2008/12/25

Saya's 薬学ニュース vol.39-妊婦に対する葉酸は喘息のリスク増加させる?/患者の氏名取り違え/経口中絶薬販売へ/コンピュータを使うあなたのための薬が新発売/医療事故被害者遺族をネットで中傷

<Today's news>
1. 妊娠初期の葉酸摂取が乳児の呼吸器疾患を増大
2. 患者の氏名を確認しても取り違え3件
3. イタリアで08年から経口中絶薬販売へ、バチカンは反発 
4. 富士フイルムなど3社、健康パワーを凝縮したサプリメント「オキシバリアi(アイ)」など発売

おまけ. 自分勝手、クレーマー…医療事故被害者遺族をネットで中傷

妊娠初期の葉酸摂取が乳児の呼吸器疾患を増大 
2008年12月11日-Nikkei NET

[要訳&コメント]
母親が妊娠初期に葉酸を摂取すると、出生した乳児の呼吸器疾患リスクが増大する可能性がノルウェーの研究により示された。葉酸は、先天性欠損(birth defect)リスクの軽減のために摂取が推奨されている。
母親が妊娠初期の3カ月間に葉酸サプリメントを使用していた乳児は、生後18カ月までに喘鳴(ぜんめい)や呼吸器感染症にかかる比率がほかの乳児に比べてやや高かったほか、呼吸器感染症の治療のため入院する比率が24%高いこともわかった。

妊婦には葉酸を、というのはもはや当たり前のように言われるようになったが、新たなリスクが今回発見されたのは興味深い。小児喘息は比較的多い疾患で、小児のQOLも低下する。妊婦が摂取すべき葉酸の量と、呼吸器系のリスクを高める量とがはっきりしてくると、摂取の目安になってよいのだが。
今の時点では、何とも言えないが、多くとればよいというわけでもないので注意である。

2008/12/16 11:47-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
外来診察時、口頭で患者の氏名を確認したにもかかわらず患者の取り違えが起こった事例が、2006年1月から08年8月にかけて3件発生していたことが分かった。患者の取り違えを防ぐため、「診察券の提示や患者の家族により、本人であることを同定する」「患者に名乗ってもらう」などの方法を提案している。
口頭での名前確認は、薬局でも行われていることである。薬局の場合、名前が違えば別人の薬が紹介されることになるので、「こんな薬初めてなんだけど…」などと言われ、患者様に気付かされることもある。また、薬局では引き換え券などを用いて、プライバシーなどを守るシステムを導入するなど方法はさまざまである。口頭確認では不十分である事態がわかった今、各薬局で再度患者確認の方法に関し見直してみていただきたい。

イタリアで08年から経口中絶薬販売へ、バチカンは反発 
2008年12月16日 03:11-AFPBB News

[要訳&コメント]
イタリアで来年2月から経口中絶薬「RU486」を国内の病院で入手可能になるとの計画について、ローマ法王庁は14日、激しく批判した。この薬をめぐっては論争が続いている。この薬で妊娠7週まで堕胎が可能だとしている。イタリアでは1978年に中絶が合法化されたが、中絶に強硬に反対するバチカンからの圧力で、医師らが「良心に基づいた忌避」を理由に人口中絶手術を拒否することができる。

中絶薬の販売、どう思われますか?中絶の話で思い出したのは、海外ドラマの『ボストンリーガル』での一話。レイプをされた少女が妊娠の可能性もあるとして中絶を希望したが、受け入れ病院が人工中絶手術を拒否したために手術を受けられず、レイプ犯との間に子供ができてしまった、という悲劇。この話の中でも、「人工中絶における胎児の権利」をテーマに熱い討論が繰り広げられた。結局、ドラマのエンディングでは、少女の権利が認められ、病院に対して損害賠償の支払いが言い渡された、というものだったと思う。キリスト教との場合は、絶対に中絶出来ない…など、宗教的なものも大きく、この点に関しては非常に難しい議論になるであろう。この議論の行方を見守っていきたいところだ。

富士フイルムなど3社、健康パワーを凝縮したサプリメント「オキシバリアi(アイ)」など発売
2008年12月16日-マイライフ手帳@ニュース (プレスリリース)

[要訳&コメント]
富士フイルムと東亜薬品、および日東メディックの3社は、長時間のパソコン作業やデスクワークの機会が多い人の健康をサポートするマルチサプリメントを、共同で開発。12/18に販売が開始されるとのこと。
「オキシバリアi(アイ)」の主要成分には、最近注目されている健康成分のカロテノイド「ルテイン*」と「アスタキサンチン*」を配合。この2種類の成分の量を変えて、2種類の薬が販売される。この他にもビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2、亜鉛、銅など、互いの働きが長持ちするようネットワークで助け合う有用成分をバランスよく配合しているという。
[小売価格]
オキシバリアi(アイ): 2800円 ※上記写真はオキシバリアi(アイ)のほう。
オキシバリアi(アイ)EX: 4800円
*「ルテイン」
ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれており、欧米ではアントシアニンを豊富に含むブルーベリーよりも盛んに研究が行われ、さまざまな研究成果が報告されている。
*「アスタキサンチン」
海に生息するヘマトコッカスなどの藻類から抽出され、コエンザイムQ10の1000倍(富士フイルム調べ)以上もの健康パワーを持つ話題の成分となっている。

今までに聞いたことのない成分を含むこの商品。効果のほどは?目に良いと言われているブルーベリーを愛用している人も多いので、ブルーベリー以上の効果という宣伝文句が入れば、飛びつく人もいるかもしれない。宣伝を見て購入しに来る人に、簡単に成分の説明をできるように、知識の補完になれば幸いです。
その他、日経トレンディネットnikkei BPnetなどでも紹介されている。
 
おまけ...医療訴訟と被害者遺族
 
自分勝手、クレーマー…医療事故被害者遺族をネットで中傷
2008年12月12日14時43分-読売新聞

[要訳&コメント]
医療ミスで患者を死亡させたとして医師が起訴された事件の遺族たちが、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷にさらされている。
割りばしがのどに刺さり死亡した保育園児杉野隼三ちゃん(当時4歳)の診察にミスがあったとして、耳鼻咽喉(いんこう)科医(40)が業務上過失致死罪に問われた裁判。2審・東京高裁の無罪判決に対し、東京高検が4日、上告断念を発表した直後から、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」やインターネット交流サイト「ミクシィ」内のブログには、隼三ちゃんの両親を非難する文章が次々と書き込まれた。奈良女子大の栗岡幹英教授(医療社会学)は「患者側がネット上で激しく中傷されることで、被害者が萎縮(いしゅく)する傾向がある」と分析する。
 
この医療訴訟に関しては、医療従事者だけでなく、世間では多くの人が注目していた最近の大きなニュースである。日本にいない私でさえも、ニュースなどで目にすることが多々あった。医療訴訟を起こすには、かなりの勇気が必要であったであろう。遺族を亡くした悲しみからの衝動だけで起こせるものではない。このように誹謗・中傷を書く人たちは、自分が被害者遺族の立場だったら...という視点で見られていないのかもしれない。特に産科などの場合、医療訴訟なども一つの要因となり医師の数が減少し、医師不足が深刻な問題となっているのも事実だ。やみくもに医療訴訟へ持ち込むのではなく、被害者遺族や一般の人たちも、そのような現状を十分に把握した上で訴訟などを考えるべきであるとは思うが、このような被害者遺族に対する、集中的な非難は、第三者が見ていてもとても辛いもの。
あなたが被害者の遺族だったら、本当に訴訟を起こさずに耐えることはできましたか?

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