2008/12/24

Saya's 薬学ニュース vol.38-後発医薬品の使用進まず/薬害C型肝炎訴訟が終結/副作用であるまつげの伸びる作用を美容で利用/特発肺線維症に新薬/アメリカに国民皆保険制度が導入?

<Today's news>
1. 後発医薬品の使用進まず―厚労省調査
2. 日本製薬と和解合意 社長謝罪、6年ぶり決着 薬害C型肝炎訴訟
3. 眼病薬にまつげが伸びる副作用~アラガン、美容目的で販売申請
4. 特発性肺線維症治療薬を新発売-塩野義製薬

おまけ. 米次期厚生長官にダシュル氏 オバマ氏、医療改革へ指名

後発医薬品の使用進まず―厚労省調査   
2008/12/15 14:43-キャリアブレイン

[要訳&コメント]
先発医薬品からの切り替えが進められている後発医薬品の今年4月の使用状況が、「内服薬」を除いてすべて悪化したことが、厚生労働省の調べで明らかになった。
今回の改定では、後発医薬品の使用を一層促進するため、処方せんの「変更不可」欄に医師の署名がなければ後発医薬品に変更できることになったほか、「後発医薬品調剤体制加算」が新設され、後発品の調剤率が30%以上の場合に4点の加算が取れるようになった。

薬剤師に対するアンケートSaya's 薬学ニュース vol.36でも紹介したが、法が改定されてからも薬剤師の後発医薬品に対する動きは鈍いように感じる。患者に対するアンケートでは多くの患者が後発医薬品での処方を希望しているのに対し、逆行しているかのようだ。未だに多くの医療者が後発医薬品に対する先入観や悪いイメージをぬぐうことができず、また経営悪化の問題などもあり起こっていることのように思う。経営に関しては、何らかの法的処置をとらなければ厳しいものであるが、正しい知識を得ることは自分でも今からできることである。多くのことを誤解していることに気付いていない薬剤師は多いのではないだろうか。何のための後発医薬品推進なのか、海外でこれほどまでに一般的に使用されているのに日本では受け入れようとしないのか、薬剤師としてこの問題にしっかりと向き合うことは責務なのではないだろうか。
参考記事:ジェネリック医薬品について、依然として半数を超える薬剤師が“患者さんから尋ねられたら説明”(沢井製薬)、ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ(沢井製薬)

日本製薬と和解合意 社長謝罪、6年ぶり決着 薬害C型肝炎訴訟
2008年12月15日-m3.com ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要訳&コメント]
汚染された血液製剤によりC型肝炎に感染したとして、患者らが国や製薬会社に賠償を求めた薬害肝炎訴訟で、全国原告・弁護団と被告の日本製薬は14日、東京都千代田区の同社本社で、事実上の和解となる基本合意書に調印した。
原告は既に国のほか、大半の原告にとって被告企業の田辺三菱製薬(大阪市、旧ミドリ十字)などと合意。1社残っていた日本製薬とも合意したことで、2002年から全国的に起こされた集団訴訟は約6年ぶりに決着した。

5年前、薬害の問題に初めて触れることとなり、当時組織されていた「肝炎訴訟を支える会」で初期に関わっていたことがあるが、やっと決着に辿り着くところまで見届けることができた。薬害は薬の問題であるのに、薬剤師が責任を求められる事は一切なく、そのことに関し強い疑問を抱いていた。薬の責任は薬剤師にあるのでは?当時学生だった私はなぜかよく分かっていなかった。責任を求められない代わりに、職能も低い現実を目の当たりにしたのだった。
学生の頃に携わっていたが、卒業を迎えるころには良い知らせを聞けるようになり、それからは順調であった。組織も徐々に大きくなり、多くの方が懸命に活動している姿をいつの間にか客観的に見る立場へと変わってしまったが、それでも思いは皆と同じであった。ここまで頑張ってこられた原告の方々や、支援されてきた方々に感謝の意を表したいと思います。
 
眼病薬にまつげが伸びる副作用~アラガン、美容目的で販売申請  
2008年12月15日 18:31-USFL.COM - New York,NY,USA

[要訳&コメント]
食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は15日までに、医薬品会社アラガンが申請していた緑内障治療用点眼薬「ルミガン」*の美容目的での販売について、認可すべきであるとの勧告を行った。ルミガンには上まつげの育毛効果があり、認可されれば同薬は「ラティス」の商品名で販売される。
ドライアイや目の炎症といった副作用もみられることもあった。本来は緑内障治療薬であるため眼球に触れると眼圧が低下するといった説明を医師や患者に行いながらの販売になりそうである。
類似記事:まつ毛を長く濃くする薬:緑内障の治療薬を利用(Wired Vision09/01/15)(ボトックスは、ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素を使う薬で、日本でも注射剤として、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣、痙性斜頸の適応で承認されている。近年では医療用としてだけでなく、美容外科領域において、筋弛緩作用を応用した「皺取り」や「輪郭補正(エラ取り)」の目的で使用されることが多い。)

緑内障の治療薬が美容目的で使用…インターネットで検索してみると、多くのネット販売がヒットする。しかもその値段はどれも7000円~1万を超えるものもあり高い。一生まつ毛が長いまま...という夢をかなえるには安いと思うのだろうか。ただし、医療用で使われるほどの薬であることを忘れてはならず、眼球に触れないよう指導を徹底していただきたい。
*ルミガン
商品名:LumiganOphthalmicSolution(ルミガン)
一般名:Bimatoprost(ビマトプロスト) 0.03%
効能効果:緑内障・高眼圧症治療薬
製造元:Allergan(アルゲン)

特発性肺線維症治療薬を新発売-塩野義製薬
2008/12/16 -キャリアブレイン

[要訳&コメント]
特発性肺線維症*治療薬「ピレスパ錠200㎎」(一般名・ピルフェニドン)が販売された。ピレスパ錠は、線維化そのものを抑制する新しい作用機序の薬、臨床試験でも、肺活量の低下を抑制することが確認され、無増悪生存期間も低下の抑制が見られた。

瓶が500錠、PTPが100錠。薬価は676.40円(200㎎)
*特発性肺線維症
原因不明の疾患で、肺胞壁の線維化が進行することにより、不可逆性の蜂巣肺(高分解能CTで肺が蜂の巣様に写る状態)形成を来す予後不良の疾患。一般的に拘束性障害(肺活量や全肺気量の減少)が認められる。症状(肺胞壁の線維化)が進行すると、肺での酸素と二酸化炭素の交換が困難になり、酸素吸入療法などが必要になる場合もある。特定疾患に指定されている。

 
おまけ... 米国医療制度に改革?!

米次期厚生長官にダシュル氏 オバマ氏、医療改革へ指名
2008年12月12日-朝日新聞

[要訳&コメント]
オバマ米次期大統領は11日、医療制度改革を担う次期政権の厚生長官にトム・ダシュル元民主党上院院内総務(61)を指名した。オバマ政権は国民皆保険を視野に入れた抜本的な改革が大きな目標。オバマ氏は「健康保険料は過去8年間で2倍近く高騰し、4500万人もの国民が無保険だ。医療コストを下げ、誰にとっても手頃な費用で済む医療制度を実現したい」と発言。


先進国で唯一国民皆保険制度を持たな行くにアメリカ。そのアメリカでついに国民皆保険を視野に入れた改革がオバマ氏の手によって実現するのか!?オーストラリア/カナダ/日本(+αで他国)の医療制度や薬学事情の比較を行っている私にとっては、非常に興味深いものであったので紹介した。将来アメリカに住みたいと思っている人には、大きな動機につながるかもしれない。

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