとウイルスが侵入しやすくなるので、1日に2度は交換する必要がある」と指摘。その上で「(ウイルス)感染の疑いがあるマスクの大量処分は、重大な公衆衛生上の危険を招く恐れがある」と警告している。

感染予防にはマスクというのが、いまや日本の常識となっているが、この見解も納得である。確かにマスクの扱い方をきちんと知っていなければ、せっかくの予防効果がかえって感染率を上げてしまう可能性もないわけではない。マスクマスク!という呼びかけではなく、医療機関で購入される方に対しては、きちんとした使い方も同時に説明が必要のように感じる。

乳がんの新治療薬を承認

2009年4月30日-読売新聞
[要約]
乳がんの新しい治療薬「タイケルブ」(一般名ラパチニブトシル酸塩水和物)が22日、承認された。乳がんのうち、2~3割の患者は、HER2(ハーツー)という遺伝子が過剰に働くことで、がんが増殖する。同様の効果がある抗がん剤ハーセプチンが効かなかったり、治療後に再発したりした患者が対象。6月には保険薬価に収載され、使えるようになる見通し。

ワーファリンの過量投与で薬局に家宅捜索
~東京都足立区の「東京医療第一薬局」、業務上過失致死の疑いで~
2009. 5. 1-日経DI

[要約&コメント]
抗血栓剤のワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)の量を間違えて多く調剤し、同薬を過量服用した82歳の男性患者が死亡した疑いが持たれている。調剤過誤が起きたのは、2008年8月13日。
ワーファリンの1回量は1.5mgを誤って1mgの錠剤と5mgの錠剤を一包化してしまったのが過量投与の原因だ。

調剤過誤に関するニュース。薬局での仕事は、他の一般的な販売とは違い人の命を危める可能性のあるものであることを、改めて再確認させられる悲しいニュースである。同じミスで大切な命を失うことのないよう、この手のミスの改善方法を再検討していただきたい。薬により亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

スイッチOTC候補18成分を8月末に審議へ
2009年5月1日 (金)-薬事日報

[要約&コメント]
厚生労働省は27日、スイッチOTC化を進める医療用医薬品の候補として、プロトンポンプ阻害薬のランソプラゾール、オメプラゾールなどを含む18成分を発表した。厚労省は、一般用への転用が適当と考えられる成分について、▽有効性▽安全性▽転用が適当と考えられる理由――などの概要の取りまとめを日本薬学会に委託。
今回、日本薬学会が選定した18成分は以下の通り。
▽フルルビプロフェン=抗炎症薬 
▽ナジフロキサシン=抗生物質含有製剤、経皮 
▽レバミピド=胃粘膜保護薬、内服 
▽コレスチミド=コレステロール吸収阻害薬、内服 
▽ベンダザック=抗炎症薬、経皮  
▽クロベタゾン酪酸エステル=副腎皮質ステロイド、経皮 
▽トラニラスト=抗アレルギー性点眼薬、点眼 
▽アンレキサノクス=アレルギー用鼻炎等用薬、内服 
▽オフロキサシン、ノルフロキサシン=抗菌薬含有製剤、点眼 
▽オメプラゾール、ラベプラゾールナトリウム、ランソプラゾール=プロトンポンプ阻害薬、内服 
▽デキサメタゾン=副腎皮質ステロイド、粘膜 
▽アルファカルシドール、カルシトリオール=ビタミンD3製剤 
▽ドンペリドン=消化管運動調整薬、内服 
▽フドステイン=去痰薬、内服

ビタミンD3などは、骨粗鬆症のためのセルフメディケーションとしてスイッチOTC移行されてもおかしくはない。実際に海外では1μgのビタミンD錠がサプリメントとして販売されている。また、カナダとオーストラリアではすでにニゾラール(ケトコナゾール)がOTC薬として販売されているのを見ているが、ここで出ているのはナジフロキサシンである。海外の状況は参考にされているのだろうか?

感染研が「新型インフルエンザ」情報サイトを開設
2009. 5. 3-日経メディカルオンライン

[要約&コメント]
国立感染症研究所感染症情報センターが4月27日、同センターのインターネットサイト内に、「新型インフルエンザ(豚インフルエンザA/H1N1)」の情報を集めたホームページを作成して立ち上げた。
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
新型インフルエンザの疫学情報、患者の発生情報、厚生労働省からの通知などを網羅的に掲載する。

情報が遅れてしまったが、サイトをご存じでない方のために念のために載せておきました。5/24の段階では感染者数は335人、うち死亡数は0人である。
日本では報道により多くの方が恐怖に陥っているとの話を聞きましたが、ここカナダでは全土で感染者数は805人。報道の過激度は日本に比べるとはるかに冷めている状態です。テキサス(メキシコと国境で隣り合わせの都市)に在住の薬学生いはく、メキシコで感染が始まった時は薬局のマスクが一気に売れてなくなったが、必死に大量のマスクを集めて再度売り出したころには、インフルエンザの熱も冷め一向に売れなくなってしまったとのことです。アメリカでは毎年インフルエンザで3000人近くの命を失っていますが、今回の豚インフルエンザでは今のところ20数名。死者に関しては数でははかりきれないものがありますが、その20数名だけの脅威のために世界中がパニックに陥っているのもどうなのだろう?というのが薬学生の見解です。感染者数などを考えた上で、日本と北米とのメディアの過激度は大きな差があるように感じますが、皆さんは日本の報道どう思われますか?

おまけ…アルツハイマー

コーヒー飲みアルツハイマー病予防?…カフェイン効果に期待
2009/04/23(木)-ケアネット.com ※ケアネット.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
コーヒーやお茶などに含まれるカフェインに、アルツハイマー病*の予防効果があるとする研究結果を、森隆・埼玉医大准教授と米フロリダアルツハイマー病研究センターなどが動物実験からまとめた。記憶力の低下を改善させ、記憶にかかわる脳の海馬や大脳皮質では、Aβが蓄積した「老人斑」の形成が4~5割減少した。カフェインがAβを作る酵素の働きを抑えることも突き止めたという。

*アルツハイマー病
脳にたんぱく質のアミロイドベータ(Aβ)が異常に蓄積して、神経細胞が死んでしまう病気。

日本ではあまり聞かないが、ここカナダではデカフ(=カフェインフリー)を好んで服用する人が多いが、このカフェインにこのような作用が隠されていたということが判明されれば、カフェイン入りコーヒーを好んで飲む人が多くなるかもしれない。日中はカフェインありで、夜や寝る前はデカフで、というスタイルが流行るのでは?

2009/05/23

Saya's 薬学ニュース vol.96-「ボルタレン」がOTC薬にスイッチ/WHO HbA1cを糖尿病の診断基準に/タミフルと異常行動に「有意な相関なし」/喫煙者の4人に1人が禁煙に挑戦するも、その内7割が禁煙に失敗

<Today's news>
1. 鎮痛薬「EVE」に外用薬が登場
2. 「ボルタレン」がOTC薬にスイッチ
3. WHO 今年中にも新基準を公表へ HbA1cを糖尿病の診断基準に
4. タミフルと異常行動に「有意な相関なし」

5.10代にもタミフル、厚労省が例外容認
おまけ. 1年間で喫煙者の4人に1人が禁煙に挑戦するも、その内7割が禁煙に失敗

鎮痛薬「EVE」に外用薬が登場
2009/4/24-J-CASTニュース

[要約]
エスエス製薬は2009年5月1日、外用鎮痛消炎薬「イブアウター」シリーズ3商品を発売する.「ジクロフェナクナトリウム」のスイッチOTCである。エスエス製薬は、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収製剤化に国内で初めて成功した。
貼るタイプのテープ剤とパップ剤、塗り薬タイプのゲル剤。価格は630円~1890円。
※写真は左からパップ剤、テープ剤、ゲル剤。
参考記事:エスエス製薬、EVEブランドから外用鎮痛消炎薬「イブアウター」シリーズを発売(2009年04月25日 マイライフ手帳@ニュース (プレスリリース))、ジクロフェナク配合のスイッチOTC薬投入‐女性ターゲットに差別化(2009年4月27日 薬事日報)

「ボルタレン」がOTC薬にスイッチ
2009. 4. 30-日経DI

[要約&コメント]
ノバルティスファーマが4月28日より医療用医薬品と同じ「ボルタレン」ブランドの製品を発売するほか、エスエス製薬が5月1日より「イブアウター」ブランドで、大正製薬も「ジクロテクト」ブランドで5月中の発売を予定する。また、消炎鎮痛剤「サロンパス」と「フェイタス」のブランドを持つ久光製薬も、他社と同時に承認を受けている。

他社からも続々と出ているようである。いずれもスイッチOTCということで第一類に属するため、薬剤師の腕が試される分野である。

WHO 今年中にも新基準を公表へ HbA1cを糖尿病の診断基準に
2009年4月17日-m3.com 提供:Japan Medicine(じほう) ※m3.com閲覧には会員登録が必要です
[要約&コメント]
世界保健機関(WHO)が糖尿病の診断基準に、空腹時血糖値をはじめとした従来の診断基準では、持続性高血糖を十分に示していないことからHbA1c値を導入する方向で議論を進めていることが明らかになった。しかし、「赤血球寿命が短縮している病態(溶血性貧血や肝硬変、出血があるケースなど)には使えない」と指摘する。
WHOがもともと1998年に定めた糖尿病の診断基準は、<1>空腹時血糖値≧126mg/dL<2>75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)2時間値≧200mg/dL<3>糖尿病の症状と随時血糖値≧200mg/dL-以上のいずれかの場合とされている。

すでに現場ではHbA1cによる血糖値の把握が主流となっていると思われるが、正式な診断基準もこれでHbA1cへ移行するようである。

タミフルと異常行動に「有意な相関なし」
2009. 4. 28-日経DI

[要約]
厚生労働省の「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」班は、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)の使用と異常行動・言動に有意な関連を認めるには至らないとする最終報告書をまとめた。しかし、調査自体の問題点(方法など)を指摘する声もあり、「これらの所見は、直ちに『オセルタミビル使用と異常行動・異常言動の間に関連がない』ことを意味するものではない」との文言も記されている。

10代にもタミフル、厚労省が例外容認
2009/05/04(月)-ケアネット.com 提供:読売新聞 ※ケアネット.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
新型インフルエンザが国内でも流行する可能性が高まっていることを受け、厚生労働省はインフルエンザ治療薬タミフルを、新型インフルエンザ感染が疑われる10歳代にも処方できるとする方針を明らかにした。有効性や安全性について十分に情報を提供し、同意を得た上で可能にする考えを示した。

上記でタミフルと異常行動との関係に有意差は見られないという見解を持ちながらも、やはり慎重な使用を推奨している。有意な差はないとしても、実際に起きている事の情報提供としては、確かに必要である。薬局からの指導も患者への注意喚起となるので是非続けていくべきであろう。

おまけ…タバコ

1年間で喫煙者の4人に1人が禁煙に挑戦するも、その内7割が禁煙に失敗
2009/04/23(木)-ケアネット.com ※ケアネット.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
禁煙に失敗した人のうち、約半数が1週間以内に挫折。主な理由は、「耐え難いイライラ」(37.9%)と「ストレス解消」(21.8%)で、ニコチン離脱症状が禁煙の失敗に深く関与している。しかし、禁煙に失敗した人の8割以上が、すぐにでも禁煙に再挑戦したいと回答した。
詳細:プレリリース

禁煙の難しさを表している調査といえよう。始まりはちょっとした好奇心。これがやめるのに人並ならぬ努力を必要とする。なんて皮肉なものであろうか。離脱症状が大きな壁(原因)となっているのがはっきりしているが、それを解消する解決策も未だにそろいきっていないのが現状である。禁煙には金銭的負担もあるため、くじけてしまった人はあきらめが早いであろうし、どうせ金を払うなら…と再度タバコの購入に走ってしまう事もある。国を挙げて禁煙を応援するのならば、その点の補助も検討してみてはどうだろうか?

2009/05/13

Saya's 薬学ニュース vol.95-胃の「キリキリ」痛みを緩和します!/インフル専門家会議「大流行前ワクチン」を了承/療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル」の製造販売承認を取得/メタボより高血圧対策が重要/米カリフォルニア州で子ども2人が豚インフルに感染 人から感染か

<Today's news>
1. 胃の「キリキリ」痛みを緩和します!
2. インフル専門家会議「大流行前ワクチン」を了承
3. ノバルティス、治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル」の製造販売承認を取得
4. メタボより高血圧対策が重要

おまけ. 米カリフォルニア州で子ども2人が豚インフルに感染 人から感染か

胃の「キリキリ」痛みを緩和します!
2009/4/22

[要約&コメント]
大正製薬は2009年4月21日、一般用鎮痛胃腸薬「ストパン」を発売した。「医療用医薬品」で使われている成分「チキジウム臭化物*」のスイッチOTCである。用法・用量は1回1カプセル、1日3回まで。
1カプセル中チキジウム臭化物…5mg
参考HP:ストパン公式HP(大正製薬)
参考記事:チキジウムのOTC薬、スイッチ化承認から3年経て発売 (5/7日経DI)
*チキジウム臭化物
商品名:チアトン
効能効果:副交感神経を抑制して,消化管などの筋肉(平滑筋)のけいれんを抑制する
副作用:排尿障害,視力の調節障害,動悸,肝機能障害等

HPを参照すると、15歳以上の服用に限定されている。また、1カプエセル中に5mg含有しているため、医療用医薬品のチアトンと比較すると半量であることがわかる。尚、チアトンの添付文書では1回5~10mgを1日3回経口投与する.との記載があるため、これらの違いも把握しておく必要がありそうだ。

インフル専門家会議「大流行前ワクチン」を了承
2009/04/22(水)-ケアネット.com 提供:読売新聞 ※ケアネット.com閲覧には会員登録が必要です
[要約&コメント]
厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議は20日、大流行が起きる前に接種する「プレパンデミック(大流行前)ワクチン」の効果と安全性について、「大きな問題はない」として了承した。高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)から製造されたワクチンであるが、一部の試験者から副作用が出たため、どの程度をワクチンの対象にするか検討中である。

今話題の豚インフルエンザ。日本から私の無事を確かめるメールが相次いでいるが、正直日本と現地(カナダ・アメリカ)での温度差を感じる。問題が起きている現地では楽観的な人が多く、マスクをつける傾向もなく、マスクの仕入れも未だに整っていない状態である。薬局に1名だけマスクを購入しにきた客がいたが、その人は医療機関で働いており、エイズ患者の対応をしているため、とのこと。現地の人間の楽観さには呆れてしまうくらいであるが、被害者が一名も出ていない中で大騒ぎをしていた日本も少し問題であるように感じた。とうとう感染者が日本国内に入ったことから騒ぎは広がったことと思うが。現地の人間にも、自己予防として、手洗いうがいは徹底して行ってもらいたいものである。

ノバルティス、治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル」の製造販売承認を取得
~治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル(R)錠25mg/100mg」の製造販売承認を取得~
2009/04/22-NIKKEI NET プレリリース

[要約]
「クロザリル」は、日本で初めて「治療抵抗性統合失調症」の適応症を認められた抗精神病薬です。すでに世界97カ国で承認されており、日本でも統合失調症で入院中の9%の患者さんが、本剤の適応となると見込まれている。他国で抗精神病薬として販売後死亡を含む無顆粒球症の発現が報告されたため、販売を中止する国もあったが、治療抵抗性の統合失調症に対しては効果があることが認められ、血液検査を義務付けた上で販売が承認されている。また、適正なモニタリンを可能とするため、登録を受けている医療機関でのみ処方及び調剤が行われている。
参考:ノバルティス ファーマ株式会社HP(ノバルティス ファーマ株式会社)

メタボより高血圧対策が重要
2009年4月23日-読売新聞

[要約&コメント]
脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など循環器疾患の予防には、肥満に重点を置いたメタボリックシンドローム対策よりも高血圧対策が重要であることがわかった。
もし全員の血圧を正常にした場合、男性で48%、女性で45%の心筋梗塞や脳梗塞を減らせると推計された。一方、メタボを解消しても男性で12%、女性で8%の改善効果しかないと考えられるという。

メタボリックシンドロームという言葉が数年前から流行りだし、肥満が万病のもとであるというのが一般的な認識であろう。それよりも血圧のコントロールがより重要であるというのは、興味深い話であったので掲載した。

おまけ...豚インフルエンザ

米カリフォルニア州で子ども2人が豚インフルに感染 人から感染か
2009年4月23日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
カリフォルニア州でインフルエンザの定期健診を受けた2人の子どもが豚インフルエンザに感染していたことが判明した。2人はメキシコと国境を接するカリフォルニア州南部のサンディエゴ郡とインペリア郡に在住する10歳の男児と9歳の女児(二人は回復済み。一人は一時40℃近くの熱を出したという。)。2人とも豚と接触したことはなく、これまでのところ感染源は特定できておらず、人から感染した可能性が強くなっている。

カナダのアルバータ州でも、初めて一人豚インフルエンザにより死亡者が出たと報じられたが、新聞を読んでみると、実はその前から喘息の治療で入退院をしており、死亡した時に病院へ行ったのもそのぜんそく症状のためだったという。死亡後検査をしてみると豚インフルエンザの型が検出されたということで、実際の死因が豚インフルエンザによるものなのか、喘息によるものなのかははっきりしないとのこと。For your information...

2009/05/08

Saya's 薬学ニュース vol.94-アレルギーに夢の新薬/オンライン請求「義務化」が1年延期/ワーファリン服用中に納豆を食べる“秘策”/「プライマリ・ケア薬剤師」認定制度が発足/「ノバルティス マンモグラフィ体験キャラバン」がスタート

<Today's news>
1. アレルギーに夢の新薬「ゾレア」登場
2. オンライン請求「義務化」が1年延期
3. ワーファリン服用中に納豆を食べる“秘策”を実行した患者
4. 「プライマリ・ケア薬剤師」認定制度が発足へ

おまけ. 2009年の「ノバルティス マンモグラフィ体験キャラバン」がスタート

アレルギーに夢の新薬「ゾレア」登場
2009. 4. 24-日経DI

[要約&コメント]
抗IgE抗体製剤「ゾレア」が喘息治療薬として3月に薬価収載された。月に1~2回継続的に皮下注射することでアレルギー症状を抑制。海外では同薬投与後に喘息治療薬が不要になった例も報告されている。

図1 オマリズマブの作用機序(ノバルティス ファーマの資料を基に編集部で作成)・アレルギー反応の発現機序 血中のIgEが(1)、肥満細胞上にあるFcε受容体に結合(2)。そこにアレルゲン(抗 原)が結合することで(3)、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性メディエーターが放出される(4)。・オマリズマブの作用機序オマリズマブは、血中でIgEと複合体を形成し(5)、IgEが肥満細胞に結合してアレルギー反応を起こすのを抑制する(6)。
花粉症と難治喘息で治験が実施されたが、効果が得られたにもかかわらず保険適用にならなかった。薬価が高すぎることもあり、保険財政の破綻が懸念されたという説もあるという。市販直後調査でアナフィラキシーが出たとの報告もあるため、注意が必要である。吸入ステロイドの使用は今後も変わらないが、選択肢が増えることで治癒できる喘息が多くなることに期待を寄せている。

花粉症の自分としては、“アレルギーに夢の薬”という表題を見た瞬間に飛びついてしまったが、残念ながら花粉症に対する適用はない。また、薬価が非常に高く、年に1度ではなく、月に2回打たなければならないので確かに自由診療であっても厳しいだろう。

オンライン請求「義務化」が1年延期
2009. 4. 24-日経DI

[要約&コメント]
厚生労働省は4月21日、レセプトのオンライン請求に関し、4月診療・調剤分からの実施を義務付けた省令の改正案を公表した。オンライン請求の準備が整わない薬局などに対して、来年3月末まで、書面または光ディスクなどによる請求を認めるもの。3月末時点で、開始届を出していない薬局が約2600軒、病院が約220軒あったという。
関連記事:オンライン請求省令案のパブコメ募集を開始―厚労省(4/21 キャリアブレイン )

これらの病院・薬局がすべて廃業になっていたかと思うと恐ろしい限りである。医師不足に病院の倒産・・・医療の質は確実に維持できていなかった事と思う。この特別措置がいつまでとられるかにもよるが、開始できない薬局や病院が抱える資金的問題などに関して改善案が出されなければ、期間のみが伸びて結局これらの病院・薬局が廃業に追いやられることになるであろう。

ワーファリン服用中に納豆を食べる“秘策”を実行した患者
2009. 2. 25-日経DI

[要約&コメント]
納豆が大好物の患者で、ワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)服用と納豆の摂取の間隔を大きく空ければ相互作用がなくなるだろうと勝手に考え、朝にワルファリンを服用し、夜に納豆を食べていた症例が紹介されている。
ワルファリン服用中に納豆を1回(100g、市販の1包)だけ摂取しても、トロンボテスト値は3日間以上も高値を示すことが報告されている(Artery 1990;17:189-201.)。
ワルファリンを投与されている患者は、納豆およびクロレラの摂取、緑葉色野菜の大量摂取、ビタミンKを含むビタミン剤の服用などを避ける必要がある。

患者さんの中で、いつまで相互作用が続くのかということを知らない人がいるのは当り前のことである。その他グレープフルーツでも同じように悩む患者さんがいるが、その危険性を定期的に伝えることは重要なのかもしれない。特に複数の薬剤師が務めている薬局では、他の薬剤師が話したのでは?と思うのではなく、「確認なのですが…」という形で自分が担当した患者さんに対し責任を持つことも重要であろう。

「プライマリ・ケア薬剤師」認定制度が発足へ
~日本プライマリ・ケア学会、5月の学会で制度発足の予定~
2009. 4. 6-日経DI

[要約&コメント]
日本プライマリ・ケア学会はこのほど、地域医療に貢献できる薬剤師の育成を目的に「プライマリ・ケア薬剤師」の認定事業を開始することを理事会で承認した。今回新たに創設するプライマリ・ケア認定薬剤師制度は、学会が実施する研修を受講して2~3年かけて所定の単位を修得し、試験などに合格した薬剤師を学会が「プライマリ・ケア薬剤師」として認定する。 関係者は、「プライマリ・ケア薬剤師は、例えば在宅医療であれば、患者の軽微な症状から薬による副作用を発見したり、緩和ケアを適切に管理することができ、地域の医療職、介護職と連携できる薬剤師をイメージしている」と話す。

カナダに住んでいると、プライマリ薬剤師としての役割の重要性は強く感じる。プライマリ薬剤師としての需要があるからこそ、薬学部教育により徹底的に教育を受けているのである。医師不足が深刻な日本では、医師以外の専門職の人たちがあらゆる形で助け合うことが重要である。機会があれば受けてみたい研修である。

おまけ…乳がん

2009年の「ノバルティス マンモグラフィ体験キャラバン」がスタート
~4月18日(土)福岡、19日(日)山口を皮切りに全国9カ所を訪問~
2009年4月7日-プレリリース

[要約&コメント]
ノバルティス ファーマ株式会社が特別協賛する「ノバルティス マンモグラフィ体験キャラバン」による乳がんの無料マンモグラフィ検診が、今年も4月からスタートします。マンモグラフィの無料体験のほか、乳がん*やマンモグラフィに関するパンフレット配布やアンケート調査、パネル展示、ミニクイズ大会などにより、多くの人に乳がんの定期検診・早期発見の重要性を呼びかけていきます。
※キャラバンの詳細:http://www.novartis.co.jp/campaign/mammography/index.html
*乳がん
早期発見すれば治癒の可能性の高い疾患です。日本では年間、約4万人が新たに乳がんに罹患していると推定されており、その患者数及び死亡率は年々増加しています。一方、欧米では、死亡率は1990年頃から減少傾向に転じており、これは、早期診断の中核となるマンモグラフィ検診の受診率が70~80%と広く普及したことが大きな理由であると考えられています。日本の受診率はまだ10%台です。
<2009年実施スケジュール>
4月18日(土):福岡県福岡市
4月19日(日):山口県山口市
5月16日(土):奈良県奈良市
5月17日(日):三重県津市
7月18日(土):神奈川県横浜市
9月26日(土):香川県高松市
9月27日(日):大阪府大阪市
10月16日(金):青森県弘前市
10月18日(日):秋田県秋田市

お知らせです。早期発見のためにも、試験受けてみませんか?

2009/05/07

Saya's 薬学ニュース vol.93-ボルタレンゲルを頭皮に塗 「日次棚卸し」で調剤ミスをその日のうちに発見布した患者/後発医薬品~私はこう選ぶ/

<Today's news>
1. ボルタレンゲルを頭皮に塗布した患者
2. 発医薬品~私はこう選ぶ(7)1成分1後発品が原則、決め手は「人」
3. 「日次棚卸し」で調剤ミスをその日のうちに発見

ボルタレンゲルを頭皮に塗布した患者
2009. 4. 22-日経DI

[要約&コメント]
関節症のために処方されたボルタレンゲル(一般名:ジクロフェナクナトリウム)を、頭痛解消のため頭皮に塗っていた患者がいたという。ボルタレンが痛み止めであるという情報を聞いたことから、片頭痛にも効くのではと勘違いし、頭皮にまんべんなく塗布していたとのこと。ボルタレンゲルにより頭皮の皮膚炎を発症する可能性も示唆されるため危険であり、治療目的(関節症の痛み)以外の目的でボルタレンゲルを使用してはいけないとの説明が不十分であったことが指摘された。

薬剤師であれば「まさか!」と思うような薬の飲み方や使い方が紹介され、意外な注意点を教えてくれるのがこのシリーズ。毎回興味深く読ませていただいているが、今回もその「まさか」であった。外用剤を指定された患部以外に使用しないように、というのは適切な服薬指導ではあるが、頭痛に使用するというのは想像の範囲を超えている。患者全員に当てはまる内容ではないとしても、心してかからなければならない事を思い出させてくれる。

発医薬品~私はこう選ぶ(7)1成分1後発品が原則、決め手は「人」
2009. 4. 22-日経DI

[要約&コメント]
1947年創業の地元に根付いた老舗薬局。時代の変化とともに後発医薬品にも柔軟に対応しているのがうかがえる。彼らの採用後発医薬品選択では共通する2つの原則がある。
①1成分について後発品を1品目採用すること
②品質保証の仕組みやルールは確立しているといってよいのでメーカーへの信頼を重視すること
迅速な対応を保障できるメーカーを選ぶことで、データの確保と在庫の確保を確実なものにしている。それ以外にも、患者からのフィードバックを行うことで再評価を行ったり、自信を持って採用医薬品を勧めることで相乗効果も得られている。
ある薬剤師の言葉。「患者さんが後発品に求めるものは、何といっても価格の安さ。でも、薬剤師が後発品に求めるのは信頼。薬の品質はもちろんだが、その薬を少しでも多くの人に理解してもらいたいメーカー学術部門の努力と、使ってもらいたいMRの熱意が、信頼につながる」

採用後発医薬品の選択方法は薬局によって様々であると思うが、患者さんに安心して利用していただくためには、薬剤師が納得した上で自信を持って勧められる状態でなければならない。そういった意味では、以上のような選択の仕方は納得である。薬剤師が知識に対して自信がなければ、それは患者に伝わってしまう。薬剤師が自信を持って勧められないものを、患者が進んで使いたいという気持ちになれるだろうか。

「日次棚卸し」で調剤ミスをその日のうちに発見
2008. 10. 20-日経DI

[要約&コメント]
第41回日本薬剤師会学術大会のポスターセッションで、1日9分で棚卸が行え、調剤ミスもチェックする「日次棚卸し」について紹介された。
(1)閉店の数十分前に「日別棚卸表」を出力
(2)手の空いた薬剤師が手分けして在庫を照合
(3)棚卸表出力後の出庫分を追加でチェック     ――という手順

1人当たり1日平均9分で、錠剤の規格違いなどの危険なミスをその日のうちに発見し、対応できる意義は大きいという。

1日9分の棚卸。これにより調剤過誤・事故につながるミスを抽出できるのであれば活用すべきツールに間違いはないと思う。最近ワーファリンの調剤ミスにより死亡事故がニュースになっていたが、これをしていたら…と思うところがあるのは確かである。

2009/05/05

Saya's 薬学ニュース vol.92-マイナーと呼ばれる「マイナー」でない薬:抗不安薬/ヒアリングで消費者の意見も割れる/小児への薬剤の過量投与続発で注意喚起/運動した後、筋肉痛になる?カフェインを摂りなさい

<Today's news>
1. マイナーと呼ばれる「マイナー」でない薬:抗不安薬
2. ヒアリングで消費者の意見も割れる―医薬品販売検討会
3. 小児への薬剤の過量投与続発で注意喚起
おまけ. 運動した後、筋肉痛になる?カフェインを摂りなさい

マイナーと呼ばれる「マイナー」でない薬:抗不安薬
2009/04/14(火)-ケアマネ.com ※ケアマネ.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
プライマリ医師に対し、抗不安薬の使用方法や薬の使い分け等に関し記載された記事。
①使い慣れている薬剤1-2剤もっておくだけでもよい。ただし、それらに関しては添付文書のすみずみまで読んで、理解していることが必要。
②患者が薬物治療を希望しているか確認。症状がの原因などを考えたり、病気のメカニズムを話すだけでも納得して症状が改善することも。
③「SSRIと抗不安薬、どちらが適当か」よりも「これらの薬剤が不適当な可能性のある症状はないか」という視点が重要。
④薬をやめる時は患者さんとの相談が一番大事。やめることとやめないで続けること両方のリスクとベネフィットを伝えることで、共に治療していく姿勢を。
⑤効かなければ早めに精神科専門医へ。効かないからと言って薬の量を極端に増量したり複数併用したりすることは最善ではない。うまく精神科医との連携を取り、患者に見合った対応を考えていくのが一番。

ここまでやってくれている医師はどのくらいいるのでしょうか。OKwaveの質問を見ていると、医師との会話時間が少なく、患者さんが治療に関われていないという不満を抱えている人が多くみられます。医師不足の問題は奥が深いようです。上記のような治療方針で行って頂ければ、患者の症状もよくなるのでしょうね。医師が忙しい分、薬剤師がフォローできるよう薬からの視点だけではなく、患者さんの気持ちに関してももっと勉強したほうが良いかもしれません。専門家からの言葉は、冷たいイメージをもたれることも多いようですから。。。

ヒアリングで消費者の意見も割れる―医薬品販売検討会
2009/04/16 22:15-キャリアブレイン

[要約&コメント]
厚生労働省は4月16日、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第4回会合を開き、薬局などで医薬品の購入が困難とされる消費者などの実情を知ることを目的にヒアリングを実施した。
ある教授からは「薬局で医薬品を購入する際は、薬剤師に質問しても箱書き以上の情報はもらえない。ネットは規制して、対面販売はいいという理屈は理解できない」という意見があったり、視覚障害者からは「ネットを使った薬の販売は、わたしたち視覚障害者にとって非常に有意義なもの」との意見がでていた。医薬品の箱には点字記載はないが、パソコンを利用した場合音声により効能等を知ることができるという。
ネット通販による問題が発生した場合の責任の所在についても話し合われている。
関連記事:医薬品新販売制度、これまでの議論を踏まえた検討項目を示す(4/17 m3.com)
参考資料:第4回 医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会 議事録

薬剤師に質問しても十分な情報が得られない、という意見はとても悲しいことであるがこれが現状である。一人の意見でしかないとは言っても、このような意見が代表としてでているということを重く受け取らなければならない。視覚障害者の方がネットでの利便性に関して訴えているが、製薬会社のHPなどで引き続き薬に関する説明がインターネットで観れる状態であるし、対面販売となれば薬剤師からの説明が得られるわけであるため、以上の点は十分代替方法があるように考えられる。ただし、視覚障害者にとって外出はとても大変なことであるのは確かである。

小児への薬剤の過量投与続発で注意喚起
2009. 4. 17-日経メディカルオンライン

[要約&コメント]
日本医療機能評価機構は4月15日、小児に対し本来の10倍量の薬剤が投与された事例が昨年までの2年間に8件報告されたとして、注意を喚起する「医療安全情報」を公表した。生後3カ月の患児にジゴシン散「0.03mg」を処方すべきところ、医師がオーダリングシステムに「0.3mg」と誤入力したケースや、生後2カ月の患児にフルマリン静注用「25mg」を処方すべきところ「250mg」と勘違いしたケースを紹介している。いずれも薬剤師が過量投与を鑑査で見逃し、患児に10倍量が投与されていた
参考:(日本医療機能評価機構):医療安全情報
関連記事:小児の薬剤量を10倍間違えた事例、3年間で8件(4/16 キャリアブレイン)

最終監査役である薬剤師の見落とし。大量にある処方せんの中から間違いを見つけるのは難しいとは言っても、それが薬剤師の任務なのである。医薬分業の意義を再度確認し、失敗を適正な業務につなげていきましょう。
 
おまけ…カフェイン

運動した後、筋肉痛になる?カフェインを摂りなさい
2009年4月7日-m3.com 提供:WebMD ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
カフェインによって運動による筋肉痛が軽減されることが新規研究で明らかになり、コーヒーが文字通り健康を増進する一杯になる可能性があることを示唆している。( 平均して1日にコーヒー4杯に相当する量)
「少量のカフェインを摂取させ、感じられる疼痛を軽減することができれば、その運動を続けさせるのに役立つかもしれない」。

運動のあとはコーヒー!という感じにはなれないが、緑茶を飲むことは可能。筋肉痛の多い人にとっては朗報なのでは?