2008/12/31

Saya's 薬学ニュース vol.45-小児用抗てんかん薬の新薬発売/漢方薬と風邪の予防/厚労省が第三者委設置へ/認知症は死因の一つ?!

<Today's news>
1. 「小児難治性」適応の抗てんかん薬
2. 新生児けいれんとてんかん重積状態の治療薬 
3. ウイルス性疾患予防と漢方薬
4. 厚労省が第三者委設置へ 人工心臓の少年死亡で

おまけ. 認知症は死因から見逃されている 

「小児難治性」適応の抗てんかん薬
2008/12/19 15:10-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
小児の適応を有するてんかん治療薬「ラミクタール錠」(一般名・ラモトリギン)が発売された。

商品名:「ラミクタール錠」
一般名:ラモトリギン
規格:小児用2mg,小児用5mg,25mg,100mg
製薬会社:グラクソ・スミスクライン
【特徴:】
①ほかの抗てんかん薬との併用療法により、二次性全般化発作を含む部分発作、強直間代発作、レノックス・ガストー症候群に効果を示す。
②成人だけでなく、小児の適応を有する。
③小児に発症するてんかんの中で極めて難治性のレノックス・ガストー症候群への適応を取得した日本初の抗てんかん薬
現在、日本におけるてんかん患者は約100万人。患者の80%が小児期に発症するが、小児のてんかん治療薬の選択肢は少ないという。

てんかん患者の80%近くが小児期に発症するのに、その薬が少ないというのは恥ずかしいことに知らなかった。ちょっと勉強になった記事である。副作用などの記載がなかったので、その点を補足しておこうと思う。
【副作用】:発疹や発赤、眠気、吐き気、めまい、かすみ目、肝機能低下
【その他の特徴:】
①口腔内崩壊錠。
②半減期が約31~38時間(バルプロ酸ナトリウム(デパケン)との併用で約2倍に延長)と長いため、副作用発生時は的確な説明を。
【注意:】
①グルクロン酸抱合を誘導する薬剤との併用では血中濃度低下。増量を検討。:フェニトイン(ヒダントール、アレビアチン)やカルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)
※バルプロ酸ナトリウム(デパケン)との併用で半減期延長。減量を検討。
 
新生児けいれんとてんかん重積状態の治療薬
2008/12/22 13:20-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
新生児けいれんとてんかん重積状態の治療薬「ノーベルバール静注用 250mg」(一般名・フェノバルビタールナトリウム)が販売された。
商品名:「ノーベルバール静注用」
一般名:フェノバルビタールナトリウム
規格:250mg
【特徴】
①日本で初めての静脈注射用フェノバルビタール製剤」で、新生児けいれんに適応を取得
②小児から成人までのてんかん重積状態に投与可
参考資料:新発売のご連絡(アルフレッサ資料)

経口剤に続いて、注射剤の紹介である。両社も、第一選択薬としての利用ではなく、併用や第二選択薬としての推奨であるが、ニーズがある薬なので今後目にすることがあるであろう。
【副作用】:意識障害、血圧低下、呼吸抑制、肝機能低下

ウイルス性疾患予防と漢方薬 
2008年12月19日-毎日新聞

[要訳&コメント]
質問内容:感染性胃腸炎やインフルエンザなどのウイルス性疾患に効く漢方処方はあるのでしょうか? また、日頃の体調管理はもちろんですが、インフルエンザや風邪にかかりにくくする漢方処方はありますか
風邪の諸症状を漢方では侵入してきたウイルス(病邪)と免疫力(正気)との間に起こっている邪正相争(じゃせいそうそう)という戦いによって生じるものと考えます。
漢方処方を選ぶ際には、八綱弁証というものを駆使して病位・病勢・病性を確認して処方を選びますので『この症状にはこれが効く』という処方はありません。『風邪のひき始めだから葛根湯』と安易に考えないようにしましょう。下記に風邪の症状軽減によく使う漢方薬の紹介。


【風邪の予防方法】:外邪と戦う正気を高めておくことが大切
①殺菌力のある粘膜を保つ:外出後の手洗いうがい、マスクの着用、室内の加湿
②抗ウイルス作用のあるものを常用:板藍根(ばんらんこん)、プロポリスなど
③外邪と戦う正気を高めておく:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの補気剤
※タミフルの原料は大茴香(だいういきょう)という生薬の成熟した果実からできているという。
 
厚労省が第三者委設置へ 人工心臓の少年死亡で 
2008年12月19日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳&コメント]
国立循環器病センター(大阪府吹田市)で臨床試験(治験)中の補助人工心臓を装着した少年=当時(18)=が約2週間後に心肺停止となり、約1年後の今年春に重い脳障害で死亡した問題*で、厚生労働省は18日、第三者による調査委員会を設置する方針を明らかにした。

18歳の少年が、自分の意志で治験に託した想い...心肺停止までの2週間、どのような思いで過ごしたのかを考えるととても辛くなりますね。そしてその両親は、本人の意志を尊重して治験の継続を決意したのでしょう。息子の容体が急変したあとに下さなければならないその決断の重さとその想いを、治験を行う側には忘れてほしくないですね。
*治験実施から死亡に至るまでの話
少年は心筋の働きが落ちて心臓が肥大化する「拡張型心筋症」と診断され、昨年春に入院。未承認の補助人工心臓「エバハート」の治験に少年本人が同意し、装着手術を受けたが、2週間後に心肺停止となり、今年春に死亡した。病院側は少年が意識不明となった後も家族に治験の継続を勧め、母親が同意書に代筆して治験が続けられたという。
 
おまけ...認知症

認知症は死因から見逃されている 
2008/12/18 -日経NET

[要訳&コメント]
重度の認知症患者が死亡したとき、認知症が死因として記録されないケースの多いことが新しい研究により示された。この知見により、認知症が致死的な疾患であるとの知識が不足していることが明らかにされただけでなく、アルツハイマー病および認知症による死亡者数が実際よりも大幅に少なく算出されていることになるという。
認知症が死因として認識されていないのは意図的なものではないようだという。かつては老衰として知られていた認知症は、単なる脳の疾患にとどまるものではなく、精神面に加えて身体も徐々に侵され、最終的には癌(がん)やエイズと同じように肺炎を来すこともある。認知症が致死的な疾患であるという理解が欠けていると、終末期の患者に不必要な治療を家族が強く要求するようなことにもなるとのことだ。
 
確かに、認知症で死亡、ということはあまり耳にしたことがない。自分が病院で働いた経験がないからかもしれない。病院勤務の薬剤師などはよく耳にすることなのだろうか。患者のQOLを考えると、ただの認識不足、では片付けられない内容であることがこの記事から教えられた。

2008/12/30

Saya's 薬学ニュース vol.44-ニコチンパッチの正しい使い方/経口腸管洗浄薬に腎障害のリスクが.../後発医薬品使用促進/ネット販売禁止、低い問題意識

<Today's news>
1. ニコチンパッチの正しい使い方
2. FDAが経口腸管洗浄薬に腎障害リスクの警告表示を要請 
3. 後発品促進策を一層強化‐来年度予算案で方針
4. 薬のネット販売禁止、低い問題意識 


ニコチンパッチの正しい使い方 
2008年12月18日/HealthDay News Nikkei NET
[要訳&コメント]
米国家庭医学会(AAFP)は、ニコチンパッチの使い方について以下のように助言している:
・使用する直前まで包装を開封しない。準備ができたら封を開け、パッチの剥離(はくり)紙をはがす。粘着面には触れないようにする。
・上半身のパッチを貼る部位を清潔にし、乾燥させる。体毛の多い場所や、火傷、痛み、切り傷のある部分を避ける。
・皮膚にパッチを貼り(粘着面を下に)、しわができないよう伸ばして10秒間押さえる。パッチを扱った後は必ずすぐに手を洗う。パッチに含まれるニコチンにより目や鼻が刺激されるのを避けるためである。
・パッケージに表示されている時間を超えてパッチを使用しない。
・はがしたパッチは粘着面を合わせるように折りたたみ、子どもやペットが触れないようにして処理する。
・パッチを貼る部位は日によって替える。1週間空ければ同じ部位に貼ってもよい。
参考資料:原文

以上の内容を、どの程度説明できているでしょうか。いまやニコチンハップは市販で手に入るものとなりました。患者さんが安心して効果の高い使用ができるよう、初めての患者さんだけでなく、使い慣れている患者さんにも確認の意味で説明するとよいかもしれませんね。
 
2008/12/18 -日経NET

[要訳&コメント]
大腸内視鏡検査の前処理として腸管洗浄に使用される処方薬2種が、腎障害を引き起こす可能性があることが米国食品医薬品局(FDA)により報告された。
経口リン酸ナトリウム製剤Visicol*およびOsmoPrep*の2製品について、急性リン酸腎症のリスクがあることを警告として表示するよう促している。類似訳もあるが、下剤として低用量の使用は安全とのこと。リン酸ナトリウムをスクリーニングに使用する大腸癌は、米国で男女ともに診断される癌の第3位。
*Visicol:日本では、日本人に適した製剤、用法・用量に検討され、経口腸管洗浄剤「ビジクリア錠」として販売されている
*OsmoPrep:日本では未承認
 
2008年12月19日-薬事日報

[要訳&コメント]
社会保障費の自然増2200億円の圧縮財源に、健康保険組合などを助成するため年金特別会計に設けられている「特別保健福祉事業資金」の清算で1370億円、一般財源化する道路特定財源で600億円、後発品の使用促進で230億円を捻出して充てることで合意した。 着実な実施を行うための方策として以下が挙げられる
・保険者から被保険者への働きかけ:「ジェネリック医薬品希望カード」の配布
・療担規則、薬担規則の徹底
・普及啓発活動

社会保障費の財源として、後発医薬品使用促進が挙げられていることから、厚労省が後発医薬品の普及に対し大きな関心を寄せているのは間違いない。しかし、現場を見てみよう。沢井製薬が行った薬剤師に対するアンケートを見た限りでは、薬局側は後発医薬品の使用に対し意欲的でないことがわかる。患者側は後発医薬品に対し大いに関心を持っており、変更したいと考えている患者が多くみられたことから(92.8%)、ニーズがある限り改善の余地はあるように思う。ただし、薬局の経営を悪化させるような状態が続くようであれば、難しいようにも感じる。
2008/12/19 23:07-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
一般用医薬品(大衆薬)のうち、H2ブロッカー含有薬や風邪薬などのインターネットによる販売を規制する厚生労働省の省令改正案が実現したとしても、「あまり困らない」と考えているネットユーザーが全体の7割近くに上ることが、わかった。規制の方針を見直す必要があるかどうかでも、「どちらでもよい、分からない」との回答が4割を超えており、全体的にこの問題に対する意識の低さが目立っている。
規制する省令改正案を「知らなかった」と応えのは全体の68.1%(295人)であることからもわかる。
業者や厚労省などの間では、ホットなニュースとして話題となっていたが、どうやら一般の人たちにはその声はあまり届いていないようだ。このままだとネット販売を行っている人たちの訴えはなかなかとどかないのではないだろうか。

2008/12/29

Saya's 薬学ニュース vol.43-薬の過剰投与で死亡/C型肝炎の助成/ネット販売どう決着つける?!/癌の治療薬一歩前進/献血で糖尿病チェック

<Today's news>
1. 「薬の過剰投与で死亡」 東北大に5000万円賠償命令
2. C型肝炎「1a型」の助成期間延長も
3. 利便性か、対面販売か 業者と厚労省の対立深刻
4. 発がん抑制分子「有効」 予防新薬に道 筑波大、マウスで実証

おまけ. 献血で糖尿病もチェック 日赤、来年3月から 無料検査項目に追加

「薬の過剰投与で死亡」 東北大に5000万円賠償命令  
2008年12月17日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳&コメント]
胸水(きょうすい)の治療のため2004年、東北大病院に転院した男性=当時(64)=が死亡したのは不整脈治療剤の過剰投与が原因として、遺族が東北大に計約6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は16日、計約5080万円の賠償を命じた。

薬の過量摂取による死亡。このような記事を見ると、薬の恐ろしさを再認識させられます。薬局に来る患者さんは入院患者に比べれば薬の注射などがない分、このようなケースは起きにくいと考えられる。しかし、睡眠薬など、多量服用することで自殺に用いられるなど、改めて医療従事者としての責任の重さを感じさせられる記事である。

C型肝炎「1a型」の助成期間延長も
2008/12/18 22:58-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
C型慢性肝炎「1b」型で「高ウイルス」の患者に限り、来年度から治療費の助成期間を延長する厚生労働省の方針に関連して、同省は海外の文献などで72週のインターフェロン治療に有効性や安全性が認められれば、「1a」型も助成の延長対象とする考えを示した。 前回の同本部の会合では、薬害肝炎原告の福田衣里子さんが、「わたしは1aだったが、1年半投与して陰性になった。1a、2a、2bにも、48週で足りない人もいると思う」と発言し、厚労省に延長対象の拡大を訴えた。専門家からのヒアリングを行い、72週のインターフェロン治療の有効性と安全性が認められた場合、来年度からの助成の延長対象に1aも入れる考えを示した。2a、2b、3型については、延長の必要はないとの方針で進めている。

Saya's 薬学ニュース vol.25で紹介した時は、「1b」型だけの対象であったが、その時の訴えもあり「1a」型も今回追加検討されるまでに至った。このように、市民からの訴えというのはとても重要であり、この訴えがなければ検討さえもされなかったかもしれない。日本は、他国に比べ国に対する訴えや意思表示が少ないとみられている。フランスでは、国民が立ち上がり、全国でデモを起こし、多くの権利を獲得してきた。医療保険が良い例であろう。国を動かしているのはまさに国民なのである。政治不安が続く日本に、国民は何ができるだろうか。
参考記事:「1b型」限定の助成期間延長に、薬害肝炎原告が異議(キャリアブレイン)

利便性か、対面販売か 業者と厚労省の対立深刻
2008年12月18日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳]
以下の2点で論争が繰り広げられている。
▽「野放し」是正を
「適法なものを勝手に規制できるのか」
現行の薬事法には、ネット販売を規制する条文はない。厚労省は通知などで、販売はビタミン剤など副作用のリスクが低いものに限るよう求めてきたが守られていない。これらの「野放し」を今回の法改正と同時に規制していこうというのである。
▽死活問題
ネット販売売り上げの約6割は、改正法では禁止される風邪薬など「第2類」医薬品。店頭よりネットの売り上げが多い社もあった。だが厚労省の担当者は「ネットではその気になれば麻薬も買えるしニセ薬もはんらんしている。その中で薬のネット販売を公に認めるリスクは大きい」と反論する。

発がん抑制分子「有効」 予防新薬に道 筑波大、マウスで実証 
2008年12月18日-m3.com 提供:毎日新聞社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳&コメント]
がんが発症するのを未然に防ぐ仕組みを、渋谷彰筑波大教授らの研究チームが解明し、17日発表した。がんにかかりにくい体質にする薬の開発につながるという。
研究チームは、「キラーT細胞」などの免疫細胞の表面にできる分子「DNAM1」が、がん細胞上の別の分子と結合する性質に注目。DNAM1ががん細胞を殺す上で重要な役割を担うことは実験で推測されていたが、生物でその作用があるのかは不明だった。渋谷教授は「DNAM1の働きを高めることで、がん治療だけでなく予防にもつながるのでは」と話す。

高齢化社会(日本はすでに高齢社会だが)により、癌の罹患率も増え、薬の開発が不十分な中では死亡率が上昇する一方であった。死因No.1の癌。この薬の開発が重要視されている中、このような研究は治療薬を待ち望んでいる人たちにとって朗報となるであろう。

献血で糖尿病もチェック 日赤、来年3月から 無料検査項目に追加 
2008年12月18日-m3.com 提供:共同通信社

[要訳&コメント]
日赤は17日、街頭などで献血した人に無料で実施している血液検査に、糖尿病の疑いがあるかどうかを調べる項目を新たに加えると発表した。食生活の欧米化などで患者数が増え、国民的にも関心が高くなっている糖尿病を検査対象とすることで、深刻化する献血者の減少に歯止めをかけるのが狙い。
日赤は健康増進を目的とした献血時の無料検査を1982年から実施。肝機能障害の指標となるガンマGTPやコレステロールなどの値を約2週間後に献血者に知らせている。

皆さんは献血していますか?私は実はあまり経験がありません。というのも、小さい頃病院で血液検査を何度か経験したことがあり、その際にとんでもない看護師さんに非常に痛い思いをさせられてから、血液検査には悪いイメージが…とは言っていられませんね。
献血では、エイズ(AIDS/HIV)やコレステロール、肝機能などの検査に比べて、糖尿病の検査できるようになるのですね。これは身近な健康診断所としてよいかも知れませんね。忙しくて検査に行けない…そういう人は血液を提供する代わりに自分の健康を管理する、というのも近代的な方法かも知れません。

2008/12/28

Saya's 薬学ニュース vol.42-ネット販売と医薬品/薬局への不審なクレーム相次ぐ

<Today's news>
1. 催眠鎮静剤ネットで大量販売、購入の19歳自殺図る
2. 北海道で薬局への不審なクレーム相次ぐ


催眠鎮静剤ネットで大量販売、購入の19歳自殺図る
2008年12月17日14時31分-読売新聞

[要訳&コメント]
依存性があり大量服用すると死亡する可能性もある市販の催眠鎮静剤を、国の通知に反して薬局がインターネットで一度に大量販売し、購入した未成年者が自殺を図ったケースがあることが17日、読売新聞の調べでわかった。自殺は未遂だったが重い後遺症が残った。
メーカーは、この薬を売る際には1人1箱を厳守し、頻繁に買おうとする客には販売を控えるよう求める注意文書を販売店に配布していた。

今回の事件は自殺未遂に終わったとはいっても、後遺症として両足に障害が残る結果となってしまった。ネット販売に関しては熱い議論が繰り広げられているが、この事件がネット販売初の被害事例として、議論に大きな影響を与える可能性は高い。これらの現状を、いかに改善できるかが、今後のネット販売において大きなカギを握っているのではないだろうか。

北海道で薬局への不審なクレーム相次ぐ
2008. 11. 28-日経DI

[要訳&コメント]
医療用の非処方せん薬の零売を巡り薬局への不審なクレーム事例が相次いでいるとして、北海道薬剤師会はこのほど、会員薬局に注意を喚起する文書をファクスで配布した。
クレーム事例の内容は、以下のようなもの。まず女性が来局してメフェナム酸(商品名:ポンタールほか)を購入するが、旅行中で時間がないという理由から服薬指導や情報提供を受けずに薬局を去る。そして翌日以降、妊婦が服用してはいけない薬なのに情報提供がなかったと電話でクレームを付け、場合によっては金品を要求する。その際、連絡先を明らかにせず、電話口で男女が入れ替わって話をするのが特徴だという。

被害にあった薬局の二の舞を踏まないように、ということで紹介した記事。オレオレに引き続き今度は薬が標的になっているのがわかる。詐欺の方法なども紹介しているので、他県の人たちでも防止できるよう、広く伝えていきたい。

2008/12/27

Saya's 薬学ニュース vol.41-薬剤師が後発品に変更しないワケ/医師向けの後発品研修開始/抗てんかん薬と自殺リスクの関係/インフルエンザ流行開始/六年制の意義

<Today's news>
1. 薬剤師が後発品に変更しないワケ
2. 医師向け後発品研修会開始 不安払拭で使用促進狙う
3. 2008年AES:専門家らは抗てんかん薬と自殺リスクに関するFDAの見解に反論 
4. インフルエンザ流行開始 昨年に次ぐ早さ 感染研が発表 

おまけ. 「労働力」ではない「質」を見据えた医師養成を ~「6年制」は長いが、「医師バカ」を防ぐための重要な期間~

薬剤師が後発品に変更しないワケ
2008. 12. 10-DIオンライン
[要訳&コメント]
後発品への変更が可能な処方せんを受け付けたにもかかわらず、薬局での変更に至らなかった事例について、何が原因となっているのかを探った。後発品に変更しない理由を薬局薬剤師に尋ねたところ、「患者が希望しないから」が79.8%と最も多く、「先発品との価格差が小さいから」(38.3%)、「後発品の備蓄が不十分だから」(32.5%)がそれに続いた(図)。
2007年調査に比べ、情報提供体制や供給体制に対する不安は幾分解消されたものの、現場の後発品に対する不信感はまだ根強いのが実情といえる。

後発医薬品の値段が安いのは、開発費の抑制のみならず、MRの人件費削減なども含まれているということは今回初めて知った。患者が希望しない、が79.8%となっているが、沢井製薬が行った患者向けアンケートでは、後発医薬品を希望する患者の割合が92.8%でであったことから、「希望しない」のではなく、「同希望したらよいのかわからない」のが現状なのではないだろうか。薬剤師が尋ねられなければ後発品の説明をしない、という調査結果からもわかるように、患者側も対応に困っているのではないか。
参考記事:ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ(沢井製薬) ジェネリック医薬品について、依然として半数を超える薬剤師が“患者さんから尋ねられたら説明”(沢井製薬)
関連記事:後発医薬品アンケート<1> 2008年の後発品調剤は前年から倍増後発医薬品アンケート<2> 医師・薬剤師が先発品にこだわる薬はこれだ!
 
厚生労働省 医師向け後発品研修会開始 不安払拭で使用促進狙う
2008年12月12日-m3.com 提供:じほう ※m3.com閲覧には会員登録が必要です
 
[要訳&コメント]
厚生労働省は、後発医薬品の使用を促進するため、医師向け研修会を今年度から開始する。研修会では、後発品の使用経験が豊富な病院の医師が、診療や経営に与える影響などについて講演する。研修を通じて、後発品使用促進のネックとなっている「医師の後発品に対する不安や疑問」を払拭したい考えだ。

処方するのは医師。後発品変更不可のサインをするのも医師。これらのことから考えられた研修だろうか。確かに、現段階ではいくら薬剤師が説明しても、医師がダメと言うなら…と医師の主張を優先させたいと考えている患者も多い。これは、利害関係によるものなのかもしれないが、薬剤師の職能の問題でもある。それにしても、薬剤師に対する研修会はないのだろうか?
 
2008年AES:専門家らは抗てんかん薬と自殺リスクに関するFDAの見解に反論 
AES 2008: American Epilepsy Society 62nd Annual Meeting. Presented December 5, 2008.
 
[要訳]
抗てんかん薬(AED)は自殺リスクを高めることを示す米国食品医薬品局(FDA)の最近の見解は、てんかん患者および潜在的には今後のAED臨床試験にとって不幸な結果を招くおそれがある、とてんかんの専門家らは懸念している。
「てんかん患者の自殺リスクは3倍高いことが研究で示されている。すべての医師は、てんかん患者の評価の一環として、気分障害と不安障害の有無を検討する必要があるが、「自殺リスクの上昇はすべての薬剤に認められたわけではなく、その理由については説明されていない」とのこと。
 
インフルエンザ流行開始 昨年に次ぐ早さ 感染研が発表 
2008年12月17日-m3.com 提供:毎日新聞
 
[要訳&コメント]
国立感染症研究所(感染研)は17日、全国約5000カ所の医療機関を対象に実施しているインフルエンザの定点調査で、定点あたりの患者数が1・62人(12月1-7日)に上り、全国的な流行開始の指標になる「1・0人」を超えたと発表した。過去10年間で最も早かった昨シーズンに次ぐ早い流行入りとなった。感染研は予防接種などの対策を呼びかけている。
参考記事:インフルエンザの流行始まる(キャリアブレイン)、インフルエンザ全国で流行 過去3番目に早い開始 感染症研究所速報(共同通信社)(検出が多いウイルス(9月以降)は、A香港型(52%)、B型(27%)、Aソ連型(21%)の順で、A香港型が増加傾向だという。)
 
今年のインフルエンザは急速に流行しており、各地で学級閉鎖などのニュースが出ている。流行の型もA香港型が他の倍近くである。米国などでは、タミフルに耐性のインフルエンザが流行しているとのことで、危険を呼び掛けている。タミフル依存の日本も、耐性の発現はすぐ間近に迫っているかもしれない。
 
おまけ...六年制
 
「労働力」ではない「質」を見据えた医師養成を ~「6年制」は長いが、「医師バカ」を防ぐための重要な期間~ 
2008年12月17日-m3.com
 
[要訳&コメント]
医学生のホンネ座談会において、座談会に参加した医学生3人とも異口同音に、「医学部6年生は長いが、多様な医師養成には必要な期間」と語る。
ある学生は、「4年間で医学教育はできるかもしれませんが、それがいいかは別。「職人」を作りたいんだったら、4年制でもいい。しかし、無駄でもいいから、いろんなことを経験させる。それで、いろんなタイプの、いろんなことを考える医師が誕生する。この点が日本の医師養成課程が、他の国とは違う特徴かという気もしています。」
「今、6年間かけて実施している教育は、6年間かけなくても十分にできると思います。ただ、「医師バカ」というか、医学のことしか知らない人が、患者さんと話しても…。だから人間としての幅を広げるためには、6年間かけることはいいことで、本を読んだり、社会に目を向けて活動する時間があることは大切。」
さらに、初期研修に関しては、「やはり1年にするのは短すぎる。後期研修で病院を変えたい場合もあるので。この初期と後期で病院を変える仕組みは残してほしい。」
などの意見が出ている。
 
薬学も六年制となり、未だにカリキュラムが確立していない大学も多々見られる。医師の六年制に習っている部分があるのであれが、これらの学生の意見も参考?になるかもしれない。

2008/12/26

Saya's 薬学ニュース vol.40-死因第4位の肺炎の予防法は?/「頓服」=鎮痛薬?/新たなワクチン承認/エイズの感染機序が明らかに?!/後期医療・無保険者の高齢者10数万人?!

<Today's news>
1. 肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は。 
2. 「頓服」、自分が処方された経験からの誤解多数 
3. 「ヒブワクチン」、19日から任意接種が可能に 
4. HIVは正常な女性性器の皮膚を短時間で通り抜ける

おまけ. 「『後期医療』は見直しではなく廃止を」、「無保険」の高齢者、十数万人の恐れ

肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は。 
2008年12月16日-m3.com 提供:毎日新聞 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です。

[要訳&コメント]
インフルエンザが流行する季節は肺炎も多発する。肺炎が原因で亡くなる人はがん、心疾患、脳血管疾患に次ぎ、4番目に多い。肺炎で死亡する人の9割以上は65歳以上。高齢者をかかえる家族は、肺炎にならない予防策を取ることが大切だ。
肺炎球菌による肺炎の治療ではペニシリン系の抗生物質を使うが、最近は薬が効きにくい耐性菌が現れてきた。そこで注目されているのがワクチン接種だ。ワクチン接種した人はしない人に比べ、死亡率は約7割も下がる。欧米では子ども専用ワクチンが認められている。

意外に多い死因となっている肺炎。最近では、耐性菌の発生によりさらに事態は深刻になっている。ワクチンの摂取により7割も死亡率が下がるのであれば、徹底する必要があるのではないだろうか。相談窓口などがあるといいのだが。

2008年12月16日-m3.com

[要訳&コメント]
国語研調査では、患者の34.1%が「鎮痛剤」と誤解、33.4%が「解熱剤」、16.2%が「包装紙に包んだ薬」と誤解していた(他にも「粉薬」、「座薬」など)。これは、自分が過去に「頓服」として処方された薬を「頓服薬」として思い込んでしまう(例えば、解熱剤を「これは頓服です」として処方されたことのある患者は「頓服」イコール「解熱剤」と思い込むなど)ことが原因とされている。

薬局でも、「頓服」という言葉をよく使うが、あまり気にとめていなかった。こんなにも勘違いがみられるとは。薬袋に「頓服」と書かれていても、必要時に服用する薬であることをしっかり説明しておく必要があると感じた。

2008/12/17 09:10   キャリアブレイン

[要訳]
子どもが感染しやすい「細菌性髄膜炎*」を予防する「ヒブワクチン」が、12月19日から任意接種できる。
*「細菌性髄膜炎」
脳を浮かべる髄液の中に菌が侵入して炎症を起こす。日常的に存在するヒブ(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)や肺炎球菌などによって発病する。

2008年12月16日/HealthDay News Nikkei NET

[要訳&コメント]
エイズの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が男性から女性に感染する新たな経路が明らかにされた。長い間、正常な膣上皮は性交時にHIVの侵入を防ぐ壁となると考えられてきたが、HIVが正常な性器の組織を通り抜け、約4時間で免疫細胞に到達することを突き止めたという。

ウィルスの感染経路や特徴がつかめてくれば、新たな治療薬にも大きく近づける。Saya's 薬学ニュース vol.31でもエイズ(HIV)のワクチン開発により新たな感染者の根絶を意気込んでいるが、数年後にはもしかしたらエイズの新たな感染者数が大きく減少する、という夢が見られるかもしれない。しかし、今の時点でできることはコンドームをつけて自分の身は自分で守ること。それが唯一の、一番の回避方法なのである。
参考記事:HIV感染、数年内根絶も ノーベル賞のモンタニエ氏(産経新聞)
おまけ...後期医療
2008/12/15 13:55-キャリアブレイン

[要訳]
4月に始まった「後期高齢者医療制度」は、「国民を年齢で機械的に差別する人間の尊厳を無視した世界に例がない差別的医療制度」として、35を超える各種団体でつくる「後期高齢者医療制度の廃止を求める東京連絡会」が、「12・14後期高齢者医療制度の廃止を求める東京大集会」を開いた。廃止を求める署名が75歳以上の都民の半数を超える63万人余りに達していることなどを紹介。
 
2008/12/16 21:39-キャリアブレイン
 
[要訳&コメント]
「後期高齢者医療制度」の保険料徴収で、年金受給額が年額18万円未満の人などを対象にした「普通徴収」の滞納率が福岡や青森県で10%を超えることが、明らかになった。低所得の高齢者は全国で約200万人と見られており、この数値から推計すると、「無保険」の高齢者が十数万人に及ぶ可能性がある。
 
国民が動いた。。。
この医療制度が開始されてからは、一向に鎮まることのない反対意見。保険料の滞納により、事実上無保険の高齢者が十数万人いるという予想は恐ろしいものではないだろうか。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」この言葉からも、恵まれた保険「国民皆保険」で守られてきた日本。それがどんどん形を変えてゆく。しかし、国民も忘れてはならないことは、国が大部分を保証しているということ。1割負担が2割になり、2割負担が3割負担へ…と徐々に移行してきているが、それでも7割近くは国で賄われているのだ。情勢が悪化すればもちろん生きる方法も変わる。今まで守られて来たからと言って、それがずっと続くとは思ってはいけない。守られてきたことによる甘さが見受けられる事もあるが、今は皆が協力して立て直していく必要がある、ということを、一人ひとりが再認識していただきたい。

2008/12/25

Saya's 薬学ニュース vol.39-妊婦に対する葉酸は喘息のリスク増加させる?/患者の氏名取り違え/経口中絶薬販売へ/コンピュータを使うあなたのための薬が新発売/医療事故被害者遺族をネットで中傷

<Today's news>
1. 妊娠初期の葉酸摂取が乳児の呼吸器疾患を増大
2. 患者の氏名を確認しても取り違え3件
3. イタリアで08年から経口中絶薬販売へ、バチカンは反発 
4. 富士フイルムなど3社、健康パワーを凝縮したサプリメント「オキシバリアi(アイ)」など発売

おまけ. 自分勝手、クレーマー…医療事故被害者遺族をネットで中傷

妊娠初期の葉酸摂取が乳児の呼吸器疾患を増大 
2008年12月11日-Nikkei NET

[要訳&コメント]
母親が妊娠初期に葉酸を摂取すると、出生した乳児の呼吸器疾患リスクが増大する可能性がノルウェーの研究により示された。葉酸は、先天性欠損(birth defect)リスクの軽減のために摂取が推奨されている。
母親が妊娠初期の3カ月間に葉酸サプリメントを使用していた乳児は、生後18カ月までに喘鳴(ぜんめい)や呼吸器感染症にかかる比率がほかの乳児に比べてやや高かったほか、呼吸器感染症の治療のため入院する比率が24%高いこともわかった。

妊婦には葉酸を、というのはもはや当たり前のように言われるようになったが、新たなリスクが今回発見されたのは興味深い。小児喘息は比較的多い疾患で、小児のQOLも低下する。妊婦が摂取すべき葉酸の量と、呼吸器系のリスクを高める量とがはっきりしてくると、摂取の目安になってよいのだが。
今の時点では、何とも言えないが、多くとればよいというわけでもないので注意である。

2008/12/16 11:47-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
外来診察時、口頭で患者の氏名を確認したにもかかわらず患者の取り違えが起こった事例が、2006年1月から08年8月にかけて3件発生していたことが分かった。患者の取り違えを防ぐため、「診察券の提示や患者の家族により、本人であることを同定する」「患者に名乗ってもらう」などの方法を提案している。
口頭での名前確認は、薬局でも行われていることである。薬局の場合、名前が違えば別人の薬が紹介されることになるので、「こんな薬初めてなんだけど…」などと言われ、患者様に気付かされることもある。また、薬局では引き換え券などを用いて、プライバシーなどを守るシステムを導入するなど方法はさまざまである。口頭確認では不十分である事態がわかった今、各薬局で再度患者確認の方法に関し見直してみていただきたい。

イタリアで08年から経口中絶薬販売へ、バチカンは反発 
2008年12月16日 03:11-AFPBB News

[要訳&コメント]
イタリアで来年2月から経口中絶薬「RU486」を国内の病院で入手可能になるとの計画について、ローマ法王庁は14日、激しく批判した。この薬をめぐっては論争が続いている。この薬で妊娠7週まで堕胎が可能だとしている。イタリアでは1978年に中絶が合法化されたが、中絶に強硬に反対するバチカンからの圧力で、医師らが「良心に基づいた忌避」を理由に人口中絶手術を拒否することができる。

中絶薬の販売、どう思われますか?中絶の話で思い出したのは、海外ドラマの『ボストンリーガル』での一話。レイプをされた少女が妊娠の可能性もあるとして中絶を希望したが、受け入れ病院が人工中絶手術を拒否したために手術を受けられず、レイプ犯との間に子供ができてしまった、という悲劇。この話の中でも、「人工中絶における胎児の権利」をテーマに熱い討論が繰り広げられた。結局、ドラマのエンディングでは、少女の権利が認められ、病院に対して損害賠償の支払いが言い渡された、というものだったと思う。キリスト教との場合は、絶対に中絶出来ない…など、宗教的なものも大きく、この点に関しては非常に難しい議論になるであろう。この議論の行方を見守っていきたいところだ。

富士フイルムなど3社、健康パワーを凝縮したサプリメント「オキシバリアi(アイ)」など発売
2008年12月16日-マイライフ手帳@ニュース (プレスリリース)

[要訳&コメント]
富士フイルムと東亜薬品、および日東メディックの3社は、長時間のパソコン作業やデスクワークの機会が多い人の健康をサポートするマルチサプリメントを、共同で開発。12/18に販売が開始されるとのこと。
「オキシバリアi(アイ)」の主要成分には、最近注目されている健康成分のカロテノイド「ルテイン*」と「アスタキサンチン*」を配合。この2種類の成分の量を変えて、2種類の薬が販売される。この他にもビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2、亜鉛、銅など、互いの働きが長持ちするようネットワークで助け合う有用成分をバランスよく配合しているという。
[小売価格]
オキシバリアi(アイ): 2800円 ※上記写真はオキシバリアi(アイ)のほう。
オキシバリアi(アイ)EX: 4800円
*「ルテイン」
ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれており、欧米ではアントシアニンを豊富に含むブルーベリーよりも盛んに研究が行われ、さまざまな研究成果が報告されている。
*「アスタキサンチン」
海に生息するヘマトコッカスなどの藻類から抽出され、コエンザイムQ10の1000倍(富士フイルム調べ)以上もの健康パワーを持つ話題の成分となっている。

今までに聞いたことのない成分を含むこの商品。効果のほどは?目に良いと言われているブルーベリーを愛用している人も多いので、ブルーベリー以上の効果という宣伝文句が入れば、飛びつく人もいるかもしれない。宣伝を見て購入しに来る人に、簡単に成分の説明をできるように、知識の補完になれば幸いです。
その他、日経トレンディネットnikkei BPnetなどでも紹介されている。
 
おまけ...医療訴訟と被害者遺族
 
自分勝手、クレーマー…医療事故被害者遺族をネットで中傷
2008年12月12日14時43分-読売新聞

[要訳&コメント]
医療ミスで患者を死亡させたとして医師が起訴された事件の遺族たちが、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷にさらされている。
割りばしがのどに刺さり死亡した保育園児杉野隼三ちゃん(当時4歳)の診察にミスがあったとして、耳鼻咽喉(いんこう)科医(40)が業務上過失致死罪に問われた裁判。2審・東京高裁の無罪判決に対し、東京高検が4日、上告断念を発表した直後から、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」やインターネット交流サイト「ミクシィ」内のブログには、隼三ちゃんの両親を非難する文章が次々と書き込まれた。奈良女子大の栗岡幹英教授(医療社会学)は「患者側がネット上で激しく中傷されることで、被害者が萎縮(いしゅく)する傾向がある」と分析する。
 
この医療訴訟に関しては、医療従事者だけでなく、世間では多くの人が注目していた最近の大きなニュースである。日本にいない私でさえも、ニュースなどで目にすることが多々あった。医療訴訟を起こすには、かなりの勇気が必要であったであろう。遺族を亡くした悲しみからの衝動だけで起こせるものではない。このように誹謗・中傷を書く人たちは、自分が被害者遺族の立場だったら...という視点で見られていないのかもしれない。特に産科などの場合、医療訴訟なども一つの要因となり医師の数が減少し、医師不足が深刻な問題となっているのも事実だ。やみくもに医療訴訟へ持ち込むのではなく、被害者遺族や一般の人たちも、そのような現状を十分に把握した上で訴訟などを考えるべきであるとは思うが、このような被害者遺族に対する、集中的な非難は、第三者が見ていてもとても辛いもの。
あなたが被害者の遺族だったら、本当に訴訟を起こさずに耐えることはできましたか?

2008/12/24

Saya's 薬学ニュース vol.38-後発医薬品の使用進まず/薬害C型肝炎訴訟が終結/副作用であるまつげの伸びる作用を美容で利用/特発肺線維症に新薬/アメリカに国民皆保険制度が導入?

<Today's news>
1. 後発医薬品の使用進まず―厚労省調査
2. 日本製薬と和解合意 社長謝罪、6年ぶり決着 薬害C型肝炎訴訟
3. 眼病薬にまつげが伸びる副作用~アラガン、美容目的で販売申請
4. 特発性肺線維症治療薬を新発売-塩野義製薬

おまけ. 米次期厚生長官にダシュル氏 オバマ氏、医療改革へ指名

後発医薬品の使用進まず―厚労省調査   
2008/12/15 14:43-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
先発医薬品からの切り替えが進められている後発医薬品の今年4月の使用状況が、「内服薬」を除いてすべて悪化したことが、厚生労働省の調べで明らかになった。
今回の改定では、後発医薬品の使用を一層促進するため、処方せんの「変更不可」欄に医師の署名がなければ後発医薬品に変更できることになったほか、「後発医薬品調剤体制加算」が新設され、後発品の調剤率が30%以上の場合に4点の加算が取れるようになった。

薬剤師に対するアンケートSaya's 薬学ニュース vol.36でも紹介したが、法が改定されてからも薬剤師の後発医薬品に対する動きは鈍いように感じる。患者に対するアンケートでは多くの患者が後発医薬品での処方を希望しているのに対し、逆行しているかのようだ。未だに多くの医療者が後発医薬品に対する先入観や悪いイメージをぬぐうことができず、また経営悪化の問題などもあり起こっていることのように思う。経営に関しては、何らかの法的処置をとらなければ厳しいものであるが、正しい知識を得ることは自分でも今からできることである。多くのことを誤解していることに気付いていない薬剤師は多いのではないだろうか。何のための後発医薬品推進なのか、海外でこれほどまでに一般的に使用されているのに日本では受け入れようとしないのか、薬剤師としてこの問題にしっかりと向き合うことは責務なのではないだろうか。
参考記事:ジェネリック医薬品について、依然として半数を超える薬剤師が“患者さんから尋ねられたら説明”(沢井製薬)、ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ(沢井製薬)

日本製薬と和解合意 社長謝罪、6年ぶり決着 薬害C型肝炎訴訟
2008年12月15日-m3.com ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳&コメント]
汚染された血液製剤によりC型肝炎に感染したとして、患者らが国や製薬会社に賠償を求めた薬害肝炎訴訟で、全国原告・弁護団と被告の日本製薬は14日、東京都千代田区の同社本社で、事実上の和解となる基本合意書に調印した。
原告は既に国のほか、大半の原告にとって被告企業の田辺三菱製薬(大阪市、旧ミドリ十字)などと合意。1社残っていた日本製薬とも合意したことで、2002年から全国的に起こされた集団訴訟は約6年ぶりに決着した。

5年前、薬害の問題に初めて触れることとなり、当時組織されていた「肝炎訴訟を支える会」で初期に関わっていたことがあるが、やっと決着に辿り着くところまで見届けることができた。薬害は薬の問題であるのに、薬剤師が責任を求められる事は一切なく、そのことに関し強い疑問を抱いていた。薬の責任は薬剤師にあるのでは?当時学生だった私はなぜかよく分かっていなかった。責任を求められない代わりに、職能も低い現実を目の当たりにしたのだった。
学生の頃に携わっていたが、卒業を迎えるころには良い知らせを聞けるようになり、それからは順調であった。組織も徐々に大きくなり、多くの方が懸命に活動している姿をいつの間にか客観的に見る立場へと変わってしまったが、それでも思いは皆と同じであった。ここまで頑張ってこられた原告の方々や、支援されてきた方々に感謝の意を表したいと思います。
 
眼病薬にまつげが伸びる副作用~アラガン、美容目的で販売申請  
2008年12月15日 18:31-USFL.COM - New York,NY,USA

[要訳&コメント]
食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は15日までに、医薬品会社アラガンが申請していた緑内障治療用点眼薬「ルミガン」*の美容目的での販売について、認可すべきであるとの勧告を行った。ルミガンには上まつげの育毛効果があり、認可されれば同薬は「ラティス」の商品名で販売される。
ドライアイや目の炎症といった副作用もみられることもあった。本来は緑内障治療薬であるため眼球に触れると眼圧が低下するといった説明を医師や患者に行いながらの販売になりそうである。
類似記事:まつ毛を長く濃くする薬:緑内障の治療薬を利用(Wired Vision09/01/15)(ボトックスは、ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素を使う薬で、日本でも注射剤として、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣、痙性斜頸の適応で承認されている。近年では医療用としてだけでなく、美容外科領域において、筋弛緩作用を応用した「皺取り」や「輪郭補正(エラ取り)」の目的で使用されることが多い。)

緑内障の治療薬が美容目的で使用…インターネットで検索してみると、多くのネット販売がヒットする。しかもその値段はどれも7000円~1万を超えるものもあり高い。一生まつ毛が長いまま...という夢をかなえるには安いと思うのだろうか。ただし、医療用で使われるほどの薬であることを忘れてはならず、眼球に触れないよう指導を徹底していただきたい。
*ルミガン
商品名:LumiganOphthalmicSolution(ルミガン)
一般名:Bimatoprost(ビマトプロスト) 0.03%
効能効果:緑内障・高眼圧症治療薬
製造元:Allergan(アルゲン)

特発性肺線維症治療薬を新発売-塩野義製薬
2008/12/16 -キャリアブレイン

[要訳&コメント]
特発性肺線維症*治療薬「ピレスパ錠200㎎」(一般名・ピルフェニドン)が販売された。ピレスパ錠は、線維化そのものを抑制する新しい作用機序の薬、臨床試験でも、肺活量の低下を抑制することが確認され、無増悪生存期間も低下の抑制が見られた。

瓶が500錠、PTPが100錠。薬価は676.40円(200㎎)
*特発性肺線維症
原因不明の疾患で、肺胞壁の線維化が進行することにより、不可逆性の蜂巣肺(高分解能CTで肺が蜂の巣様に写る状態)形成を来す予後不良の疾患。一般的に拘束性障害(肺活量や全肺気量の減少)が認められる。症状(肺胞壁の線維化)が進行すると、肺での酸素と二酸化炭素の交換が困難になり、酸素吸入療法などが必要になる場合もある。特定疾患に指定されている。

 
おまけ... 米国医療制度に改革?!

米次期厚生長官にダシュル氏 オバマ氏、医療改革へ指名
2008年12月12日-朝日新聞

[要訳&コメント]
オバマ米次期大統領は11日、医療制度改革を担う次期政権の厚生長官にトム・ダシュル元民主党上院院内総務(61)を指名した。オバマ政権は国民皆保険を視野に入れた抜本的な改革が大きな目標。オバマ氏は「健康保険料は過去8年間で2倍近く高騰し、4500万人もの国民が無保険だ。医療コストを下げ、誰にとっても手頃な費用で済む医療制度を実現したい」と発言。


先進国で唯一国民皆保険制度を持たな行くにアメリカ。そのアメリカでついに国民皆保険を視野に入れた改革がオバマ氏の手によって実現するのか!?オーストラリア/カナダ/日本(+αで他国)の医療制度や薬学事情の比較を行っている私にとっては、非常に興味深いものであったので紹介した。将来アメリカに住みたいと思っている人には、大きな動機につながるかもしれない。

2008/12/23

Saya's 薬学ニュース vol.37-医療安全情報を何故受け取らない?/薬剤ミス・過誤・事故/高血圧治療の新薬/レセプトオンライン請求の義務化撤廃を求め初の提訴/うつ病の勉強しませんか?

<Today's news>
1. <医療安全情報>事故例集 受け取りは全国の病院の半数以下
2. 禁忌薬投与などで注意喚起‐薬剤関連事故の30件を分析 
3. 高血圧症治療薬「CS-866AZ」の製造承認申請を発表
4. 質問すると医師が不機嫌に

おまけ. オンライン請求の義務化撤回求め初の提訴へ「うつ病の完全寛解を目指した薬物療法 Part.1」

<医療安全情報>事故例集 受け取りは全国の病院の半数以下
12月10日15時2分- 毎日新聞

[要訳&コメント]
医療事故や医療ミスの実例を紹介して再発防止に役立ててもらおうと、厚生労働省所管の財団法人・日本医療機能評価機構が無料配布している「医療安全情報」を、全国約9000病院の過半数が受け取ってないことが分かった。
同機構に集まる事故報告は年間1500件近くに上り、発生原因や当事者の勤務状態なども分析している。医療安全情報の内容について、病院から不満などは寄せられておらず、関心の低さが受け取らない主な理由とみられる。

医療事故や医療ミスは、過去の事例から反省して改善点を見つけていくことが最も重要なことであり、それを国が引き受けて行っているというのに、生かされていない現状があることを皆さんは知っていたでしょうか。もっと多くの人に知っていただきたいと思い、この記事を紹介しました。

禁忌薬投与などで注意喚起‐薬剤関連事故の30件を分析
2008年12月12日-薬事日報

[要訳&コメント]
日本医療機能評価機構は、7~9月に報告された医療事故情報の状況をまとめた報告書を公表した。個別テーマで、薬剤に関連した医療事故30件の分析を行った結果、注射器の取り違えや、禁忌薬の投与などが発生していることから、注意を喚起した。
薬剤に関連したヒヤリ・ハット事例の分析では、総発生数1560件のうち「薬剤量間違い」が287件と最も多く、次いで「速度間違い」215件、「薬剤間違い」150件が続く。禁忌薬に関した発生状況は総数57件で、内訳は「薬物過敏」が31件と最も多く、「配合」が18件と続く。

「薬剤間違い」よりも、「薬剤量間違い」のほうが2倍ほど多い。薬剤名の混同などもよく調剤ミスとして挙げられる項目だが、これだけでなく、量計算に関しても集中力を切らさずに行うことが重要であることが考えられる。
ここでひとつカナダの状況を挙げておく。カナダでは、計数調剤はテクニシャンがメインに行う事になっているが、日本のようにPTPシートでの提供より、ボトルから処方された数の薬(裸錠)を計量し、円筒のケースに入れて渡すのメインである。円筒ケースに入った薬を数える患者はまずいないようで、量に関するクレームはほとんどないという。日本では日常茶飯事のクレームが、ここカナダでは非常識のようなとられ方をされる。文化の差なのか、計数調剤の方法によるものなのか。興味深い内容だったので紹介してみることにした。

高血圧症治療薬「CS-866AZ」の製造承認申請を発表 
2008年12月12日 13時52分-NSJショートライブ

[要訳&コメント]
第一三共株式会社は11日、同社が高血圧治療薬として開発したアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタンメドキソミル*と、カルシウム拮抗薬アゼルニジピン*の配合剤「CS-866AZ」の製造販売承認申請を行ったと発表した。
「CS-866AZ」は「オルメテック錠」と「カルブロック錠」の配合剤であるが、これまでの臨床試験成績から同2剤はそれぞれの単剤よりも良好な降圧作用を示すことが明らかとなっているという。
参考記事:高血圧治療薬CS-866AZを国内製造販売承認申請へ (ケアネット)

高血圧症治療薬の新薬が販売されそうです。オルメテックとカルブロックはおなじみの名前であるが、この配合剤はさらに効果が高いことで期待を寄せられている。副作用の軽減などの点は記載されていないことから、従来の副作用が臨床試験においても出ているということだろうか。
*オルメサルタンメドキソル
商品名:オルメテック
効能効果:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗性の降圧剤
副作用:血清カリウムの上昇と異常な血圧低下によるふらつき,めまいなど
*アゼルニジピン
商品名:カルブロック
効能効果:持続性Ca拮抗剤系の降圧剤
副作用:頭痛,動悸,顔のほてり,ふらつき,めまいなど

質問すると医師が不機嫌に
2008年12月12日-毎日新聞

[要訳&コメント]
質問内容:閉経後汗が出て、頭痛、不眠、不安感もあり、婦人科で更年期と診断されてホルモン補充療法を始めました。エストロゲン剤を毎日1錠と黄体ホルモン剤2錠を月に14日間飲んでいますが、黄体ホルモン剤を飲むと頭痛や気分の落ち込みがあり、医師に半量でいいか尋ねると、急に不機嫌になって質問できない雰囲気です。疑問を持ったまま治療を続けたくはないのですが。(52歳、女性)

ホルモン補充療法では、子宮がある人の場合には子宮体がんのリスクを減らすため、黄体ホルモンを併用して生理のような出血を起こさせます。しかし、黄体ホルモンの作用で胃のむかつきやむくみ、気分の落ち込み、頭痛などの不快な反応が起こることも、この治療を始めたころにはきかれます。しかし、しばらく続けるうちにそうした反応は緩和されていく例が多いようです。最近では従来の半分の量のエストロゲンを用いる低用量のホルモン補充療法もすすめられており、その場合の黄体ホルモンの量についても話のできる詳しい医師に相談したいところです。

薬の服用において、医師や薬剤師との信頼関係を築くことはとても重要になってくる。不安を抱えたままでは、薬の心理面での効果が得られず、本来の薬の力を発揮されないのは愚か、薬の服用をやめてしまうことも考えられる。可能のであれば、もっと親身に考えてもらえる医師を新たに探されることをアドバイスしたいが、立地的な問題などからそれも難しいと考える患者が多いのが現状だ。副作用などに関しては、一度薬局の薬剤師に相談してみるのもよい。経験年数の短い薬剤師には難しい内容かもしれないが、詳しい薬剤師と話したい、と注文すれば親身に相談に乗ってくれる薬剤師がいるかもしれない。薬剤師達は、そういった悩みに自信を持ってこたえられるよう、しっかりと知識を蓄えておくことが大切なのではないだろうか。あなたはどんな方法で知識をアップデートしているでしょうか。

おまけ...レセプトオンライン請求

オンライン請求の義務化撤回求め初の提訴へ 
2008/12/11 20:43-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
全国で初めてレセプトのオンライン請求義務化の撤回を求めて国を訴える原告団が、神奈川県保険医協会の会員を中心に結成される。12月26日に「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟原告団」の結成総会を開き、来年1月に横浜地裁に提訴する。
義務化されれば、約12%の会員開業医が辞めるというアンケート結果もある。といったアンケート結果に基づき、高価な機器やソフトを導入するコストに見合ったインセンティブがないことや、紙の請求と比べて情報漏えいの被害が甚大になること、レセプトの審査基準が厳しくなることなどを反対理由として挙げている。
参考記事:60歳以上開業医の約3割が「辞める」-オンライン請求義務化(キャリアブレイン)

レセプトオンライン請求義務化に対し、今まではそれぞれの立場からの意見、という形でしか見えなかったが、とうとう提訴という形で動き始めている。Saya's 薬学ニュース vol.30Saya's 薬学ニュース vol.29Saya's 薬学ニュース vol.11Saya's 薬学ニュース vol.5等でもレセプトオンライン請求に関する記事を紹介してきたが、オンラインシステムについていけない保険医達の定年制を進めたいという厚労省の思惑があるかもしれない、という内容には少し驚かされた。地域医療を支えているのは、年を老いていたとしても立派な医師たちである。医師不足の危機に面している中で、よくもそんな考えが働くものだ、と少しがっかりである。何故定年制を進めたいと考えているかに関しても勉強する必要があるが。。


おまけ...ビデオ講座紹介-ケアネット(※ケアネットにはメンバー登録が必要です)

「うつ病の完全寛解を目指した薬物療法 Part.1」 12月公開
うつ病の薬物治療の基本をビデオで優しく解説!
医師が講師として行っているので、内容も分かりやすく聞きやすいものだと思います。

*非常に貴重なコメントをいただきました。
とても勉強になる内容ですので、こちらもぜひご参照ください。
匿名さんからのコメント

2008/12/22

Saya's 薬学ニュース vol.36-カテキンの効果はいかに?!/抗血小板凝集剤の効果に遺伝子多型が関与/ジェネリック使用に関し患者と薬剤師で大きなギャップ(アンケート)/社会保障カードって?

<Today's news>
1. 非アルコール性脂肪性肝疾患への、高濃度茶カテキン飲料の効果を検証 継続摂取により、肝臓の脂肪蓄積や酸化ストレスが低減
2. クロピドグレルの血小板凝集抑制、CYP2C19遺伝子多型が関与
3. ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ
4. ジェネリック医薬品について、依然として半数を超える薬剤師が“患者さんから尋ねられたら説明” 

おまけ. 社会保障カードは医療費抑制など促進-保団連

非アルコール性脂肪性肝疾患への、高濃度茶カテキン飲料の効果を検証 継続摂取により、肝臓の脂肪蓄積や酸化ストレスが低減 
2008年12月11日-花王株式会社

[要訳&コメント]
肥満が関わる生活習慣病の一つである非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)について、高濃度茶カテキン飲料の効果を検証したところ、肝臓への脂肪蓄積低減による肝機能改善や、活性酸素の過剰発生による「酸化ストレス」を低減させることがわかった。

カテキンの話題はなぜか気になります。知り合いが研究しているせいもあるかもしれません。その研究者の話を効いていると、カテキンは食品の中に含まれているのに、とんでもない効果を将来発揮してくれるのでは?という期待を抱かずにはいられません。こういう話を聞くと、つい効果ばかりに気を取られてしまいがちですが、同時に、食品に含まれている成分であっても、大量に摂取すると安全の域を超えて害を生じさせる危険性がある、ということも忘れてはならないのです。特に”健康食品“を過剰に信じて利用している人たち、忘れてはなりません。

クロピドグレルの血小板凝集抑制、CYP2C19遺伝子多型が関与 
2008年12月11日-薬事日報

[要訳&コメント]
クロピドグレル*は、冠動脈血栓症やステント血栓症などの治療に使用されているが、血小板凝集抑制作用には個体差があることが知られている。その原因としては、薬物代謝酵素のCYP2C19遺伝子の多型の関与が示唆されている。

この遺伝子多型には人種差もあり、米の3%に対し、日は20%であるという。病院で働く人には必要な情報だろうか。
*クロピドグレル
商品名:プラビックス
薬効:チエノピリジン系抗血小板剤
特徴:チクロピジン(パナルジン)と比べ、肝障害などの重い副作用がやや少ないとされる

ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ 
2008年12月11日-沢井製薬(プレリリース)

[要訳]
2008年4月の制度改正から半年後の処方・調剤環境を調査するため、400名の患者に対し意識調査が行われた。患者さんの「ジェネリック医薬品」認知率は97.0%と非常に高く、ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼した経験のある患者さんは、20.5%(5月の調査:13.2%)と増加していた。また、実際にジェネリック医薬品を処方・調剤された患者さんも26.3%(前回18.0%)と増加傾向にある。
ジェネリック医薬品を「処方・調剤して欲しい」とする患者さんは92.8%(前回91.6%)と非常に高いのがわかる。

ジェネリック医薬品について、依然として半数を超える薬剤師が“患者さんから尋ねられたら説明” 
2008年12月12日-沢井製薬(プレリリース)

[要訳&コメント]
また、上記記事に続き薬剤師300名に対する調査においては、実際にジェネリック医薬品への変更が可能な処方せんを応需した際、「常に説明している」薬剤師は14.3%、「患者さんから尋ねられたら説明をしている」薬剤師が依然として最も多く51.0%という結果になった。
参考記事:「尋ねられたら説明」が半数以上占める‐沢井製薬が意識調査(薬事日報)

ジェネリック医薬品に関する意識調査を患者側と薬剤師側とで2つの記事を紹介したが、患者の意識が高いのに対し、その期待に応えられていない状況がわかる。「常に説明しない」理由がどこにあるかを調べたら、さらに面白いのではないだろうか。それにしても、認知率が97.0%、変更希望をしている率が92.8%とう数字には驚いた。実際に現場にいても、(ジェネリックを推進している会社であったが)変更希望者は感覚的には70%程度のものと思っていた。金額の違いを見て、そこまで変化がなければあえて先発品を選ぶ患者が多かったのだ。高収入で金額を気にしないような地域で働いていたのも、一つの理由かもしれないが。

おまけ...社会保障カード?

社会保障カードは医療費抑制など促進-保団連
2008/12/10 22:49-キャリアブレインおまけ

[要訳&コメント]
来年3月末までに基本計画をまとめる「社会保障カード*(仮称)」について、全国保険医団体連合会(保団連)は、「医療費抑制や社会保障給付費の削減を図る『社会保障個人会計』につながり、導入には反対する」との見解を発表した。その理由として、医療、介護、年金などの個人情報が、国に一元管理される恐れがある」とした上で、「個人情報の流出や、国や民間保険会社などによる“データの悪用”が危惧(きぐ)される」を指摘している。

一見便利にみえるこのカード。実際はどうなのだろうか。様々なカードが別々になっており、保管に苦労している人もいれば、医療機関などへの提示の際に面倒であることも確かである。しかし、果たして国と民間保険が有する情報を統一してもよいものだろうか。この件についてはこの先も議論を重ねていきたい。
* 「社会保障カード」(仮称)
「国民一人ひとりに付けられた統一的な番号を基に、健康保険証、介護保険証、年金手帳などの機能を1枚のカードにまとめられるもの。

2008/12/21

Saya's 薬学ニュース vol.35-ネット販売10万の署名をもって反対/C型肝炎に維持療法が効かない?!/中国の偽薬ネット販売サイト/介護の講習を無料で提供

<Today's news>
1. あくまで撤回‐規制改革会議、強気の姿勢崩さず
2. C型肝炎の維持療法は一部の患者には効果なし
3. 一般用医薬品のネット通販継続求め要望書-ヤフーなど
4. 中国政府、偽薬品販売サイトのリストを公表

おまけ. 「素晴らしい機会に感謝」=憩の園=在宅介護のノウハウ学ぶ=17回で修了者7百人に

あくまで撤回‐規制改革会議、強気の姿勢崩さず
2008年12月10日-薬事日報

[要訳&コメント]
規制改革会議は、22日の最終答申に向けて検討を進めているが、医薬品ネット販売の規制緩和に関して、「アドホックなもので(最終)答申とは別扱いで進めたい」とした。「ネット販売と店頭販売がイコール・フッティング(同等の競争条件)のもとで競争し合う。そういう意味での工夫を検討する必要がある」とし、あくまでネット販売と対面販売を同等に扱うルール作りを行うべきとの考えを崩さなかった。

ネット販売規制反対派と賛成派の議論は白熱していく一方であるが、反対派が提示している“利便性を奪うことに対する対応策”などがいつになっても賛成派から提示されないのが気になる点である。これらの内容を話し合わないうちに法改正を行ってよいものなのだろうか。

C型肝炎の維持療法は一部の患者には効果なし
2008/12/11-ロイター

[要訳&コメント]
進行した慢性C型肝炎患者に対する低用量のペグ(PEG)インターフェロンを用いた維持療法は、初回治療が奏功しなかった患者には無効であることが新しい研究で示された。このほか肝疾患の期間が4年を超える患者では、予想外の健康状態の低下がみられることも判明した。
参考記事:原文

非常に残念な研究結果であるが、進撃に受け止めなければならない研究結果であることも明らかである。インターフェロンは決して楽な治療ではない。多くの副作用に悩まされながらも、治癒することを期待して頑張っている患者がいる。その期待を裏切るような無効な治療を続けることは決してならないのである。知り合いにC型肝炎患者を持つ私にとっては、非常に辛いが、同時に注意すべき点も見えたので良かったと思うべきであろう。

中国政府、偽薬品販売サイトのリストを公表 
2008年12月11日 13時14分-ロイター

[要訳&コメント]
高血圧や糖尿病、腫瘍などの薬を販売している74のサイトが、虚偽の説明を行っているとして政府のブラックリストに掲載された。今回ブラックリストに載ったWebサイトの多くは、禁止令にもかかわらず、いまだにアクセスできる状態にあり、薬の販売も続けられている。

中国らしい対応といえば、それまでである。中国のインターネット警察は、アクセスを遮断するなり閉鎖するなりできる広範な権力を有しているのにも関わらずその対応をしていないのは、やはり「他国に対する見せかけ」の部分が大きいためであろうか。なんとも腑に落ちない内容である。

一般用医薬品のネット通販継続求め要望書-ヤフーなど
2008/12/11 21:38   キャリアブレイン

[要訳&コメント]
ヤフーや楽天など6つの企業・団体は12月11日、舛添要一厚生労働相に対し、現行の一般用医薬品(OTC)の通信販売を継続するよう求める要望書と賛同者約10万人分の署名などを提出した。
要望書は、通販で医薬品を購入することが不可欠な消費者にとって、対面販売の義務付けは健康維持の必要性の観点から重大な問題があると指摘。現在行われているOTCの通販を継続するよう要望している。
参考記事:一般薬の通信販売、利便性強調し“継続”求める 医薬品ネット販売規制に反対する楽天のネット署名が10万人突破

ヤフーがネット上で署名を募っているいる記事に関しては、Saya's 薬学ニュース vol.14で紹介したことがあるが、この署名フォームにおいては、薬事法改正の意図など、安全性を考慮した上で行われていることであるという記載は全くない。”国が国民の利便性を奪おうとしている!みんなで食い止めよう”とも受け取れる。政治不信があるなかで、これでは法改正の意図を理解していない人が、簡単に署名してしまう事もあるのではないだろうか。
この点ではこの署名の内容に関しては疑問が残るが、「副作用は販売方法の差ではなく、情報提供の差にある」という意見には納得である。今の状態で、果たしてインターネットで説明する以上に、薬剤師が説明をすることで危険を回避できる、と自信を持って言える薬剤師はどのくらいいるだろう。
あなたはインターネットで記載する情報以上に、患者の健康を守れるような説明ができると胸を張って言えますか?

おまけ...介護


「素晴らしい機会に感謝」=憩の園=在宅介護のノウハウ学ぶ=17回で修了者7百人に
2008年12月2日-ニッケイ新聞 - Brazil

[要訳&コメント]
ブラジルで、社会福祉法人救済会が実施する「老人のための在宅介護講習会~Formacao de Cuidador de Idosos~」の修了式が行われた。現時点で、約七百人が講習を終えたことになるという。この講習会は、毎回栄養士や理学療法士、作業療法士、医師、看護士、心理学者、社会福祉士、言語聴覚士などの専門家を呼び、食事や老人病、薬物、高齢者の心理についてなど幅広いテーマに分けて介護のノウハウを伝授するものだが、無料で行われていたものだという。

ブラジルでも高齢化社会は進んでいるようで、このような取組が市民のために無料で行われているということに驚いたので紹介した。介護の面では、診療報酬などの面で厳しい部分もあり、なかなか需要に応えられていないのが現状である。しかし、このように介護で人の役に立ちたいと思っている人は多く、もちろん日本にもたくさんいることは明らかである。早急に優遇措置がとられ、高齢社会の日本を支える人たちの活躍できる場が与えられれば、と願っている。

2008/12/20

Saya's 薬学ニュース vol.34-薬学生卒後の就職先No.1は?/花粉症に塗る薬/EDと生活習慣病の関係

<Today's news>
1. 「薬局」3割超す‐卒業生は1万人を突破
2. 花粉、ハウスダストを防ぐ。ネイザルガード 塗るマスク 3gを発売
3. 男性の7割、「EDが命に関わる疾患の前兆と知っていたら、もっと早く受診した」

「薬局」3割超す‐卒業生は1万人を突破
2008年12月9日-薬事日報

[要訳&コメント]
全国薬系大学・学部卒業生の就職先は1999年以来、薬局(勤務・開設等)がトップとなっているが、2008年3月卒業生では30・7%と、進路としても「進学」を抑えトップとなった。 卒業生の主な進路は、[1]薬局(勤務、開設等)30・7%(前年28・1%)[2]進学28・9%(31・3%)[3]病院診療所薬局14・8%(15・0%)[4]企業8・6%(7・1%)[5]一般販売業4・7%(5・1%)[6]病院診療所研究生1・8%(2・3%)[7]衛生行政1・5%(1・1%)[8]卸売販売業0・9%(0・6%)[9]大学0・3%(0・6%)

去年や一昨年は、六年制が出てくるときに備えて、同じ量修業する、という意味では進学が多くみられた気がしたが、ここへきて薬局が巻き返すとは…六年制の学生が出てくる前に経験を積んで勝負するといった感じだろうか。六年制の導入で空く2年間のブランクでいかに従業員を獲得するか、で頭を抱えている薬局業には喜ばしい傾向なのではないだろうか。

花粉、ハウスダストを防ぐ。ネイザルガード 塗るマスク 3gを発売
2008年12月9日-ValuePress! (プレスリリース)

[要訳&コメント]
花粉、ハウスダストを防ぐ。ネイザルガード 塗るマスク 3gを発売開始 -鼻の周りに塗るだけ。静電気の層を生じさせ、反発・吸着で鼻への流入を防ぐ新発想。Amazon.comでも販売されているようです。

花粉症で悩む人にはうれしいお知らせですが、今までの塗るタイプと本当に効果に違いがあるのだろうか・・・・塗るタイプ使ってみたことはあるけれど、鼻が詰まってる感があって使用感はそこまで…
どうにかしてもらいたい花粉症…Amazon.comで売ってるとの事ですが、ネット販売の規制がかかりそうなこの時期、これはいったいどの分類に含まれるのかな?第三類な気がするけれど。

男性の7割、「EDが命に関わる疾患の前兆と知っていたら、もっと早く受診した」
2008年12月9日-バイエル薬品株式会社

[要訳&コメント]
ED(勃起不全)治療を希望する男性、または治療中の男性の実生活をより正しく把握するために調査が行われ、EDは糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満など他の疾患を合併している 事も考慮に入れる必要があることを示した。現在、世界で1億5000万人以上の男性がEDに悩まされているという。
基礎疾患を治療することで、EDの治療効果も高めていく上で、重要な発表である。

EDの話を女性の私がするのは少し難しいことだが、あえて今回紹介したのは、EDは本人だけでなくパートナーの女性としても無視できない話あるということ。パートナーが抱える不安を共有したいと思っている女性は意外に多く、記事になっているのを見たことがある。基礎疾患と因果関係があるとするならば、生活習慣病が増え続ければこの問題も大きくなる一方である。性生活を含めて生活を豊かにするには、健康が一番ということである。

2008/12/19

Saya's 薬学ニュース vol.33-たばこ/ネット販売規制で得するのは?/薬局方改正案/日本と米の老人ホーム医療の違い

<Today's news>
1. 脳内の分子スイッチで喫煙欲求が抑えられる
2. 飲食店でのタバコの煙、“不快”が78.3%――でも我慢
3. 薬のネット販売規制で得するのは誰か?
4. 薬局方の改正案、大筋で了承
おまけ.米国における老人ホーム医療の実際

脳内の分子スイッチで喫煙欲求が抑えられる
2008/12/08-Dr赤ひげ.com

[要訳]
脳内の神経ペプチド受容体(ヒポクレチン-1、別名オレキシン A)を遮断することによって、たばこへの欲求を急速に低下できる可能性のあることが新しい研究で示された。また、この受容体がコカイン依存症の再発を制御する上でも中心的な役割を果たしていることが判明している。
喫煙は米国で年間44万人の死亡原因となっており、それによる医療コストは年間1,600億ドル(約15兆円)に上る。
参考:現在販売されている禁煙補助剤
チャンピックス錠0.5mg/1mg(バレニクリン酒石酸塩)*:国内初の飲む禁煙補助薬
・ニコチネルTTS(ニコチン貼付剤)
・ニコレット(ニコチンガム)
*チャンピックス錠(処方せん医薬品)
一般名:バレニクリン酒石酸塩
適応:ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助
用法・用量:第1~3日目は0.5mgを1日1回食後に経口服用、第4~7日目は0.5mgを1日2回朝夕食後に経口服用、第8日目以降は1mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、本剤の服用期間は12週間とする。
副作用:吐き気や鼓腸、便秘などの胃腸症状、頭痛、精神症状(不眠、異常な夢、不安感、イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込みetc)

飲食店でのタバコの煙、“不快”が78.3%――でも我慢
2008年12月9日 12時41分-Business Media 誠

[要訳&コメント]
これまで飲食店での他人のタバコの煙によって不快な思いをしたことがある人は67.3%で、喫煙者の46.5%も「不快に感じたことがある」と答えた。不快な思いをした飲食店を再び利用するか、という問いには22.3%がYesと答えており、リピーターは少ないと考えられる。しかし、不快に思っても「吸うのを止めてほしいと言いたいが、我慢する」人が81.8%と大半を占めた。
参考記事:タバコの喫煙者率、過去最低の25.7%(成人男性の平均喫煙率は39.5%、ピークだった1966年の83.7%と比べ、44.2ポイントの減少。一方の成人女性の平均喫煙率は12.9%で、ピークは1996年の18.0%だったが、その後はほぼ横ばいが続いている。)

タバコ関連で2つの記事を紹介した。日本でも喫煙者は徐々に減少しているようだが、欧米に比べると公共の場での喫煙に関してはまだまだ甘いように感じる。私が現在住んでいるカナダのアルバータ州では、飲食店の全席禁煙が当たり前になっている。喫煙による被害を考えると、本人の健康被害だけではすまされない現状が、医療費からみてとれる。喫煙者の半数近くが、他人の喫煙に対し「不快に感じている」のにも関わらず、自分は吸う、のは…?
タバコをほんの少し値上げして社会保障費の自然増を抑制しよう、と考えるよりは、タバコを買えないほどの金額に設定して、禁煙補助に力をいれ、医療費を削減させたほうが長い目でみて効果があるのではないだろうか。
(喫煙者には反発をかつコメントになってしまって申し訳ないが…)

薬のネット販売規制で得するのは誰か?
2008年12月09日 19時30分-ascii.jp

[要訳&コメント]
この記事では、以下の内容を挙げて、規制することを批判している。
・対面販売にしても薬剤師がインターネットに記載されているような、通り一遍の説明以上はできないであろうし、対面販売でも説明を無視したり聞く耳を持たない人はいるので、安全面の観点においては特に変わりはない。
・日本の薬のネット販売を禁止することで、どうしても手に入れたい人は海外からのネット購入に走る人がいて逆に危険である。(海外の薬なら厚労省が責任逃れができる)
・価格競争の制限により、地方の薬局の経営が守っているだけ。厚労省の決定を、共同声明などで後押ししている団体(日本薬剤師会)なども、所詮厚労省と利害関係のある団体である。
⇒薬局で売っても、リスクをゼロにすることができないないのであれば、リスクをゼロにすることではなく、利便性と安全のバランスを考えて消費者自身が選択させることが重要だ。と述べている。

ホットな話題として討論が繰り広げられている「ネット販売」に関する記事であるが、経済学の切り口で、多少辛口?!に述べられている。彼が最も言いたかったことは、規制を行う意味を改めて考えてほしいということなのではないだろうか。危険だからといってすべてを規制してしまっても、危険度をゼロにすることは難しい。むしろ、いろんな縛りを作ることで消費者の選択権や自己責任が低減されてしまう。
この点に関しては、Saya's 薬学ニュース vol.12(3つ目に紹介した記事)で「ネット販売」に関して初めて取り上げた記事に私がコメントした内容に近いことが書かれている気がした。私が訴えたかった内容はまさにこのことで、薬剤師の立場からでは言いにくかった内容も毒舌だが書かれていたので、ある意味スッキリした。
「しょせん薬剤師は通り一遍の説明しかしないし」という部分を見ても、消費者にはそんな程度にしか薬剤師の職能は映っていないのだな、と改めて残念に思う反面、今までできていなかった、という過去の話を引きずるのではなく、今回の法改正により、薬剤師に何が求められているのかを改めて考え、その期待にこたえていくことが重要なのではないだろうか。
参考記事:大衆薬のネット通販、規制撤回を 大衆薬ネット通販「禁止の根拠を」 「医薬品のネット販売規制、困ります」楽天が署名呼び掛け 医薬品ネット販売の継続容認訴え、業界団体が新自主ガイドライン 「対面販売」貫きネット通販禁止を―日本薬剤師会など9団体が声明 「ネットで安全は買えるのか」対面販売の重要性訴えフォーラム

薬局方の改正案、大筋で了承
2008/12/09 19:48-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
厚生労働省の「薬事・食品衛生審議会」の「日本薬局方部会」が開かれ、現行の第十五改正日本薬局方の改正案と新規収載候補品目案の審議などを行った。このうち改正案については、一般試験法の中の4試験法(微生物限度、無菌、崩壊、溶出)と生薬リュウコツに関する生薬総則や医薬品各条(生薬など)の条文の追加・修正案が大筋で了承された。
参考記事:局方の一部改正案を了承‐一般試験法の日米欧3局方を調和

この内容は、国家試験を受ける薬学生にとっても重要な情報であろう。後発医薬品の、生物学的同等性で用いられている溶出試験法も、一部変更されているので、薬剤師としては確認が必要である。

おまけ...介護医療
米国における老人ホーム医療の実際
2008/12/08-週刊医学界新聞

[要訳&コメント]
米国では老人ホーム(NH)に依存せずに自宅介護を受けている高齢者のためのサービスが充実している。最近はNHをより“自宅”のような環境にするという運動が盛んである(Eden Alternative)。
米国のNH入居者は24時間介護が必要な長期介護の患者以外にリハビリや点滴治療,創傷治療などが必要な短期入居者が混在しているのが特徴である。医療コスト削減のために急性期病院を退院した患者がNHで治療を継続して自宅に戻ることが一般化している。NH入所後90日間は30日ごと,その後は60日に一度の医師による予防を心がけた診療が義務付けられている。
老年医学は内科学とも家庭医学とも異なる独特な専門分野であり,高齢社会の先頭を走る日本に不可欠である。

日本では、老人ホームの新規入居者受け入れリストが長くなる一方で、受入れが厳しい状態が続いている。今後ますます高齢者が増えていく中で、どのように対応していけばよいだろうか。米国と日本の状況を比較しながら書かれているので、そのヒントを見つけられるかもしれない。在宅医療や介護医療に興味のある人は是非読んでみてほしい。

2008/12/18

Saya's 薬学ニュース vol.32-貧しい国への支援(糖尿病とインスリン)/超多剤耐性結核菌/「センサーチップ搭載の薬」/医学部に薬学の授業を導入/「遠隔予防医療相談システム」

<Today's news>
1. 最貧国の子供たちへ、インスリンと糖尿病ケアの無償提供
2. 超多剤耐性結核の治療に大きな一歩
3. 「センサーチップ搭載の薬」で、身体反応をモニター
4.
山形大医学部に医薬品安全対策の講義―国内初
おまけ. KDDI・NEC・慶応大、「遠隔予防医療相談システム」の実験を開始~公民館で画面を共有しながら相談可能

最貧国の子供たちへ、インスリンと糖尿病ケアの無償提供
2008年12月5日-ノボ ノルディスク ファーマ株式会社プレリリース

[要訳&コメント]
ノボ ノルディスク社は、世界で最も貧しい国々の10,000人の子どもたちに、インスリンの無償提供を含む糖尿病ケアの提供を行うことを発表しました。これは、「糖尿病とともに生きる子供たちの未来を変える」というプログラムで、2009年から5年間にわたって行うものです。
先進国において1型糖尿病の子供は寿命を全うできる可能性があるのに対し、サハラ以南のアフリカで生まれた子供が1型糖尿病と診断された場合、その寿命は1年にも満たないのが現状です。

アフリカにおける1型糖尿病の子供たち(0-14歳未満)は、38,000人と推定されるという。その子供たちが、インスリンを手に入れられないことで、1年未満の寿命で亡くなっていく…こんな事実を皆さんはご存知でしたか。食べ物が手に入らず飢餓により亡くなっていくことが多い貧しい地域では、インスリンなどの薬剤はどれだけ高価なものとして映っているのだろう。先進国でも国内で薬が承認されておらず、海外から全額負担で購入している人や、海外で移植をしに日本を発つ人たちもいる。そのくらいの、いやそれ以上に難しいことなのかもしれない。飢餓や感染症ばかりに目が行っていたが、糖尿病も支援の一つになるのだと、この記事で改めて教えられた。この子供たちは、先進国で生まれていれば…と考えることもあるのだろうか。それとも、その先進国という言葉を知らずに亡くなっていくのだろうか。

超多剤耐性結核の治療に大きな一歩
2008年12月8日-週刊医学界新聞

[要訳&コメント]
財団法人微生物化学研究会は超多剤耐性結核菌(XDR‐TB)に有効な治療薬の開発をめざし,米国のリリー結核創薬イニシアチブとの共同開発研究を開始したことを発表した。
微生物代謝産物から発見した化合物CPZEN‐45は、「XDR‐TBに有効で,10剤耐性結核菌にも高い有効性がある」「高い安全性を有する」「耐性菌の出現頻度が極めて低い」といった特徴をもつため、結核菌に対する有効性が期待されている。

結核菌は、一般の人からは「過去の話」のような印象を持たれているかもしれないが、今でも死亡原因第4位に位置する驚異の疾患であることを忘れてはならない。それも、今まで効いていた薬に耐性が出始めていることが原因である。抗生剤・抗菌剤には、必ずと言っていいほど耐性が作られる時が来る。それが遅いか早いか、という話だけであり、新しい薬が開発されたからといって安心してはいられない。さらなる開発が必要なのである。

「センサーチップ搭載の薬」で、身体反応をモニター
2008/12/09-Wired Vision


[要訳&コメント]
あと数年のうちには、錠剤を口にするという行為が、ただ薬を飲んで効いてくれるのを待つ、という以上の意味を持つようになるかもしれない。
薬の効果を簡単にモニターできるシステムを開発した。超小型コンピューターとセンサーを薬剤に組み込み、携帯電話やインターネットにつなぐというものだ。
この技術を利用すれば、患者の重要データを自動的に収集し、糖尿病や高血圧といった慢性疾患の管理に役立てることが可能になる。特に、一定量の投薬に対する患者の反応を詳細に追跡するのに役立つとみられる。
参考原文:WIRED NEWS 原文(English)

この技術で吸収や分布、代謝や排せつの速度が測れれば、薬物動態のチェックなどにも応用できるのではないだろうか。この技術がどこまで使えるものなのかがはっきり分からないので何とも言えないが、技術の進歩はここまで来たか…といった興味深い記事だったので紹介した。

山形大医学部に医薬品安全対策の講義―国内初
2008/12/08 11:00-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
山形大医学部は2010年度から、医薬品・医療機器の承認審査や市販後安全対策、薬害の問題などについて総合的に学ぶ講義を、医学部内に新しく設置する。薬害問題や医薬品の規制の仕組みなどについて系統立って学ぶ講義の開設は、全国でも初の試みになる。
講義の内容は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施している医薬品や医療機器の承認審査や、市販後の安全対策、副作用の被害拡大防止の方法のほか、薬害の問題などについて
山形大医学部では、この他にも現在診療科離れが起きている小児科や産科、救急医学、外科の4科のいずれかを研修内容として選択することで、一部の授業料を免除するなどの取り組みも国内初で行っている。

薬害を学ぶことで、薬の恐ろしさなどを患者の訴えから学ぶことはできるだろうが、これがどこまで学生の胸に響くか...見守っていきたい内容である。西洋医学においては、症状などから診断を下すまでに力を入れ、一度診断が下ればルーチンのように薬が決定される。一度出た薬はなかなか削除されないのが現状ではないだろうか。一人の患者に対しこんなにも薬の種類が処方されているのは、日本くらいではないだろうか、と感じるが、その辺医師がどのように考えているのかディスカッションしたい内容である。薬はできるだけ減らす方向で、さらに最小限の薬で症状を維持する。この点をこれらの教育から気づいてもらえれば、意味のある講義だと思うのだが。

おまけ...在宅医療
KDDI・NEC・慶応大、「遠隔予防医療相談システム」の実験を開始~公民館で画面を共有しながら相談可能
2008年12月8日 18:24-RBB Today

[要訳&コメント]
慶応義塾、NEC、KDDIの3者は8日、同大学の「コ・モビリティ社会の創成プロジェクト」 の一環として、「遠隔予防医療相談システム」の実証実験を開始した。
採血された血液のサラサラ度合いを血液レオロジー測定装置で検出し、データをインターネットで都心の医師に送信し、住民と医師や健康コンシェルジュスタッフが血液データをはじめとする健康データをコミュニケーション端末の画面上で共有しながら、健康相談や助言などを行うことが可能となる。医師と定期的に話すことで住民の安心感を高め、QOL (Quality of Life) の向上、中長期的には自治体の医療費負担の削減につなげることが目標とのこと。なお、血液サラサラ度合いがわかる動画を遠隔で住民と医師が共有するのは、世界初の試みとなる。
                    *遠隔予防医療相談システム概要

Saya's 薬学ニュース vol.10のおまけでもIntelによる、TV電話を使った在宅医療患者のための医療管理システムを紹介した。Intelでは患者の血圧や心拍数のデータ管理によるものだが、今回の慶応大学では血液のサラサラ度合を機械を使って遠隔で測定する事が可能になるという。これらはいずでも、へき地における医師不足などの問題に対し、予防や未病の観点で期待ができる内容なので紹介した。いつでも相談できる、というイ環境は、市民にとっても安心材料となるだろう。

2008/12/17

Saya's 薬学ニュース vol.31-OTC医薬品/健康食品/セルフメディケーション/エイズ(HIV)/「アミノコラーゲン」

<Today's news>
1. 処方せんでもらうかぜ薬と市販のかぜ薬はどう違うのでしょうか?
2. HIV感染、数年内根絶も ノーベル賞のモンタニエ氏
3. 小売企業の携帯サイトで「アミノコラーゲン」販促、レシピ募集で薬のイメージぬぐい売り上げ増加
4. 深部静脈血栓症の治療に超音波の併用が有効

おまけ. 不安のトップは医療面-人口減少・高齢化地域

処方せんでもらうかぜ薬と市販のかぜ薬はどう違うのでしょうか?
2008年12月08日-毎日新聞

[要訳&コメント]
質問内容:先日、風邪を引いて医師にかかり、総合感冒薬をもらいました。薬局で買った市販の総合感冒薬が家にもあるのですが、医師がくれる総合感冒薬と市販の総合感冒薬にはどのような違いがあるのでしょうか。

製品そのもので言えば非常に類似しています。医療用で用いられている、アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)やサリチルアミド(解熱鎮痛成分)、マレイン酸クロルフェニラミン(抗アレルギー成分)などは、市販の総合感冒薬でもよく使われている成分です。また、標準的な用量についてもあまり差はないようです。ただし、医療用の場合は患者の状態(年齢や症状など)に合わせて量の増減や成分を選択し、オーダーメイドで処方できますが、一般用ではそれが難しいということです。
〈もっと詳しく…〉
市販の総合感冒薬はさまざまなメーカーから数多くの製品が販売されており、現在約1,000品目にもなるようです。総合感冒薬は、風邪の諸症状(熱・咳・鼻水などそれぞれ)を抑える複数の成分が1錠あるいは1包にまとまっているため、服用の際に非常に便利である半面、症状に対して不要な成分が含まれていたり、成分ごとの量の調節が難しかったり、という問題があります。一方、医療用医薬品の場合は、医師が患者個人の状態に応じて必要な成分を選び、量を調節して処方することができるよう、多くは1つの製品に1つの成分だけが含まれています。

日本の場合は、ただの風邪でも病院へ行くケースが多くみられるが、結局医師には「お薬出しておくので、ゆっくり休んでくださいね」と言われ、薬局で風邪薬をもらって帰るだけ。病院や薬局での待ち時間で1日をつぶしてしまう。という経験はありませんか?それなら、その待ち時間の中で他の菌をもらって風邪を悪化させるよりは、ゆっくり寝て栄養を取っていたほうがいいと思いませんか?
日本の場合、病院へ行くことで「大丈夫です」という安心を得に行く患者が多いように感じる。それは医療制度にも恵まれている証拠だと思うが、セルフメディケーションの観点では患者の意識が低いようにも感じる。「病は気から」という言葉からも、安心を得ることは重要である。しかし、人から大丈夫と言われなければ安心を得られないのだろうか?普段、風邪気味かな?と感じたら睡眠時間をいつもより長くとり、体を温めるものを摂り、次の日仕事で長引かせたくなければ常備薬を服用する。これを普段行えていれば、その行為に対して「これで大丈夫」と思えるのでは無いだろうか。これこそがセルフメディケーションだと思うが…病院に行ってももらえる薬は同じようなもの。総合感冒薬を服用すると不要な成分を摂取することになるというが、眠気が起こったりという軽度の症状がでるだけで、弱った体で病院に行って他の菌に汚染されるよりは良いと思うのだが。気になるならば、「咳のひどい人に」「熱・鼻水の症状に」などといった成分が限定された薬を常備しておこう。

HIV感染、数年内根絶も ノーベル賞のモンタニエ氏
2008.12.8 12:03-産経新聞

[要訳&コメント]
エイズウイルス(HIV)の発見で今年のノーベル医学生理学賞を受賞する世界エイズ研究予防財団のモンタニエ理事長(76)は、ワクチンの開発により、HIV感染を数年以内に根絶することは「不可能ではないと思う」と述べた。長年エイズ治療ワクチンの開発に取り組んでおり、会見では4、5年以内に治療ワクチンを開発することを望んでいると述べた。

唯一先進国で感染率の上昇を示している国が我が国であるという事も問題であるが、このワクチンは感染者数の多いサハラ砂漠以南の人々に有効なものとなるであろう。ただし、開発・販売当初はワクチン1本が高額になることが予想されるため、効果が見られるには数年かかるかもしれない。世界規模で支援していく必要がある。
参考記事:エイズ孤児1900万人、サハラ以南深刻 ユニセフ
この記事を読んで何か感じた人は、是非「ワンクリック募金」へ(私は毎日訪問してクリックしています)

小売企業の携帯サイトで「アミノコラーゲン」販促、レシピ募集で薬のイメージぬぐい売り上げ増加
2008/12/08-ITpro

[要訳&コメント]
明治製菓が小売企業の携帯サイト上で健康食品「アミノコラーゲン」の販促に力を入れている。ドラッグストアのウエルシア関東(さいたま市)の携帯サイト「ウエルシアのe情報」上で顧客会員から料理レシピを募り予想以上の応募を集めたことで、製品の知識を深めてもらうよいきっかけとなり、同時に販売促進にもつながっているという。

食品関係でレシピを募集することは多いものの、健康食品では珍しい取り組みだという。アミノコラーゲンは私も試したことがあり、味噌汁やスープなどにといて飲んでいた時期があった。食事と一緒に楽しんで健康食品を摂取するというのは、個人的には良いと思う。ただし、健康食品は医薬品とは違い、効果を期待してはいけない。あくまで普段摂取しにくいものを補助的に摂取することで身体の健康を保つ、という意味で利用していただきたいし、摂りすぎないようにもしてもらいたい。多く摂れば効果が高い、というものではないのだ。なので、摂り忘れてしまったから、といって悩むこともないのである。

深部静脈血栓症の治療に超音波の併用が有効
2008/12/08-Dr赤ひげ.com

[要訳]
深部静脈血栓症(DVT)*の治療に、薬剤を単独使用するよりも、超音波と血栓溶解薬を併用する方が早く血栓を溶解できることが、研究で明らかにされた。従来の薬物療法に併用して超音波で血栓を溶解する治療は、血流を回復させ、弁の損傷を防ぐほか、肺塞栓の予防にも有用であるという。

*深部静脈血栓症(DVT)とは、下肢や大腿などの体の深部にある静脈に血栓ができる病態。この血栓が剥離(はくり)して肺に流入し、肺塞栓を起こしたり、心臓発作や脳卒中を引き起こしたりすることもある。米国では毎年35万~60万人がDVTを発症し、このうち少なくとも10万人が死亡しているという。

おまけ...
不安のトップは医療面-人口減少・高齢化地域
2008/12/08 22:41-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
人口減少・高齢化の進んだ集落などを対象とした「日常生活に関するアンケート調査」を行ったところ、生活する上で最も不安な点として、「近くに病院がない」「救急搬送に時間がかかる」など、医療面が最も多く指摘された。一方、9割近くの世帯主が、今後もその地域に居住していきたいと答えているが、上記を理由に移転を希望する人たちもいる。

地域医療の問題点が浮き彫りになっている記事である。一昨日おまけで紹介した記事(Saya's 薬学ニュース vol.29)でも、レセプトオンライン請求の義務化に伴い60歳以上の地方の開業医3割が辞める意向を示していることから、地域医療は益々悪化の傾向を辿る危機を迎えている。オンライン請求でなければならない理由はどこにあるのだろうか?地域医療を悪化させてまでして進めるべき制度なのだろうか。突き進む前にもう一度現状を振り返ってみてはどうだろうか。

2008/12/16

Saya's 薬学ニュース vol.30

<Today's news>
1. 治療抵抗性高血圧患者の心血管疾患リスク予測には24時間血圧測定が優れる
2. 米11月小売りチェーン売上高 1969年以降最大の落ち込み
3. 医薬品取り違え防止で通知―厚労省
4. 【第1回登録販売者試験】合格者は4万1189人‐四国ブロックは最低水準
おまけ. 「医療崩壊」をITが救う

治療抵抗性高血圧患者の心血管疾患リスク予測には24時間血圧測定が優れる
2008/12/04 -日本経済新聞

[要訳&コメント]
治療抵抗性(難治性)高血圧患者*の心血管障害リスクを予測するには、診察室(外来)で測定した血圧値よりも、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による血圧値、特に夜間血圧値が優れていることが明らかにされた。その理由として、昼間(日中)よりも夜間の血圧が心血管の強い危険因子(リスクファクター)となることが挙げられている。
ただし、夜間高血圧の治療を行えば、昼間血圧を管理する従来の治療に比べて予後が向上するのかどうかは疑問」と述べており、「利便性の点で実用的ではないことが多い」という意見もある。
参考記事:同じ内容を翻訳している記事が赤ひげ.comからも紹介されている。(12/08)

診察室での測定は、確かに「白衣高血圧」となることもあり、普段の血圧とは変わってしまう事もある。時間をきめて自分で測定することは、患者本人が治療に対して前向きになっている証拠であり、薬服用による血圧の変動をみるためにもよい。特に難治性の場合は、心血管障害のリスクも高くなるということを十分に説明し、これを機に自主的に治療に参加させるよう血圧の自己測定のさらなる啓蒙を行ってもよいのではないだろうか。
*治療低抗性高血圧とは、標準的な薬物療法を行っても血圧が危険域から降下しないもののこと。利尿薬、ACE阻害薬およびCa(カルシウム)拮抗薬などの薬剤の併用が奏効することがあるという。

米11月小売りチェーン売上高 1969年以降最大の落ち込み
2008/12/04 -USFL.COM - New York,NY,USA

[要訳&コメント]
米国の国際ショッピングセンター協会(ICSC)が4日発表した11月の米主要小売りチェーン各社の既存店売上高は前年同月比2.7%減となり、調査を開始した1969年以降、最大の落ち込みとなった。
唯一好調だったのは小売り最大手ウォルマート・ストアーズで、売上高は3.0%増(前月2.5%増)。それ以外は全店減少。

ウォルマート・スターズだけが売上高の上昇。一体どのような戦略がこのような結果を産んでいるのだろうか。ドラッグストアは生活に必需な製品を販売しているため、この世界恐慌の中でも他の産業よりもがた落ちすることはないことが想像できる。しかし、ドラッグストアには、生活必需品の他にも生活に便利な雑貨なども並行して販売しているが、この不況の中で余計なものに手を出す人は少ない。いかにその部分を削って、生活必需品を他より安く提供して顧客数を獲得するか。この点が大手のチェーン店でなしえる業なのだろうか?

医薬品取り違え防止で通知―厚労省
2008/12/05 20:23-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
厚生労働省は、各都道府県知事などに対し、「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について」と題する通知を医政局長と医薬食品局長の連名で出した。
具体的には、
・各医療機関における採用医薬品の再確認
・医薬品の安全使用のための方策についての確認・検討
・処方せん等の記載及び疑義内容の確認の徹底
・オーダリングシステム等の病院情報システムにおける工夫
・医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集       の5点を求めている。

<医薬品販売名類似品例>
・サクシゾンとサクシン注射液
・アマリールとアルマール
・タキソールとタキソテール
・ノルバスクとノルバデックス
・アロテックとアレロック
・ウテメリンとメテナリン      等

販売名類似品には、調剤エラーの点でも神経を使う部分である。他にも相互作用のチェックや計数確認など、注意を払わなければならない部分が多いが、医薬品名に関しては対応によって大きく改善ができるポイントでもある。そもそも、こんなことがなければエラーは発生しにくかったはずなのに…
一度決めた医薬品の名前を変更するというのは、企業にとっては(特に名付け親にとっては)非常に寂しいことであると思うが、本当に服用する患者さんのためを思うのであれば、調剤過誤に関しては、薬局の注意不足ということで片付けず、製薬企業の皆様にも是非積極的に協力していただきたい内容である。

【第1回登録販売者試験】合格者は4万1189人‐四国ブロックは最低水準
2008年12月05日-薬事日報

[要訳&コメント]
10月末までに、全国で実施された2008年度第1回登録販売者試験合格者は4万1190人となった。総受験者数は6万0271人で、合格率の全国平均は68・3%。
第1回登録販売者試験の都道府県別合格率では、母数に開きがあるものの、最も合格率の高かった神奈川県(84・5%)と、低かった愛媛県(36・9%)では、実に50ポイント近い格差が生じた。
参考記事:【第2回登録販売者試験・東京都】受験出願、前回上回る (第2回登録販売者試験の出願者数は5896人で、第1回目の5223人に比べ、673人増加した。)

薬剤師にとっては気になる「登録販売者」の話題。現時点ですでに4万人を超える登録販売者が誕生していることになる。第二回目の試験の出願者数も10%以上の割合で増えているため、今後もしばらくは増加が見られるであろう。
平成18年の時点では、薬剤師届け出を行った人数が約252,500人で、薬科大学の増加等から近い将来薬剤師過多になると言われている。登録販売者制度も動き出し、六年制卒業の薬剤師ももう目前である。一体薬剤師の将来はいかに?!薬剤師としての職能をどこに持っていくか。他国の薬剤師事情を見ていると、ヒントになることがたくさんある。そんな情報を紹介していくことになるので、見てみたいという人がいれば声をかけてください。
このブログでも紹介していきます。

おまけ... レセプトオンライン請求
「医療崩壊」をITが救う-電子カルテの活用法が鍵
2008/11/28-ITpro

[要訳&コメント]
医師偏在による地方の医師不足、経営不振による病院の閉院など、問題は山積みだ。「カルテ情報の電子化」「レセプトのオンライン化」といった医療機関のIT化は、こうした問題を解決する糸口となり得る。
電子カルテは、これまでの紙のカルテを電子的なシステムに置き換え、診療情報データをデータベースに記録する仕組みである。その普及は、診療の質を向上させたり、医療機関同士の連携を密にしたりといったメリットを生み出す。一般に、電子カルテ導入には三つのステップがある。(1)電子カルテを導入しデータを蓄積する、(2)蓄積したデータを活用する、(3)院内から院外へ連携を広げる、である。

<図●医療機関のIT化によって得られるメリット>
香川県では医療機関同士で電子カルテなどをやり取りし、地域ぐるみで患者をフォローしている(「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」)

昨日紹介した記事(Saya's 薬学ニュース vol.29)のおまけでも紹介した、レセプトオンライン請求に関する別の切り口での記事でったので紹介する。ここでは、ITの利用によりさらなる医療の質UPに貢献できる!という魅力を語っているが、昨日紹介した記事のような、「誰もがITを導入できるほどの予算と余力はない」という現状は見えていないように感じた。IT系情報誌ならではの偏った内容であることを忘れてはいけない。
ただし、ここに記載されていることは医療者としては魅力的なもので、医療機関同士の連携や助け合いといった部分ではぜひ取り組んでいきたい内容である。プライバシーの関係もあり、情報交換は非常に難しい課題ではあるが、このように患者へのメリットを伝えていくことで理解を得られるのではないだろうか。実際私が現在住んでいるカナダのアルバータ州では、州の保険システムを利用した医療機関同士での情報共有が定着している。市民に対するパンフレットもあり、システムの意義を考えると両社にとってWin Winの内容である。この点を考えると日本のシステムは少し遅れているように感じるが、これからでも導入の意義はあると考えている。

2008/12/15

Saya's 薬学ニュース vol.29-慢性の頭痛、はり治療が薬より有効/インフルエンザ流行の兆し 患者増、昨年に次ぐ多さ/「ネットで安全は買えるのか」対面販売の重要性訴えフォーラム/乳がん検診に前向きな女性が9割超 /60歳以上開業医の約3割が「辞める」-オンライン請求義務化

とうとうエドモントンは冬本番?で-25℃をマークしました。どんだけ寒くなるのかなぁ?とずっと恐れていたけれど、日本のような底冷えはなく、しっかり防寒すれば芯まで冷える、ということはないようです。もちろん-25℃は寒いけれど、日本の寒さのほうが、どっちかというと嫌いかな・・・

さて、たまりにたまっている薬学ニュースをさばいていきましょう!!といっても、気になるニュースがたくさんありすぎて、なかなか当日のニュースまでに行きつかない状況です…

慢性の頭痛、はり治療が薬より有効=米研究
2008年 12月 2日 16:47-ロイター

[要訳&コメント]
慢性的な頭痛の軽減にはアスピリンなどの薬よりもはり治療が効くとの調査結果が発表された。

片頭痛で悩む人は、薬の確保に必死で、よく効いていた薬が製造中止になった知らせを聞いた時、すがる思いで薬局に電話をしてきたことを覚えている。その人のために薬を確保してあげたかったが、法律上それはできないので、断らざるを得なかったのが悔しかったことがある。そんな人たちへの第二の選択肢として、はり治療が有効であるという話は今回初めて聞いたが、欠点として通院が必要であるということ。最低5~6回の通院が必要であるという。薬の服用であれば、頻繁な通院は必要ない。本気で悩んでいる人は、試したいと思う記事かもしれないが、その効果の差はそこまで大きくなく、人によっては同等かそれ以下の効果しか得られない場合もあるということを覚えておいてほしい。

インフルエンザ流行の兆し 患者増、昨年に次ぐ多さ
2008.12.2 20:22-産経新聞

[要訳&コメント]
インフルエンザ患者の報告数が急増しており、近く全国的な流行が始まりそうなことが調べでわかった。全国的な流行開始の指標である、定点当たり1・00人(11月23日までの1週間で定点当たり0・56人)を近く超える可能性が高いとみている。台風が今季一度も本州に上陸せず、空気が乾燥していることが原因との指摘もある。
参照記事:大阪でインフルエンザ早くも猛威 全国の4割占め学級閉鎖相次ぐ 「お茶」 インフルエンザを予防 効果的な「うがい」 化粧水や風呂にも◎

今の時期話題のインフルエンザ、今年は昨年に続いて患者数が急増しているというのが気になるところ。高齢者や、特に小児の場合は感染率が高いようなので、予防注射はもちろんのこと、インフルエンザの流行には、空気の乾燥により鼻やのどなどの粘膜が弱ることが関係するとみられているため、うがいや手洗いなどの基本的な予防策が重要である。特にカテキンを多く含む「緑茶」でのうがいは抗菌作用の点で効果も高く、食生活から取り入れることができるので是非みなさんにも実行していただきたい。カテキンの作用は嘘ではなく、しっかりと研究により実証されおり、その効果の幅はもはや想像の範囲を超える。だまされた、と思って試した人にはいいことがあるかも☆

「ネットで安全は買えるのか」対面販売の重要性訴えフォーラム
2008/12/03 15:05-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
薬害被害者団体や消費者団体などでつくる「緊急フォーラム実行委員会」が、東京都内で「なぜ薬は対面販売されるのか―ネットで安全は買えるのか」をテーマにフォーラムを開いた。
・「一般用医薬品では、副作用などの重要な事実が添付の文書に記されてはいるものの、簡単に、他の箇所と同じように記載されていることが多く、情報に『重み』がない。
・「薬局などで売られている医薬品は、パッケージを見れば、医薬品の情報を得ることができるが、ネットだと宣伝に都合のいい文句だけを書かれる可能性がある。」
・「わたしたちはただ、『ネット通販反対』と言っているわけではない。一般用医薬品販売の基準をどこに定めるか、ということが問題。長期間にわたる議論を経て、対面販売の原則を確立した今の段階では、きちんとその原則を貫くのが適切だろう、というのがわたしたちの主張だ」

今までも何度も取り上げてきているOTC医薬品のネット販売に関する話題だが、今回の記事は訴えている内容にも深みがあり、どこか人を引き付けるような、納得させるような意見が見られた気がする。確かにネット販売になれば、販売促進のための宣伝文句などが強調され、安全面での表示が陰になってしまう可能性も否定できない。ネット販売の継続には個人的に賛成だったが、この点がはっきりとされない限り、安全使用の面ではネット販売の継続は難しいかもしれない。ネット販売を禁止するにしても、継続するにしてもこの点は明確にしてほしい点である。

おまけ...ピンクリボン-乳がん
乳がん検診に前向きな女性が9割超
2008/12/04 13:55-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
30-50歳代の女性の9割以上が、乳がん検診を「受けたい」と前向きにとらえていることが、意識調査の結果から分かった。一方、「検診を受けたことはないが、受けたい」と答えた339人に、今まで受診せずにきた理由を聞いた結果では、「診察中に行くことが困難だから」が17.1%(58人)で最多。以下、「マンモグラフィーは痛そうだから」16.8%(57人)、「自分が乳がんになると考えたことがなかったから」(11.7%)などが続いた。「どこで受診すればよいかわからないから」とする回答も11.7%(40人)あった。
参考:乳がん.jp

「余命1か月の花嫁」の影響で世間にも乳がんの認識が広まるようになったこともあり、イベントブースでは「乳がん検査」などの目がよく目につくようになった。気にしている女性が多いことは上記のアンケートからも明らかだが、「検診を受けたことはないが、受けたい」が45.3%(339人)を占めていることから、まだまだ検査の実施までにはいきついていないようだ。「余命1か月の花嫁」でも、早期発見・早期治療が助かるための一番の方法、と呼びかけていることもあり、認識を拡大させる次のステップとして検診の利便性が次の課題になると考えられる。それにしても、ここまで影響力をみせるTVの力には、本当に驚かされる。

おまけ...レセプトオンライン請求義務化
60歳以上開業医の約3割が「辞める」-オンライン請求義務化
2008/12/02 09:39-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
2011年4月からレセプト(診療報酬請求書)のオンライン請求を義務化*する厚生労働省の方針に対し、60歳以上の開業医の約3割が「義務化されれば、開業医を辞める」と考えていることがわかった。「地域の患者の健康などを熟知したベテラン開業医が、オンライン請求義務化で廃院すれば、地域医療に深刻な影響を及ぼす。個々の医療機関の実情に応じた柔軟な対応が必要で、義務化は撤回すべき」と指摘している。

レセプトオンライン請求義務化に関しては、前々から取り上げているが、開業医に深刻な問題としてとらえられていることがわかる。ただでさえ医師不足で大きな問題を生んでいる状態で、しかも地方の開業医は、地域医療に欠かせない状態です。そんな医師が少なくともアンケートで答えた747人が廃業することになれば、地方の人はどのように医療の質を維持していくことができるだろうか。これは確かに無視できない結果のように感じた。
*レセプト(診療報酬)の請求については、
・手書きで紙レセプトを提出
・レセプト作成用コンピュータ(レセコン)で紙レセプトを作成・提出
・レセコンでデータ作成し、CD-Rやフロッピーディスクなどの記録メディアで提出
・レセコンで作成し、データ送信用パソコンからISDN回線やインターネット回線を用いてオンラインで電子的に請求
-の4つの方法がある。厚労省は、11年度以降原則、オンライン請求を義務化する予定だ。

2008/12/13

Saya's 薬学ニュース vol.28-抗生物質の長期使用は腸内の有益な細菌に悪影響 /ネット販売でヒアリング/利尿剤の配合剤2製品が登場へ/医薬品ARB・利尿剤の配合剤2製品が登場へ /一般薬リスク分類を見直し‐酸化マグネシウムが第2類

抗生物質の長期使用は腸内の有益な細菌に悪影響
2008/12/01 -Dr赤ひげ.com

[要訳&コメント]
抗生物質を長期間または繰り返し使用すると、腸内の有益な細菌に悪影響を及ぼす可能性のあることが新しい研究で判明した。腸内細菌はヒトの栄養摂取、代謝および免疫反応のさまざまな側面で役立っている。
今まで、体内の有益な細菌に及ぼす害は少ないと考えられていたシプロフロキサシン*に焦点を当てた研究で、抗生物質治療が終了した後、腸内細菌がほぼ治療前のレベルに戻るまでに4週間を要することが判明したという。ただし、腸内細菌の数に変動がみられる間、腸障害の徴候を訴えた被験者はいなかった、との報告もある。

抗生物質が処方された患者様に対し、「腸内細菌のバランスが崩れることで便が緩くなることがあります」。という説明は、新人の薬剤師でも行っていることだが、この説明が理論的に説明されているのが今回の研究である。悪い菌(細菌・真菌)を殺す抗生剤は、体内の善い菌(腸内細菌)を同時に殺してしまう事は想像できるものであるが、このように腸内細菌には時間がかかっても再生能があるため、服用を中止すれば便の状態も改善する、ということも理にかなった説明であったと言える。ただし、回復までにかかる期間が想像よりも長いことに驚かされた。
*シプロフロキサシン
商品名:シプロキサン
分類:ニューキノロン系
適応菌種:ブドウ球菌,レンサ球菌などの化膿菌や,リン菌,大腸菌,シゲラ属,インフルエンザ菌,緑膿菌,そのほか炭疽菌などの病原菌等
呼吸器,泌尿生殖器,のど,眼,耳鼻科領域の感染症,乳腺炎や外傷・手術後の感染予防に広く用いられている薬。

【民主党議員懇】ネット販売でヒアリング
2008年12月01日-薬事日報

[要訳&コメント]
民主党の「適正な医薬品販売を検討する議員懇談会」は、厚生労働省や内閣府の規制改革会議、日本薬剤師会から医薬品のインターネット販売についてヒアリングした。参加者はそれぞれ
日薬:「会員薬局からは、今回のネット販売規制で地方の薬局が困るという声は1件も来ていない」と回答。
規制改革会議:、▽利便性を求める消費者の声▽地方の中小薬局が困るという声▽ネットでも安全性担保が技術的に可能--とする根拠に関し、「事業者が把握した根拠がある。ネット上で効能・効果等を読むことで店頭での説明の代わりが可能と考える」などと回答
厚労省:「そもそも薬は危険なものであり、他の商品とは全く異なる」との認識を示した上で、「年内には厚労大臣と相談し、省令化したい」とした。
民主党は、「薬は他の商品とは異なる。市場原理に則ると危険だ」とし、対面販売が原則との認識を示し、今回のヒアリングはあくまでインフォーマルな会合であると説明した。

規制改革会議からは、ネット販売を行う会社などの訴えに似た内容を意見しているが、それに対して特に無反応な形で他の参加者(日薬・厚労省)が意見しているように感じた。意見交換ということなので、このような形でもよいと思われるが、規制改革会議が発言した「ネット上で効能・効果等を読むことで店頭での説明の変わりが可能と考える」ことに関しては、私も完全ではないが納得出来る部分がある。消費者も少なからず薬は他の商品とは別物と考え、最低初めて服用する際にはどんな注意があるのか、どんなふうに飲むのかなどは読むのが自然ではないだろうか。果たして他の参加者はどのように感じたのであろうか。

【薬食審医薬品第一部会】ARB・利尿剤の配合剤2製品が登場へ
2008年12月02日-薬事日報

[要訳&コメント]
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は新たな8成分(配合剤含む)と、名称変更などを審議、承認を了承した。承認されたのは以下の薬。
・高血圧治療薬<ARBと利尿剤の配合剤>
「コディオ配合錠6・25、同12・5」(ノバルティス・ファーマ):バルサルタン/ヒドロクロロチアシド
「エカード配合錠4、同8」(武田薬品):カンデサルタンシレキセチル/ヒドロクロロチアジド
・パーキンソン病
「トレリーフ錠25mg」(大日本住友製薬):ゾニサミド(「エクセグラン」と同一成分)
・加齢黄斑変性症
「ルセンティス硝子体内注射液2・3mg/0・23mL」(ノバルティスファーマ):ラニビズマブ(遺伝子組み換え)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)(効能追加)
「アドエア250ディスカス」(グラクソ・スミスクライン):サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル

ARBと利尿剤の配合剤は「プレミネント(ロサルタンカリウム/ヒドロクロロチアジド)」につづいて2番目となるらしい。今回二種類のARB(ディオバンとブロプレス)で2個所から販売が承認されたが、どのような違いが出てくるだろうか。これから出てくる新薬にも注目しておきたい。

【厚労省】一般薬リスク分類を見直し‐酸化マグネシウムが第2類
2008年12月02日-薬事日報
[要訳&コメント]
一般用医薬品のリスク分類見直しで、制酸・緩下剤の「酸化マグネシウム」を第3類薬から第2類薬に変更された。医療用酸化マグネシウムの添付文書で重大な副作用の追加の添付文書改訂が行われたことに基づくものであるという。
参考記事:「酸化マグネシウム」の長期投与に注意

酸化マグネシウムの副作用に関しては、Saya's 薬学ニュース vol.24で紹介しているが、これがきっかけとなりリスト分類の見直しを早急に行ったことに多少驚いている。対応が早いではないか。
いまや「酸化マグネシウム」は比較的安全な薬ですよ、とは言えなくなってしまった。第一類第二類には、それなりの理由があって分類されているので、その理由に関して個人で勉強が必要と感じた。対面販売が重要視されている中、対面販売によるメリットを何かしらの形で示すことができれば、薬剤師の職能も向上するのでは?そのためには、積極的な勉強が必要である。

2008/12/12

Saya's 薬学ニュース vol.27-大阪のHIV感染、最多200人超 「潜在」はさらに…/インフルエンザH1N1型にタミフル耐性株が増加/インフルエンザ患者急増、昨年に次ぐペース/介護職に一部の医療行為認める…厚労省

大阪のHIV感染、最多200人超 「潜在」はさらに…
2008.11.29 14:16-産経新聞

[要訳&コメント]
国内の感染者・患者数は、調査を始めた昭和60年以降、年々増加。今年9月までの累計で1万5037人に上っているが、感染の判明自体を恐れて検査を避ける「潜在感染者」はさらに多いとみられる。感染原因は同性間の性的接触が42%を占める一方、異性間の接触でも35%に上り、特に若い世代に目立つという。
献血する際の2次感染予防検査で見つかるケースが大阪の場合は他府県と比べて多く、HIV検査を目的に献血する「不適切利用」が多いのが原因とみられる。
こうした状況に対処するため、府や大阪市は今年3月、大阪・ミナミに大阪検査相談・啓発・支援センター「chot CASTなんば」を開設。保健所などの従来の公的検査機関と異なり、検査時間を週2回の平日夜間や土日の午後に設定したことから、検査に訪れた人が増加した。この結果、感染者・患者数も増えた面もあるという。

感染者数が上記に示されているが、「潜在感染者」数が把握できない状態では、この数だけをみて判断はできないだろう。先進国の中で唯一感染者が上昇している日本。まだエイズに対する認識の低さから、「不治の病」「差別」「偏見」の文字は取り払われていないように思う。感染した人の中には、「感染してどうせ死ぬんだから、これからみんなにうつしてやる」といった考えに発展してしまった人もいるようで、これらの誤解が事態の悪化を生んでしまうこともある。さらなる呼びかけが必要であろう。
エイズに感染してから恐ろしいのは、感染により免疫が低下している状態では他の疾患にかかりやすく、たかが風邪でも危険な状態に陥ってしまうことである。保険を適用した上で治療を行えること、不治の病ではないこと、治療をきちんと行えば周りと変わらない生活を送れるということを知ってほしい。
参考記事:エイズ孤児1900万人、サハラ以南深刻 ユニセフ 中国のエイズ感染者26万人

インフルエンザH1N1型にタミフル耐性株が増加
2008/12/01 23:18-キャリアブレイン

[要訳]
インフルエンザのH1N1型ウイルスに、タミフルが効かない「耐性株」が増加している。昨年北欧でタミフルの効かない耐性株の増加傾向が確認されて以来、世界的に増加しているという。耐性株の出現は遺伝子の突然変異に伴い、ウイルスを構成するタンパク質の一部が変質したことによるもの。

インフルエンザ患者急増、昨年に次ぐペース
2008/12/02 12:00-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
インフルエンザの患者報告数が早くも急増している。患者報告数は今年第41週以降増え続けており、第47週(11月17日―23日)の患者報告数は2632人。「1987年の測定開始以降、最も流行が速かった昨シーズンに次ぐペース。今、急速に増えている時だ」として、注意を呼びかけている。
今年第36週から第47週までの患者累積報告数は6351人。年齢群別では、5―9歳の1952人、0―4歳の1647人、10―14歳の882人、30―39歳の570人の順に多い。 インフルエンザウイルスの分離報告でみても、「今後どの型が流行するかはまだ不明」という。

インフルエンザに関する記事を2つつづけて紹介したが、今年はインフルエンザに注意が必要な年であることは間違いない。お年寄りの感染者数が他の年齢層に比べて未だ少ないデータが出ているが、心配なのは小児である。他の年齢層に比べて2倍~4倍近くになっている。インフルエンザウィルスの型も報告ではまんべんなく検出されているので、その動向も今後見ていく必要がありそうだ。
新型インフルエンザが恐れられている中、さらに薬の耐性が増加しているというのは、深刻な事態ととらえるべきであろう。最近は、インフルエンザといえば「タミフル」といったように、タミフルばかりに頼りすぎている傾向がみられる。これでは、耐性ができるのは当り前、といっても言い過ぎではない。抗生剤や抗菌剤は必ずと言ってよいほど耐性が現れるものである、という認識を忘れず、量や期間に関しても"使いすぎ"ということがないよう、医師の処方に対しても注意を払って頂きたいと願うばかりだ。

おまけ...介護
介護職に一部の医療行為認める…厚労省
2008年11月20日 読売新聞

[要訳&コメント]
厚生労働省は介護や高齢社会の将来像を示す「安心と希望の介護ビジョン」の中で、研修を受けた介護従事者が、施設で医師、看護師と連携しながら、経管栄養の処置やたんの吸引などができる仕組みが必要だとした。

この意見に対しては、「唐突すぎる」などの反対意見も出ていたが、私個人としては厚労省にしては大胆で興味深い取組のように感じた。医師や看護師不足が深刻な中、施設には介護士という立派な資格保持者がいる。介護士の中にも、緊急な事態にあった場合法律で規制され何もできない自分に対し悔しい思いをした人がいるのではないだろうか。そういう人たちは自分でしっかりと勉強しているし、新たな裁量が与えられれば、研修にも積極的に取り組もうとする人達は出てくるはずである。
確かに唐突すぎる話かもしれないが、せっかくこのような話ができているのであれば、時間をかけてでも前向きに検討していただきたい内容であったので掲載した。
これは薬剤師にも言えることで、国によっては研修を受けた薬剤師に対し、処方権を与えているところもある。これも同じことで、処方できる薬剤や期間に制限があるものの、前向きに考えている薬剤師は研修に参加し、少しでも患者の役に立とうと頑張っている。もちろん、処方するということは、責任はすべて自分にかかってくる訳で、あえてその権利を持とうとしない薬剤師も存在する。それでよいのではないだろうか。薬が切れてしまいそうだが、医師にすぐにかかれないような患者に対し、薬剤師の責任のもとで1週間だけの処方を行い、その間に医師にかかるよう説明する。患者にとっても、医師にとってもありがたいことのように感じるのは私だけであろうか。

2008/12/11

Saya's 薬学ニュース vol.26-国民の信頼感、「医療機関」がトップ/インスリン治療50年、患者を表彰…日本イーライリリー/骨粗しょう症予防にホルモン補充療法を希望したが/医療崩壊の根本原因は医療費抑制(下)日本も見習う?弱者切り捨ての米病院会社

国民の信頼感、「医療機関」がトップ
2008/11/27 18:51-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
「議員、官僚、大企業、警察等の信頼感」に関する調査で、医療機関に対する国民の信頼感は自衛隊と並んで1位だった。医療機関に対する評価は、2004年調査で3位だったが、前回07年調査で2位に上昇、今回はさらに評価を上げた。(詳しくは、中央調査社のホームページで。 http://www.crs.or.jp/)
医療機関・自衛隊・裁判官は例年上位3位に浮上する3項目。毎年その順位に違いはあるものの、平均して信頼される項目であることがわかる。この他にも、「国民に信頼されるよう努力してほしい機関・団体」や「閉鎖的で、国民に対して情報公開が進んでいないと思う機関・団体」の順位も出ていて、現代の状況を反映しているアンケート結果であるため、非常に見ていて興味深い。下がり続ける首相への期待感。この点をどのように改善していくものか。
個人的に気になったので紹介したが、医療機関で働く職種は様々であり、医師・看護師・薬剤師など、細かい分類はどのようになっているのだろうか。そもそも、この医療機関と答えた人のイメージの中に"薬局"が含まれているかは疑問であるが。

インスリン治療50年、患者を表彰…日本イーライリリー
2008年11月28日 読売新聞

[要訳&コメント]
世界糖尿病デーの14日、製薬企業の日本イーライリリーは、インスリン治療を50年以上続けてきた患者を「リリー インスリン50年賞」として表彰した。
受賞者は、医師で糖尿病患者の中村和之さん(84)(東京)ら9人。中村さんは、多忙で不規則な生活を送っていた大学病院勤務時代に発症。自身でも血糖コントロールを行いながら、内科医として糖尿病教室の開催や患者会設立などに力を尽くしてきた。

経験から患者に対して指導ができるため、説得力も大いにあったのではないだろうか。医師と共に治療を行う。患者としては新しい間隔で医師と向き合っていたのではないかと思う。自分も病気を克服していくことで、患者に勇気を与えることができることは簡単なことではない。この賞はそんな意味で素敵だなぁと感じたので紹介した。血糖コントロールの重要性を、薬剤師の立場として伝えられるかが今後の課題である。

骨粗しょう症予防にホルモン補充療法を希望したが
2008年11月28日-毎日新聞

[要訳&コメント]
質問内容:58歳の女性。52歳で閉経しましたが、最近、卵巣の摘出手術を受けました。卵巣から出る女性ホルモンがなくなると骨粗しょう症になりやすいときき、ホルモン補充療法(HRT)を受けたいと婦人科の先生に相談しましたが、もうすぐ60歳なので必要ないと言われました。私のような場合、HRTは対象外なのでしょうか。

女性の場合、閉経して女性ホルモン・エストロゲンが減るのと合わせて、骨量も急速に減少していき、骨粗しょう症や骨折が増えるのが一般的に知られています。
ホルモン補充療法(HRT)には、足りなくなったエストロゲンを補充して骨粗しょう症を予防する効果が認められているのと合わせて、悪玉コレステロールの低下、血管が硬くなるのを防ぐ、皮膚や粘膜を乾燥から守る、記憶など脳の働きを改善するなどで、多くのデータがあります。
HRTで乳がんが増えるという不安についても、さらなる研究により、期間が5年以内なら乳がんは増えないことも明らかになっています。また、始めるタイミングについても閉経後なるべく早い時期に始めることがよい効果につながり、70歳を越すとリスクが高くなるというデータもあります。
こうしたことから、HRTはなるべく60歳までに始めるのが望ましいとされていますが、これを越えたあとでも、個々の患者さんの状態をチェックし、リスクとベネフィットを説明し納得を得た上で行うことがすすめられています。

特に医師から「何故必要ないのか」ということを説明されないと、やはり患者様というのは不安になるものなのですね。今後の服薬指導でも、自分の知っている知識のみで「NO」というのではなく、何故という部分を大切にしていかなければ、と考えさせられた記事でした。

おまけ... アメリカの医療制度続き。
医療崩壊の根本原因は医療費抑制(下)日本も見習う?弱者切り捨ての米病院会社
2008/11/21 -JanJanニュース

[要訳&コメント]
日米は同じ「小さな政府」だが、医療費を比べると米国は税金で1人当たり日本の3.5倍も負担している。日本政府が言う「公的負担は限界に達した」は誤りだ。医療保険を民間に依存する米国では貧乏人は加入できないのに加え、1人当たり医療費が日本の3倍近い。現在の日本が世界に誇る公的医療保険制度を崩壊させてはならない。
米国で民間医療保険の加入者は、総人口3億人のうちの約2億人にとどまる。高齢者や低所得者らを救済しようとする公的医療保険として、メディケア(高齢者・障害者)とメディケイド(低所得者)がある。各約4,000万人で、ほかに無保険者4,500万人がいる状態だ。
米国の保険会社は儲けを多くするため、病人を保険に入れない。自営業者の保険料が高く設定してあるのもそのためである。反対に大企業で働く人の保険料は安い。健康な人が多く、大口の顧客を獲得できるからである。そのため、公的保険に有病者が集中して加入者の負担が増すという悪循環に陥っている。医療費負債による個人破産は原因の第2位に上昇しているのも事実である。
その他混合診療のデメリットや株式会社の病院のぼったくり度合などに関しても述べている。

Saya's 薬学ニュース vol.24に引き続きアメリカの医療に関して紹介したが、これは、日本がアメリカ同様の医療に転換しつつあることへの警鐘である。みていてぞっとするような内容であり、これでは憲法第25条の『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。』を約束できるものとは思えない。
何度も繰り返すようだが、この記事やマイケルムーア監督の映画「Sicko(シッコ)は、はあくまでもアメリカの医療の一面であることには変わりないが、本質を知っているからこそ訴えるかけるものがあるようにも思える。はたしてこのまま突き進んでよいものなのだろうか。国民もこれらの情報は知っておくべきなのではないだろうか。

2008/12/10

Saya's 薬学ニュース vol.25-Wikipedia、薬に関する項目は重要情報の抜けが多いとの調査結果/「1b型」限定の助成期間延長に、薬害肝炎原告が異議/肝炎患者への治療費助成、国の目標下回るペース/フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について

Wikipedia、薬に関する項目は重要情報の抜けが多いとの調査結果
2008年11月26日 17時08分-ITmedia

[要訳&コメント]
ユーザーが編集するWebリソース「Wikipedia」を使って薬に関する情報を調べる消費者は、潜在的に有害な薬物相互作用や副作用が分からずじまいになる恐れがあることが、最新の調査で明らかになった。健康関連のインターネット検索を行う人の3分の1は、一般市販薬や処方薬の情報を探しており、Google検索でWikipediaの項目が検索結果の最上位に表示されることが多いという。
「人々が医療関係者に問い合わせずに、こうした項目を唯一の、あるいは信頼できる情報源として利用すると、このような情報が分からないという悪影響がある」、「こうした情報の抜けは、誤りと同じくらい危険なことがある」と述べ、情報の取得方法に関し危険を呼びかけている。

情報の取得方法として利便性の高いインターネット。しかし、情報があふれるばかりで、その中から適切な情報を得るのは非常に難しくなっている。自分の飲む薬に関してインターネットで調べることは、有益な情報が得られることもあるが、同時に良い情報(効能や効果)しか得られず、悪い情報(副作用など)は表示されないケースがあることを、この記事では訴えている。TVでも同じだが、こういったメディアの場合は、その真偽を見極める必要があることを忘れてはいけない。この辺の情報提供も、医薬品の適正使用における薬剤師の役割に含まれるように感じた。
記事の筆者が推奨する医薬品検索サイト(英語):medlineplus.gov、medscape.com
参考記事:
医療情報、女性は友人や家族よりネットが頼り――米調査(医療および健康情報の入手先として、医師や医療専門家を挙げた人は82%、インターネットと答えた人は60%、友人、家族、夫や恋人という回答は51%)
「ネットで医療情報を入手」71%――米調査(ヘルスケア関連の情報入手にインターネットを使ったことがある人は2005年の53%から71%に増加。これは、米国の成人1億6000万人に相当するという。)

「1b型」限定の助成期間延長に、薬害肝炎原告が異議
2008/11/27 11:33-キャリアブレイン

[要訳]
C型慢性肝炎「1b」型で「高ウイルス」の患者に限り、来年度から治療費の助成期間を延長する厚生労働省の方針に対し、薬害肝炎原告の福田衣里子さんが異議を唱えた。「1a、2a、2bにも、(現行の助成期間の)48週で足りない人もいると思う」とも指摘し、同省の方針に疑問を投げ掛けた。
現在の助成期間の対象となっている48週について、「インターフェロンの医薬品の添付文書にも、48週を超えた有効性、安全性については確立していないと書かれている。添付文書上は48週を超えた延長については保証していない」と数字の根拠を説明した。

肝炎患者への治療費助成、国の目標下回るペース
2008/11/27 17:27   キャリアブレイン

[要訳]
今年度から始まった肝炎患者へのインターフェロン治療費の助成制度で、8月末までの5か月間に受給者証の交付を受けた患者の数が、年間10万人の国の目標に対して、2万2562人にとどまっていることがわかった。
、「制度自体を知らない人もいるので、一人でも多くの人に普及・啓発を行いたい」と話しており、リーフレットの作成や各都道府県に拠点病院を設置することなどによって、検査の重要性の周知やかかりつけ医の研修を行いたいとしている。

フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について
平成20年11月28日-厚生労働省 医薬食品局血液対策課

[要訳&コメント]
平成16年12月9日に公表したフィブリノゲン製剤納入先医療機関を対象として、平成19年11月7日付で実施した追加調査の結果について、11月14日までに回収した医療機関からの回答を取りまとめた状況を紹介している。

元患者数
お知らせした:6,441人(54%)(※2)
お知らせしていない:5,460人(46%)
→理由
投与後に死亡:1,826人(15%)
連絡先不明、連絡がつかない:1,900人(16%)
その他:1,734人 (15%)
[合計]11,901人

C型肝炎患者に関する記事を3つ紹介した。訴訟における原告側の勝訴により、国からの援助を勝ち取ったが、実際の援助は目標を大きく下回る状況であることがわかる。被害者の中には、援助の対象となる感染時期よりも前に感染した人たちもいたり、輸血を受けたことさえも忘れ、感染に全く気付いていない人たちも多く、さらにこの援助自体を知らない人たちさえもいる。といったように、情報がいきわたっていないのが現状である。
中でも、医療機関からのお知らせを行っていない人たちが50%近くいることに驚かされる。C型肝炎の場合は感染しても自覚症状がない場合も多く、症状が出てきた頃には重症になっている事も多いため、医療機関からの通知が患者への唯一の伝達方法であるかもしれない状況で、この数字には非常に残念である。連絡先が不明であり、連絡がつかないなら仕方がないとしても、方法があるのであれば、まずはそこから徹底して行っていくことが本当の意味での患者の救済になるのではないだろうか。