2008/12/19

Saya's 薬学ニュース vol.33-たばこ/ネット販売規制で得するのは?/薬局方改正案/日本と米の老人ホーム医療の違い

<Today's news>
1. 脳内の分子スイッチで喫煙欲求が抑えられる
2. 飲食店でのタバコの煙、“不快”が78.3%――でも我慢
3. 薬のネット販売規制で得するのは誰か?
4. 薬局方の改正案、大筋で了承
おまけ.米国における老人ホーム医療の実際

脳内の分子スイッチで喫煙欲求が抑えられる
2008/12/08-Dr赤ひげ.com

[要訳]
脳内の神経ペプチド受容体(ヒポクレチン-1、別名オレキシン A)を遮断することによって、たばこへの欲求を急速に低下できる可能性のあることが新しい研究で示された。また、この受容体がコカイン依存症の再発を制御する上でも中心的な役割を果たしていることが判明している。
喫煙は米国で年間44万人の死亡原因となっており、それによる医療コストは年間1,600億ドル(約15兆円)に上る。
参考:現在販売されている禁煙補助剤
チャンピックス錠0.5mg/1mg(バレニクリン酒石酸塩)*:国内初の飲む禁煙補助薬
・ニコチネルTTS(ニコチン貼付剤)
・ニコレット(ニコチンガム)
*チャンピックス錠(処方せん医薬品)
一般名:バレニクリン酒石酸塩
適応:ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助
用法・用量:第1~3日目は0.5mgを1日1回食後に経口服用、第4~7日目は0.5mgを1日2回朝夕食後に経口服用、第8日目以降は1mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、本剤の服用期間は12週間とする。
副作用:吐き気や鼓腸、便秘などの胃腸症状、頭痛、精神症状(不眠、異常な夢、不安感、イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込みetc)

飲食店でのタバコの煙、“不快”が78.3%――でも我慢
2008年12月9日 12時41分-Business Media 誠

[要訳&コメント]
これまで飲食店での他人のタバコの煙によって不快な思いをしたことがある人は67.3%で、喫煙者の46.5%も「不快に感じたことがある」と答えた。不快な思いをした飲食店を再び利用するか、という問いには22.3%がYesと答えており、リピーターは少ないと考えられる。しかし、不快に思っても「吸うのを止めてほしいと言いたいが、我慢する」人が81.8%と大半を占めた。
参考記事:タバコの喫煙者率、過去最低の25.7%(成人男性の平均喫煙率は39.5%、ピークだった1966年の83.7%と比べ、44.2ポイントの減少。一方の成人女性の平均喫煙率は12.9%で、ピークは1996年の18.0%だったが、その後はほぼ横ばいが続いている。)

タバコ関連で2つの記事を紹介した。日本でも喫煙者は徐々に減少しているようだが、欧米に比べると公共の場での喫煙に関してはまだまだ甘いように感じる。私が現在住んでいるカナダのアルバータ州では、飲食店の全席禁煙が当たり前になっている。喫煙による被害を考えると、本人の健康被害だけではすまされない現状が、医療費からみてとれる。喫煙者の半数近くが、他人の喫煙に対し「不快に感じている」のにも関わらず、自分は吸う、のは…?
タバコをほんの少し値上げして社会保障費の自然増を抑制しよう、と考えるよりは、タバコを買えないほどの金額に設定して、禁煙補助に力をいれ、医療費を削減させたほうが長い目でみて効果があるのではないだろうか。
(喫煙者には反発をかつコメントになってしまって申し訳ないが…)

薬のネット販売規制で得するのは誰か?
2008年12月09日 19時30分-ascii.jp

[要訳&コメント]
この記事では、以下の内容を挙げて、規制することを批判している。
・対面販売にしても薬剤師がインターネットに記載されているような、通り一遍の説明以上はできないであろうし、対面販売でも説明を無視したり聞く耳を持たない人はいるので、安全面の観点においては特に変わりはない。
・日本の薬のネット販売を禁止することで、どうしても手に入れたい人は海外からのネット購入に走る人がいて逆に危険である。(海外の薬なら厚労省が責任逃れができる)
・価格競争の制限により、地方の薬局の経営が守っているだけ。厚労省の決定を、共同声明などで後押ししている団体(日本薬剤師会)なども、所詮厚労省と利害関係のある団体である。
⇒薬局で売っても、リスクをゼロにすることができないないのであれば、リスクをゼロにすることではなく、利便性と安全のバランスを考えて消費者自身が選択させることが重要だ。と述べている。

ホットな話題として討論が繰り広げられている「ネット販売」に関する記事であるが、経済学の切り口で、多少辛口?!に述べられている。彼が最も言いたかったことは、規制を行う意味を改めて考えてほしいということなのではないだろうか。危険だからといってすべてを規制してしまっても、危険度をゼロにすることは難しい。むしろ、いろんな縛りを作ることで消費者の選択権や自己責任が低減されてしまう。
この点に関しては、Saya's 薬学ニュース vol.12(3つ目に紹介した記事)で「ネット販売」に関して初めて取り上げた記事に私がコメントした内容に近いことが書かれている気がした。私が訴えたかった内容はまさにこのことで、薬剤師の立場からでは言いにくかった内容も毒舌だが書かれていたので、ある意味スッキリした。
「しょせん薬剤師は通り一遍の説明しかしないし」という部分を見ても、消費者にはそんな程度にしか薬剤師の職能は映っていないのだな、と改めて残念に思う反面、今までできていなかった、という過去の話を引きずるのではなく、今回の法改正により、薬剤師に何が求められているのかを改めて考え、その期待にこたえていくことが重要なのではないだろうか。
参考記事:大衆薬のネット通販、規制撤回を 大衆薬ネット通販「禁止の根拠を」 「医薬品のネット販売規制、困ります」楽天が署名呼び掛け 医薬品ネット販売の継続容認訴え、業界団体が新自主ガイドライン 「対面販売」貫きネット通販禁止を―日本薬剤師会など9団体が声明 「ネットで安全は買えるのか」対面販売の重要性訴えフォーラム

薬局方の改正案、大筋で了承
2008/12/09 19:48-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
厚生労働省の「薬事・食品衛生審議会」の「日本薬局方部会」が開かれ、現行の第十五改正日本薬局方の改正案と新規収載候補品目案の審議などを行った。このうち改正案については、一般試験法の中の4試験法(微生物限度、無菌、崩壊、溶出)と生薬リュウコツに関する生薬総則や医薬品各条(生薬など)の条文の追加・修正案が大筋で了承された。
参考記事:局方の一部改正案を了承‐一般試験法の日米欧3局方を調和

この内容は、国家試験を受ける薬学生にとっても重要な情報であろう。後発医薬品の、生物学的同等性で用いられている溶出試験法も、一部変更されているので、薬剤師としては確認が必要である。

おまけ...介護医療
米国における老人ホーム医療の実際
2008/12/08-週刊医学界新聞

[要訳&コメント]
米国では老人ホーム(NH)に依存せずに自宅介護を受けている高齢者のためのサービスが充実している。最近はNHをより“自宅”のような環境にするという運動が盛んである(Eden Alternative)。
米国のNH入居者は24時間介護が必要な長期介護の患者以外にリハビリや点滴治療,創傷治療などが必要な短期入居者が混在しているのが特徴である。医療コスト削減のために急性期病院を退院した患者がNHで治療を継続して自宅に戻ることが一般化している。NH入所後90日間は30日ごと,その後は60日に一度の医師による予防を心がけた診療が義務付けられている。
老年医学は内科学とも家庭医学とも異なる独特な専門分野であり,高齢社会の先頭を走る日本に不可欠である。

日本では、老人ホームの新規入居者受け入れリストが長くなる一方で、受入れが厳しい状態が続いている。今後ますます高齢者が増えていく中で、どのように対応していけばよいだろうか。米国と日本の状況を比較しながら書かれているので、そのヒントを見つけられるかもしれない。在宅医療や介護医療に興味のある人は是非読んでみてほしい。

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