2009/02/24

Saya's 薬学ニュース vol.79-慢性不眠の非薬物療法とは?/ノロウイルスによる嘔吐・下痢に五苓散が効く/冷えたタリビッド耳科用液を点耳し目まいを起こした患者/薬局での後発品の選定マニュアルを公開/験談データベースで、がん患者の不安解消

<Today's news>
1. 慢性不眠の非薬物療法のレビュー
2. ノロウイルスによる嘔吐・下痢に五苓散が効く
3. 冷えたタリビッド耳科用液を点耳し目まいを起こした患者
4. 後発品は製剤的同等性とメーカーの信頼性を重視

おまけ. 体験談データベースで、がん患者の不安解消

慢性不眠の非薬物療法のレビュー
慢性不眠の治療のための非薬物療法について述べた家庭医向けレビュー論文
2009年1月28日-m3.com 提供:Medscape  ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]

慢性不眠*を治療するための非薬物療法について家庭医向けにレビューした論文が『American Family Physician』1月15日号に掲載された。不眠患者において、非薬物療法によって睡眠パターンの確実な持続的改善がみられ、薬物療法に頼る必要がないことが、研究で認められている。
認知行動療法(CBT)では通常、週1回60-90分間の治療を4-8回行う。不眠に対するCBTの複合的要素には、認知心理療法、睡眠衛生、刺激制限、睡眠制限、逆説志向、および弛緩療法が含まれる。
具体的には:
・特に遅い時間帯にはカフェインおよびニコチンの摂取を避ける。
・就寝前4時間は運動を避ける。毎日の運動は良好な睡眠を促進するが、就寝直前の運動は睡眠を妨害することがある。
・夕食を大量に食べることを避ける。
・昼寝を避ける。
・毎日、規則正しい就寝時刻と起床時刻を維持する。
・寝室を快適な室温に保つ。
・寝室をできる限り暗く保つ。
・リラクゼーション法を用いて、就寝前に規則正しく予定したリラクゼーション時間をもつ。
・騒音が問題になる場合には耳栓を使用する。
・朝、少なくとも30分間は日光を浴びる。      等があげられる
*慢性不眠
睡眠の導入もしくは持続が困難であること、または非回復性の睡眠を経験することが1カ月以上持続し、重大な日中の障害を引き起こしていることと定義される。原発性不眠は、別の睡眠障害、基礎となる精神的もしくは内科的症状、または薬物乱用障害によって引き起こされる続発性(もしくは共存性)不眠とは区別される。

不眠に関しては、症状の大小はあるにしても、薬局に通う多くの人に見られる症状であった。前に比べれば「睡眠薬」という悪いイメージを覆すような薬の開発により、薬により睡眠がきちんととれる状態であれば、薬の服用に抵抗なく服用を勧めるケースも多くなっているが、医療経済面で考えれば服用しないに越したことはない。未だに睡眠薬に対し抵抗感のある人には、上記のような指導により薬に頼らない睡眠の獲得法を一色に考えていくのも悪くはないのではないだろうか。

ノロウイルスによる嘔吐・下痢に五苓散が効く
2008. 12. 25-日経DI

[要約&コメント]
噴水様嘔吐と数回の水様性下痢、軽度の腹痛が出現したノロウィルスの患者に対し、五苓散(ツムラTJ-17)3パック(分3)を3日分処方した。五苓散は水代謝の異常(水毒)に対して処方する薬剤。ノロウイルスによって起こされる嘔吐や水様性下痢などの症状は、まさに水代謝異常そのものだという。
西洋薬との違いにおいては、フロセミド(代表的な商品名:ラシックス)などの利尿剤は、人体が脱水になっている場合でも、投与すると尿量を増やし、脱水を助長するが、五苓散などの利水剤は、人体が脱水になっている時は尿量を減らし、脱水を緩和させる効果があるという。そのことから、五苓散は漢方薬理上、「利水剤」というジャンルに分類される方剤である。五苓散は小児や高齢者に対しても安心して使えるという記載もあった。

ちょっと古い内容の記事であったが、まさに漢方の不思議、と思わされる内容であったので紹介した。

冷えたタリビッド耳科用液を点耳し目まいを起こした患者
2009. 1. 28-日経DI

[要約&コメント]
寒冷地に住んでいる患者が、冬場、自宅の机の引き出しの中に入れておいたタリビッド耳科用液(一般名:オフロキサシン)をそのまま点耳したところ、目まいを起こしてふらついた。薬剤師からは、本剤は室温保存であり、冷蔵庫に入れる必要はないとだけ言われており、点耳液の温度と、副作用としての目まいとの関係については一切説明がなかった。
・タリビッド耳科用液の適用上の注意として、使用する際の薬液の温度が低いと、目まいを起こす恐れがあるので、使用時には、できるだけ体温に近い状態で使用することとなっている。本剤に限らず、冷水を外耳道に注入すると目まいを起こす危険性があることは一般的に知られている。

果たして、新人の薬剤師さん達は薬液の温度まで注意して説明できているでしょうか?私の店舗で働いていた新人さん達の中では、聞いたことがないような…現在住んでいるエドモントンという年は、冬場-10~20℃になるのは当り前で、冷え込むときは-30以下になることも。地域などによっても説明の仕方は変わってきますね。今後の服薬説明のワンポイントとして是非記事を一読してみてください。

後発品は製剤的同等性とメーカーの信頼性を重視 2009. 1. 28-日経DI

[要約&コメント]
後発品選定の大原則は「薬価収載された後発品の全品目について、可能な限り情報を集めること」であるという。
<チェックポイント>
1.生物学的同等性、製剤的同等性、溶出試験の同等性
2.メーカーの信頼性と供給の安定性
3.薬剤に関する情報・資料の有無
4.薬価差
上記以外にも、患者が実際に使用した感想などもデータベース化し、評価の対象としている。
同等性の検討では、「厚生労働省の承認外基準である、製剤的同等性を重視している」
参考資料:「ジェネリック医薬品選定マニュアル」(PDF)外用剤の「ジェネリック医薬品選定マニュアル」(PDF)「メーカー別製品情報比較表」(PDF)「ジェネリック医薬品使用患者からの製品の優劣等に関する情報」(PDF)

後発医薬品に対する薬剤師の評価は全体的に低い。しかし、その薬剤師達は果たしてここまでのことを行い、評価した上で言っているのだろうか。論文などにおいても、後発医薬品と先発医薬品を比較して後発医薬品の効果が低いことを述べているものも多いが、そのいくらかは見当違いな比較方法を行っており、それが結果的に知識不足による誤解を周りに与える事につながっている。厳しい目で見ることは重要である。しかし、先入観や周りの言動だけで判断してしまうのは、薬剤師として正しい判断をしているとは言えない。上記の記事のような努力をしている人たちが初めて、サポーターとして患者さんの役に立つことができ、そして医療経済など全般に貢献できるといえるのではないだろうか。

おまけ... がん患者

体験談データベースで、がん患者の不安解消
2009/01/22 20:14-キャリアブレイン

[要約&コメント]
がん患者の不安を取り除き、家族を支援しようと、厚生労働省から研究費助成を受けた研究班が、「がん患者の語り」データベースの作成に取り組んでいる。同データベースは、英オックスフォード大が作った「ディペックス」という映像データベースがモデルになっている。同じ病気の診断を受けた患者に病気と向き合うために必要な情報を、家族や友人、医療に携わる人々にはがん患者の体験を理解してもらうための情報を提供するのが目的。
質問項目は、
・最初に診断を聞いた時に考えたこと
・傷ついた言葉
・励まされた言葉
・生活の変化
・闘病中に困ったこと
・闘病を振り返って感じたこと   ―など。

癌患者さんにとって、自分の病気や運命を受け止めるためには、長いプロセスが必要となる。何で自分だけがこんな目に…誰もが通る道であるが、経験者の声をきくだけでも大きな助けとなるのではないだろうか。また、そのがん患者さんと向き合う医療者にとっても重要な意味があると考えられる。医療者の場合、なかなか患者の立場になって考えることが難しい。自分は患者でもなければその家族でもないからである。経験をしていない者にとってその気持ちを察することは非常に難しい。特に死に直面する経験は、人生の中で1度しか経験できない人のほうが多い。ただし、医療者にとって大事なことは、必ずしも患者の立場に立つことではない様に思う。患者とはまた違い、医療者の立場としてどのようの向き合うべきなのか、患者が何を求めているのかを知るきっかけをこのデータベースを用いることで、見いだせるかもしれない。

2009/02/20

Saya's 薬学ニュース vol.78-外来初診時に、タミフル耐性診断が30分で可能に/男性型脱毛症用薬がドーピングの禁止リストから除外/冷え症の診かたと方剤の選び方(後編)

<Today's news>
1. 外来初診時に、タミフル耐性診断が30分で可能に
2. 男性型脱毛症用のみ薬「プロペシア」09年よりドーピングの禁止リストから除外
3. 冷え症の診かたと方剤の選び方(後編)

外来初診時に、タミフル耐性診断が30分で可能に
2009. 1. 20-日経DI

[要約&コメント]
外来初診において、インフルエンザウイルスのタミフル耐性を30分ほどで診断できる検査キットの開発が進んでいる。スマップ(SMAP;Smart Amplification Process)法という新たな遺伝子検査技術を応用したものである。
※SMAP法
血液一滴以下(数μL)程度の検体を前処理試薬と混合し加熱処理した後、そのまま増幅試薬に添加し、60度で反応させることで、簡便かつ迅速に特定の遺伝子を診断する方法

タミフル耐性のインフルエンザの場合、症状が悪化するばかりでなく死者も出ているのが現状である。このような簡易な診断方法の開発により、迅速に薬物感受性を確認でき、その上治療の切り替えが行えるのは、耐性菌が注目している中で非常に有用である。しかしさらなる問題は、耐性が発覚した際に、どんな治療法が代わりになり得るか、ということであろう。

男性型脱毛症用のみ薬「プロペシア」09年よりドーピングの禁止リストから除外
09年1月26日-日経ヘルス

[要約&コメント]
プロペシアは、世界で初めての医師が処方する男性型脱毛症用飲み薬。現在は日本を含めて世界60カ国以上で使用されているが、05年より禁止薬物の使用を隠蔽する「隠蔽薬」として禁止物質に指定されていた。近年の分析技術の向上により、フィナステリドを使用しても禁止物質の判別ができるようになったため、WADAが今回の除外を決定したという。
*プロペシア
一般名:フィナステリド
規格:0.2mg/1mg
薬効:「5α-還元酵素II型阻害薬」:脱毛の原因物質であるジヒドロテストステロンの産生をおさえる
副作用:ほとんどなし

科学の進歩に伴い、多くのオリンピック選手などの間での薬物使用が明るみに出やすくなってきている。彼らにとって、勝つことと負けることは生きていく上で雲泥の差なのであろう。しかし、だからと言って薬を使わずにありの姿で戦った人達が、薬を使った人たちに勝利を奪われるというのは、どんな言い訳を考えついてもやはりフェアとは言えない。そんな分野で薬学の進歩が影響を与えられているというのはうれしいことである。

冷え症の診かたと方剤の選び方(後編)
2009. 1. 21-日経DI

[要約&コメント]
今回の記事では「高齢男性の冷え」と「若い女性の冷え」について、症例を提示して説明している。高齢者の場合、加齢に伴う様々なホルモン作用の低下による熱産生の低下や末梢循環不全などが原因となり、八味地黄丸などが使用されるという。その他、多少の症状の違いにより、牛車腎気丸・真武湯等に変更・追加されることもあるという。
一方、若い女性の冷え症には当帰芍薬散が第1選択薬であるという。
<まとめ>
・四肢の冷えにはしもやけの薬である当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を用いる。
・胃腸機能が低下した冷えには人参湯(にんじんとう)を用い、むくみの所見があれば真武湯(しんぶとう)を追加する。
・高齢者の足の冷えには、漢方のホルモン補充療法と呼ばれる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いる。
・若い女性のぽっちゃり型体系の冷え症には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用いる。


女性にとって冷え症は、習慣病というか大敵というか…悩まされてます。漢方の場合は、西洋医学のような"この症状にはこの薬"という分難しいように感じるが、人は一人一人全く違うため、医学はこうあるべきなのでは?と思う事も多々ある。特にカナダで自然療法医師に会ってから尚更強く感じるようになった。薬剤師も、患者を一人一人の個人として診るように努力しなければ、見落としてしまうことがある。個人として認める努力をすると、患者は自然と応える努力をしてくれるものであると感じることがよくある。まずは自分から心を開く努力をしなければならないのではないだろうか。薬剤師としてだけでなく、一人の人間として。

2009/02/16

管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?/吸入指導なしでは「処方した」とは言えない/ディスペプシアに対する最良の第一選択薬?/第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?

<Today's news>
1. 管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?
2. 吸入指導なしでは「処方した」とは言えない
3. ディスペプシアに対する最良の第一選択薬は制酸薬
4. 第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?


管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?
2009. 1. 23-日経DI

[要約&コメント]
2型糖尿病の罹病期間が長く、最大用量の糖尿病治療薬を用いてもなお血糖管理不良の患者に厳格な血糖管理を行った場合、心血管リスクは減少するか、という疑問を検証すべく行われた研究において、標準的な血糖管理を行っても厳格な血糖管理を行っても、心血管リスクへの影響は変わらないことが示された。
糖尿病発症からより早い時期に、低血糖を回避しながら厳格な血糖管理を行えば、心血管リスクに好ましい変化が見られる可能性はあるとしつつ、現時点では、心血管危険因子の適切な管理がリスク低減において最も有効なアプローチではないか、と述べている。

血糖の値が高いほど、血糖のコントロールの指導を行うことは、当たり前と考えられてきた。多くの薬剤師もこの事実に関して疑いを持っていないだろう。それが、厳格に行っても行わなくても変わらない、という結果はある意味ショックである。しかし、だからと言って指導しないのではなく、生活習慣病である糖尿病とどのように共存し向き合っていくかの指導が必要なのではないだろうか。いかに無理をして血糖を下げるか、ではなく変えにくい生活習慣を少しずつ変えていくように促し、無理のない程度に生活に反映させていくことを、二人三脚で行うことができるのは医師よりも薬剤師であると考える。食事の指導や運動の必要性など、薬以外でも指導できることがあるのではないだろうか。

吸入指導なしでは「処方した」とは言えない
2009. 1. 23-日経DI

[要約&コメント]
高齢の喘息患者は、老化に伴って身体能力や理解力に大きな差が生じるため、一律な処方ではうまくいかないことも多い。吸入ステロイド薬をいくら処方しても、患者が正しく効果的に吸入できていなければ、宝の持ち腐れ。個人に合った薬剤選択や吸入指導が必要である。
それぞれの吸入ステロイド薬には、剤型、吸入器具(デバイス)、粒子の大きさなどによって患者との相性がある。「適切なデバイス選択と正しい吸入指導は、患者のアドヒアランスに直結する重要な要素。処方時に吸入手技の確認は欠かせない」という。

それぞれの吸入器における、高齢者への注意点などが細かく記載されており、服薬指導時の注意点に直結しているのでとても興味深いと感じた。普段の服薬指導に生かしていただきたい。
ちなみに、カナダのアルバータ大学の学生が1年生の現場実習で行う内容は、外用薬機器類の使用方法のカウンセリングである。カナダでは、1年生のうちから機器の使用方法カウンセリングの重要性が認められているのである。

ディスペプシアに対する最良の第一選択薬は制酸薬
2009/1/26-健康美容EXPO

[要約&コメント]
ディスペプシア*の治療では、最初に一般的な制酸薬を使用し、その後、必要に応じてより高度な薬剤に変更するほうが、最初からより強力な薬剤を使用するよりわずかながらも費用を抑えられることが、新しい研究によって示された。「新規のディスペプシア患者の大多数に対して、検査よりも観察に基づきプロトンポンプ阻害薬(PPI)が用いられるため、PPIは世界で最も多く処方されている薬剤の1つとなっており、社会的にも莫大な費用を要している」という。
*ディスペプシアdyspepsia
消化不良の医学的用語※編集注=慢性の腹部痛あるいは不快感を意味する。器質的疾患のない機能性胃腸症functional dyspepsia: FDをさすことが多い

医療経済の観点が入っている研究内容である。海外(オランダ)の論文である事からも納得であるが、実際の治療方針を経済の観点から再検討し、評価するという見方はある意味重要である。特に今の日本は負債を多く抱えていることもあり、経済的な無駄を省くことは実際に求められている。医師の経験によるもの(当り前)と新たな情報をどのように評価していくのだろうか。

第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?
2009. 1. 26-日経DI

[要約&コメント]
第2世代の抗精神病薬は高価であることから、その利益が本当に第1世代の薬剤に優るのかどうかについての議論が今も続いており、今回の研究で主な症状に対する効果において、第1世代製品と差がない第2世代製品が少なくないことを明らかになった。
用いられていた第2世代製品は9剤(アミスルプリド、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドン、ゾテピン)。対照薬として、95件の研究がハロペリドールを用いていた。その他(クロルプロマジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、フルペンチキソール、ペラジン、チオリダジン、レボメプロマジンなど)。

錐体外路系有害事象の面で、第1世代より第2世代のほうが有効であると考えられていたがどうやらすべての薬剤(第2世代)に対して言えるわけではないようだ。これも、医療経済の観点から考えると、無駄をなくすことにもつながる。一剤ごとに比較して検討されているので、興味深い結果である。

2009/02/14

Saya's 薬学ニュース vol.77-薬のネット販売で議論を

<Today's news>
薬のネット販売で議論を 厚労相、検討会の設置示唆
2009年1月23日-m3.com 提供:共同通信社  ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
舛添要一厚生労働相は、6月施行の改正薬事法について「検討会のようなものを考えている」と述べ、大臣直属の検討会を設置して議論する考えを示した。「両派(賛成派・反対派)の意見をよく聴き、国民的議論にしたい。検討会の結果、(ネット販売の結論が)変わることもあり得る」と話した。

一度決着がついたかのように思われる「ネット販売」の議論。これまで、反対派が訴えてきた「利便性への対応」に関し、予想外にもさらに議論が展開されることになりそうである。私が最も心配しているのは、体の不自由な人達やへき地に住む人たちへの薬の供給に関してである。医師不足やネット販売での購入が難しくなる一方、それを補完するような対策はあまり見受けられない。それらの人たちにとっては、セルフメディケーションにより未病や予防に専念することが重要となり、薬剤などの服用は必須な場合もある。デリバリーの充実や薬局へのアクセスなど、設備やアイディアが求められる。TV電話による薬局と患者とのやり取りなども、対面販売に値するほどの効果が得られるのではないだろうか?

2009/02/13

Saya's 薬学ニュース vol.76-後発品と「患者への通知」/FDAが皮膚局所麻酔薬の危険性を警告

<Today's news>
1. 後発品による自己負担減額幅‐「患者へ通知」が努力義務に
2. FDAが皮膚局所麻酔薬の危険性を警告


後発品による自己負担減額幅‐「患者へ通知」が努力義務に
2009年01月22日-薬事日報

[要約&コメント]
厚労省は、国民健康保険における後発品の普及促進策について説明。市町村国保が被保険者に対し、後発品に切り替えた場合の自己負担の減額幅について周知する取り組みを、努力義務とすることを明らかにした。「後発医薬品希望カード」を全ての被保険者に配ることも求めた。
、「医療の質を落とすことなく、医療費全体の適正化が図られ、保険財政のためになるという重要な取り組み」と協力を呼びかけた。

厚労省の動きも積極性が見受けられる。「後発医薬品希望カード」の内容に関しても概要が見えてきた分、納得できるものに思えてきた。今までは、制度に手を加えることで処方や調剤する側の体制が整えられてきたが、希望する側(患者)への啓蒙により新しい動きが生まれるかもしれない。

FDAが皮膚局所麻酔薬の危険性を警告
2009.1.16-薬事日報

FDAは消費者および医療従事者に対し、薬ともに皮膚に塗布する局所麻酔薬の不適切な使用により、生命にかかわるリスクが生じるとの警告を発した。該当する麻酔薬は、皮膚表面に近い神経末端の感覚を鈍らせる作用のあるリドカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プリロカインなどの麻酔成分を含有するもので、クリーム、軟膏およびゲル剤がある。

痛みを取り除いて、手術などをしやすくする。そんな役割を持つ麻酔薬も、あくまで薬であることを忘れてはならない。少し警告が遅いようにも感じたが・・・。気のせいだろうか

2009/02/12

Saya's 薬学ニュース vol.75-日本初の再生医療製品が保険適応/処方薬、「飲み切らない」が7割強/「リレンザ」を処方の高2男子が転落死

<Today's news>
1. 自家培養表皮「ジェイス」が保険収載 ヒトの細胞・組織を利用した日本初の再生医療製品
2. 処方薬、「飲み切らない」が7割強
3. インフルエンザ治療薬「リレンザ」を処方の高2男子が転落死


自家培養表皮「ジェイス」が保険収載 ヒトの細胞・組織を利用した日本初の再生医療製品
2009年1月21日-m3.com 提供:Japan Medicine(じほう) ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
自家培養表皮「ジェイス」*が1月から保険収載された。ジェイスは、ヒトの細胞・組織を利用した日本初の再生医療製品で、重症熱傷患者に使用できる。自家培養表皮治療に対する公的な保険の適用は、世界でも初めてという。同製品により、自家培養表皮の広範囲な移植が可能となり、これまで救命できなかった広範囲重症熱傷患者*を救命できる可能性があると期待されている。
*「ジェイス」
患者から採取した皮膚組織の細胞を培養して作製する表皮シートのこと。
*ジェイスの適応となるII度・III度の熱傷創が30%以上の患者は、年間約900人発生し、このうち約500人は死亡している。

熱傷創が40%を超えると、死亡する確率はかなり高くなるとのこと。その中で熱傷創90%の患者が新たな治療により一命を取り留める、という事実には正直驚いた。再生医療の是非は賛否両論であると思うが、人間らしく生きるための助けになるものであれば、このように存在してもよいように感じさせられる記事である。

処方薬、「飲み切らない」が7割強
2009/01/21 17:41-キャリアブレイン

[要約&コメント]
処方された薬を最後まで飲み切らずに余らせてしまう人の割合が全体の7割強(よくある」が23.2%、「たまにある」が49.8%)に上ることがわかった。また、処方薬を飲み忘れることがあるかとの質問では、「よくある」「たまにある」と答えた人の割合が全体の71.5%となり、飲み忘れの多い時間帯は、「昼」が53.6%で最多だった。
医師の指示を守って薬を正しく服用しているかとの質問には、全体の79.7%が「良好だと思う」と回答。
抗生物質・抗菌薬を処方されたことのある人に対し、服用を途中でやめたことがあるかと尋ねたところ、4割の人が「ある」と答えた。

昼の飲み忘れは、外出していたり、知り合いの目の前で服用したくないと感じている人が多いのではないだろうか。勤務時代素直に打ち明けてくれる人が多かった気がする。抗生物質や抗菌薬の処方が出た場合、飲みきるようにという説明は当り前のようにしてきたが、実行できていない人たちがこれだけいるとは。途中でやめるとなぜいけないのか、という理由をしっかり患者が把握できていないためではないだろうか。薬剤師の説明不足も要因になっているように感じる。

インフルエンザ治療薬「リレンザ」を処方の高2男子が転落死
2009.1.29 23:30-産経新聞

[要約&コメント]
厚生労働省は29日、インフルエンザにかかり、治療薬「リレンザ*」を処方された長野県松本市の高校2年の男子(17)が27日、自宅ベランダから転落して死亡したことを明らかにした。処方されたリレンザを服用したかどうかは不明。
*リレンザ
一般名:ザナミビル
薬効・薬理:A型,B型インフルエンザ感染症治療薬
副作用:頭痛,下痢,かすれ声,失神,ショックなど

タミフル耐性インフルエンザの出現により、リレンザが再び注目されるようになった。異常行動とタミフルの因果関係について、去年ニュースにも多々取り上げられていたが、タミフルによる服用と、インフルエンザそのものによる脳症によるものとの区別がまだついていないように感じる。

2009/02/05

Saya's 薬学ニュース vol.74-米国の中高年25人中1人に重大な薬物相互作用リスク/シロスタゾールは血小板凝集阻害を増強?!/OTC医薬品流通変革と消費者の行動変化調査/薬学老舗4校の調整機構離脱/ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?

<Today's news>
1. 米国の中高年25人中1人に重大な薬物相互作用リスク
2. 冠動脈ステント留置術を受けた抗血小板薬抵抗性の患者でシロスタゾールは血小板凝集阻害を増強
3. OTC医薬品流通変革と消費者の行動変化についての調査結果を発表
4. 老舗4校の調整機構離脱に「モラル問われる」と批判

おまけ. ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?

米国の中高年25人中1人に重大な薬物相互作用リスク
2009. 1. 19-日経DI

[要約&コメント]
米国では、中高年者の9割が医薬品やサプリメントのいずれかを使用しており、重大な薬物相互作用のリスクが懸念される組み合わせが4%に見られることを示した。
調査対象2979人の中で91%は医薬品/サプリメント使用者、42%が1製品以上のOTC薬を、49%が1製品以上のサプリメントを使用していた。最も多く使用されていた処方薬またはOTC薬は、高脂血症治療薬、抗凝固薬を含む心血管疾患治療薬(アスピリン、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、リシノプリル、メトプロロール、シンバスタチン、アテノロール、アムロジピン、フロセミド、エゼチミブ、バルサルタン、ワルファリン、クロピドグレル)。重大な薬物相互作用が懸念される組み合わせの半数に、非処方薬が関わっていた。また、半数弱に抗凝固薬(ワルファリンなど)や抗血小板薬(アスピリン)が関与していた。
原題は「Use of Prescription and Over-the-counter Medications and Dietary Supplements Among Older Adults in the United States

Saya's 薬学ニュース vol.59で高齢者は薬への感受性を受けやすいことから、高齢者に投与すべきでない薬について紹介したが、今回は相互作用に関する内容である。OTC医薬品やサプリメントの服用は、日本に比べて欧米のほうが多いように思う。セルフメディケーションが進んでいることもあるが、アメリカの場合は治療費や薬剤師の問題も絡んでいるだろう。日本でもOTC薬やサプリメントは少なからず利用者がいる限り、その点も含めた相互作用にはさらに注意を重ねていく必要がありそうである。

冠動脈ステント留置術を受けた抗血小板薬抵抗性の患者でシロスタゾールは血小板凝集阻害を増強
2009. 1. 19-日経DI

[要約]
冠動脈ステント留置術を受けたhigh post-treatment platelet reactivity (HPPR)症例に対して、標準的抗血小板療法(アスピリン+チエノピリジン系薬)にシロスタゾール*を追加した3剤療法の有効性が検討された。
アスピリンとチエノピリジン系薬の2剤による抗血小板療法(2剤療法)は、PCI施行例あるいは急性冠症候群の長期予後を改善することが知られている。一方、シロスタゾールは血小板と血管平滑筋細胞のPDE-3の選択的阻害により、細胞内のcAMP濃度を高める作用を持ち、待機的ステント留置術では、3剤療法(アスピリン+チエノピリジン系薬+シロスタゾール)は、2剤療法と比べてADP惹起血小板凝集が高く、新内膜過形成を抑制することが知られている。
研究結果から、「対象症例数は少ないが、冠動脈ステント留置術を受けたHPPR症例において、シロスタゾール追加は、クロピドグレル高維持量投与に比べてHPPRを抑制し、血小板凝集阻害を高めることが示された」との結論を導いている。
*シロスタゾール
商品名:プレタール(抗血栓薬)
副作用:頭痛,動悸,むかつき,軟便など

シード・プランニング、OTC医薬品流通変革と消費者の行動変化についての調査結果を発表
2009年01月19日-マイライフ手帳@ニュース (プレスリリース)

[要約&コメント]
今年6月からコンビニなどでも一部医薬品が買えるようになる薬事法の改正による消費者動向の変化と流通の変革について調査した。登録販売者がいればコンビニやスーパーで医薬品を購入する人は66%に達することがわかった。

年代別に比較すると肯定的見方が最も多かったのは40代で7割を超えた。一方、60代では4割が「そう思わない」と回答した。年代によって若干の差が見られる結果となった。また「夜間緊急時に医薬品を買いにいく店舗」として女性消費者の85%がコンビニをあげ、「他の買い物のついでに医薬品を買えたら便利な店舗」としては84%がスーパーと答えた。

今回の薬事法改正は、医薬品販売に多いな変化を与えることになりそうである。不景気により、医薬品購入事態は減るだろうが、利便性が増すことによりアクセスの量が増えるのでもしかしたら、OTC医薬品売上は上昇する可能性もある?かもしれない。しかし、無駄な医薬品使用が増えることは避けたいことである。その判断を、どこまで薬剤師・登録販売者がつけられるか、が今後求められてくるであろう。

老舗4校の調整機構離脱に「モラル問われる」と批判
2009年01月20日-薬事日報


[要約&コメント]

東京薬科大学、星薬科大学、昭和薬科大学、日本大学薬学部の老舗4校が、調整機構を介さず、独自に確保した実習先で実習を行う態度を鮮明にしたことについて、薬学教育協議会の望月正隆理事長(東京理科大学教授)は「モラルが問われる」と痛烈に批判。
各大学の調整機構に対する不満の最大は、調整機構を介した実習では、最後まで学生が具体的にどの薬局で実習をするかが分からない点にあるという。また、大学独自のカリキュラムを生かすため、やむを得ない措置だと説明する大学もあるが、そうした勝手な行為をした結果の実習で、どれほどよい実習が保障できるのだろうか」と疑問を呈した。

おまけ...たばこ

ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?
2009年1月20日-m3.com 提供:共同通信社

[要約&コメント]
ニコチンは導管を流れる水と一緒に根から葉に向けて移動。NtJATというタンパク質がニコチンを取り込み、葉の細胞内にある液胞という袋にため込んでいたことがわかった。この働きを邪魔すれば、ニコチンを含まない品種のタバコ(吸った気分はそのままに、ニコチン中毒からの脱却を助ける禁煙用たばこ)が開発できる可能性があるとのことである。

ニコチンが入っていなければイライラ感などは消えないだろうし、吸った感じは同じと言えるのかは疑問であるが、禁煙の推進に向けて大きな一歩であることは確かである。

2009/02/04

Saya's 薬学ニュース vol.73-青少年の不安障害にSSRIと認知行動療法の併用が有効 /OTC医薬品販売に「異業種の参入は避けられない」/高血圧治療ガイドライン2009/風邪には良質な睡眠が一番の薬/冷え症の診かたと方剤の選び方

<Today's news>
1. 青少年の不安障害にSSRIと認知行動療法の併用が有効
2. OTC医薬品販売に「異業種の参入は避けられない」
3. 高血圧治療ガイドライン2009を公表
4. 夜間の良質な睡眠が風邪をおとなしくさせる

おまけ. 冷え症の診かたと方剤の選び方(前編)

青少年の不安障害にSSRIと認知行動療法の併用が有効
2009. 1. 16-日経DI

[要約&コメント]
不安障害は青少年によく見られる精神疾患だ。(有病率は10~20%)この病気は患者の学校生活や家族関係を難しくする上に、成人後の不安障害や大うつ病のリスクを高める。小児期に有効な治療を行うことが重要と考えられるが、この病気に対する一般の認知度は低く、未治療となる患者も少なくない。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)のセルトラリン*と認知行動療法が、偽薬に比べて有効であることを明らかにした。また、これらを併用すると、治療に反応する患者の割合、症状改善レベルの両方がさらに向上することも分かった。
※原題・概要:「Cognitive Behavioral Therapy, Sertraline, or a Combination in Childhood Anxiety
小中高生の教師たちは、現在の子どもたちに頭を抱えているということをよく耳にする。時代の変化もあるが、この疾患を抱えている子どもたちもいるのかもしれない。認知度が低いことから教師や親でさえも気づけずに、辛い思いをしている子どもたちもいるのかもしれない。先生たちにも是非このような知識を持ってもらいたい。
*セルトラリン(SSRIs)
商品名:ジェイゾロフト
薬効:うつ病・うつ状態の治療薬
副作用:,吐き気,ねむ気,口の渇き,めまい,頭痛,下痢

OTC医薬品販売に「異業種の参入は避けられない」
2009年01月19日-薬事日報

[要約&コメント]
「ドラッグストア業態10兆円産業への道」をテーマにした講演において、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の会長は、改正薬事法に伴う登録販売者制度の導入により、OTC医薬品の販売に異業種が参入してくるのは間違いないとの考えを示し、それに対応するために、専門性を打ち出し、長時間営業など地域に密着したドラッグストア作りを行っていくことの重要性を強調した。その一つの策として、ドラッグストアの長時間営業に踏み込むべき、と述べている。さらに、「薬剤師を置いて第1類薬を販売できる店舗を作り」も重要視している。第1類に分類される薬を拡大し、薬剤師による相談のもとで薬を手に入れられるように、薬剤師の職能も拡大していきたいとのことである。

医薬品の購入は、薬剤師をとの相談によって行われる、という認識の拡大は賛成である。薬剤師の意識改革にもつながるし、セルフメディケーション推進にもつながるからである。しかし、いまやコンビニエンスストアが24時間営業をしている時代に、それに対抗するためにドラッグストアも営業時間を延長する、というのは少しナンセンスにも感じた。もちろん、ドラッグストアが生き残っていくためには必要なのだろうが、登録販売者をコンビニやスーパーにも配置して長時間営業をしているのであれば、消費者にとってはそれで充分であるし、わざわざドラッグストアに店を開けて置いてほしいとは思わないのではないだろうか。第一類を販売する薬剤師を配置したドラッグストアの営業時間を拡大するのには、大いに賛成なのだが。それこそ人件費の無駄遣いにつながらないだろうか。

高血圧治療ガイドライン2009を公表 日本高血圧学会 メタボ・CKDなどの合併例に留意した降圧求める
2009年1月19日-m3.com 提供:Japan Medicine(じほう) ※m3.com閲覧には会員登録が必要です
[要約&コメント]
(5年ぶりの改訂の)ガイドラインでは全編を通じ、“24時間にわたる厳格な降圧”の重要性を強調。メタボリックシンドロームやCKD(慢性腎臓病)など他疾患を合併した症例には、留意して治療に当たることを求めた。夜間や早朝に血圧値が上昇する「仮面高血圧」の早期発見のためにも、家庭血圧値(診察室血圧より5mmHg程度低い)の測定を促している。
降圧目標(診察室血圧)
・若年者・中年者で、130/85mmHg未満
・糖尿病患者、CKD患者、心筋梗塞後患者では130/80mmHg未満
・脳血管障害患者では、140/90mmHg未満
・高齢者は140/90mmHg未満
治療の第一選択薬は、これまでのα遮断薬に代わってCa拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5種類となっている。糖尿病/メタボリックシンドローム合併高血圧については、Ca拮抗薬からARB/ACE阻害薬が第1選択薬に推奨されている。
併用療法については、「RA系阻害薬+Ca拮抗薬」「RA系阻害薬+利尿薬」「Ca拮抗薬+利尿薬」「Ca拮抗薬+β遮断薬」を推奨。「利尿薬+β遮断薬」は推奨から外れた。

高血圧の患者は、来局患者の大半を占めるため、医師の治療方針などを含めた意味で把握しておいたほうがよい内容だと思われるので紹介した。特に変更点などは要チェックである。

夜間の良質な睡眠が風邪をおとなしくさせる
2009年1月19日-m3.com 提供:WebMD ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
夜間の睡眠が7時間未満である者は、8時間以上の睡眠をとる者に比べて、風邪原因ウイルスへの曝露後に風邪をひく傾向が3倍高いことが、最新研究で示された。さらに、睡眠は量ではなく質が大切であるという。

風邪に効く薬はない…私もそう信じている。良質な睡眠・食事・適度な運動を行うことだけで、風邪に打ち勝つことはできる、という一部がエビデンスに基づいていることがわかりうれしい記事であった。風邪っぽいなと思ったら、薬にすぐに頼るのではなく栄養をしっかりとって早めに床に入る...まずはその努力をしてみましょう!

おまけ...冷え性と漢方
冷え症の診かたと方剤の選び方(前編)
2009. 1. 16-日経DI

[要約&コメント]
冷え症は西洋医学にはない概念ですが、漢方では立派な疾患として考えられています。冷え症には、以下のようなタイプに分類される。
(1)手足など末梢が冷えるタイプ(年齢に関係なく女性に多い)
(2)胃腸の働きの低下を伴い、全身が冷えるタイプ(やせ型で小食の人に多い)
(3)末梢のうち特に下肢が冷えるタイプ(高齢者に多く、やや男性が多い)
(4)むくみを伴って冷えるタイプ(若い女性に多く、ぽっちゃりした色白の人に多い)
それぞれの分類における症例を紹介し、適当な漢方薬を選択しているので、詳しい内容は記事をみていただきたい。以下の漢方薬が処方されていた。
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう:ツムラTJ-38)
・人参湯(にんじんとう、ツムラTJ-32)
・真武湯(しんぶとう、ツムラTJ-30)

海外に住んでいて西洋人との感じることのひとつに、この「温度感覚」がある。周りが皆半そでで過ごしているのに、自分一人長そでだったり羽織るものを着ていることがよくある。自分が冷え症ということで差が大きく開いてしまっているのであろう。寒くないの?と聞いても「どこが?」といった感じの答え。完全に温度感覚機能が異なる人種なのだ、と思うようになった。西洋医学に冷え症が存在しないのもそれで納得である。鈍感というか、うらやましいというか…漢方に興味のある方はぜひ記事を見てください。

2009/02/03

Saya's 薬学ニュース vol.72-新型インフルエンザの対策(報道)/多剤耐性菌に23人院内感染 4人死亡/米ファイザーがワイス買収 6兆円/OTC市場占う「大衆肥満薬」の成否/ダイエット食品で女性入院

<Today's news>
1. 新型インフルで、BCP策定と家庭での準備呼び掛け
2. 多剤耐性菌に23人院内感染 4人死亡、福岡大病院 呼吸器通じ拡大か
3. 米ファイザーがワイス買収 6兆円、製薬最大手固める 競争力強化で、業界再編も
4. OTC市場占う「大衆肥満薬」の成否

5. ダイエット食品で女性入院 医薬品成分を検出

新型インフルで、BCP策定と家庭での準備呼び掛け
2009/01/26 12:24-キャリアブレイン

[要約&コメント]
新型インフルエンザのパンデミック(大流行)を想定し、BCP(事業継続計画)策定や家庭での準備を呼び掛けようと、東京都は1月24、25の両日、新宿西口広場イベントコーナーで、「新型インフルエンザ対策の現状と課題-先進事例に学ぶ事業活動のあり方」と題したシンポジウムを開いた。
NHK報道局では、放送機関としての責務を果たすためにパンデミック時でも放送を続けるという前提で、対策に取り組んでいる。
▽サージカルマスク36万枚、N95マスク3万6000枚を備蓄
▽PPE(個人防護具)と消毒薬の備蓄
▽PPEの脱着訓練
▽パンデミック時のシミュレーションVTRの作成  ―などの準備を済ませたという。

日本におけるインフルエンザ予防策はマスクに重点を置かれているが、ここカナダではマスクをしている人を見たことがない。薬局内で粉薬を混ぜる時に薬局用のマスクを着用したことがあるが、一般の人たちはどのように予防するつもりなのだろうか。国によってそれぞれ予防策は異なるだろうが、その点調べてみたら面白いかもしれない。

多剤耐性菌に23人院内感染 4人死亡、福岡大病院 呼吸器通じ拡大か
2009/01/27 00:00-共同通信社

[要約&コメント]
福岡市の福岡大病院救命救急センターの集中治療室(ICU)に運ばれた患者23人(4人が死亡)が、ほとんどの抗菌薬が効かない多剤耐性のアシネトバクター菌*に院内感染していたことがわかった。感染が人工呼吸器の使用を通じて広がったとの見方を示した。韓国で肺炎を発症し、日本に帰国後の昨年10月に入院、その後死亡した男性へのアシネトバクター菌感染が確認されたのをはじめ、呼吸器の部品から同菌が検出された。
アシネトバクター菌による院内感染は、国内では極めて珍しいという。
*アシネトバクター菌
土壌や水などの自然界や、人間の皮膚などに広く存在する細菌。通常は健康な人への病原性は弱いが、手術後など免疫力が低下した状態で感染すると重症化し、死亡することもある。

ICUなど、特に免疫の低下した患者の多い患者が集中する場所であったことが感染を拡大させた大きな要因であろう。死亡者も出ていることから、今後も警戒が必要である。洗浄による消毒を行ったにもかかわらず感染が拡大していることから、より厳格な消毒方法の検討も行う必要もありそうだ。

米ファイザーがワイス買収 6兆円、製薬最大手固める 競争力強化で、業界再編も
2009/01/28 00:00-共同通信社

[要約&コメント]
製薬業界で世界最大手の米ファイザーは26日、同業の米ワイスの買収で合意したと発表した。買収額は680億ドル(約6兆円)。両社の2007年の売上高を単純合計すると700億ドル規模に達し、最大手の地位を固める。 世界的な景気後退の影響で、米国では安価な後発医薬品が増加、経営を圧迫されているファイザーは規模拡大で競争力を高め、巻き返しを図る。製薬業界では新薬の開発費が高騰する一方、医療費抑制に向けて医療機関などが後発薬を積極的に使用。短期間で投資を回収しつつ、コンスタントに新薬を投入していく必要が強まり、規模拡大が課題となっている。

この景気後退が製薬企業にも大きな影響を与えているようだ。医療費の削減も大きな課題ではあるが、新薬の開発は求めている人がいる限り必要なことでもある。今後、ますます新薬の金額は上がりそうである。そんな中、日本は先発品を使い続けるのだろうか。もしくは、この不景気が功を奏して後発医薬品使用に拍車がかかるのか?!

OTC市場占う「大衆肥満薬」の成否
2009/01/29 14:44-キャリアブレイン

[要約]
大正製薬が、グラクソ・スミスクライン(GSK)から、OTCである肥満改善薬「アリー」の国内製品化権を獲得した。「アリー」を医療用として開発するのか、それとも直接、OTCとしての商品化を目指すのかについても、今のところ明確な方針を示していない。(現段階ではOTCとしての商品化の可能性が高いと推測されている。)
米ではOTC薬として半年間で300億円近くを売り上げたヒット商品だが、今のところ、他の主要国での承認はなく、副作用(激しい下痢)も強いことから、日本でのOTC販売は難しいとも言われている。

ダイエット食品で女性入院 医薬品成分を検出
2009/02/03 00:00-共同通信社

[要約&コメント]
30代の女性がインターネットで個人輸入したダイエット用食品から、国内で医薬品として承認されていない「シブトラミン」と、薬事法で劇薬に指定されている「フェノールフタレイン」の2種の医薬品成分が検出されたと発表した。女性は肝機能障害などで一時入院したが、食品の服用をやめると症状は改善したという。

せっかくなので大衆肥満薬の記事を2つ続けて紹介した。1つ目は、日本のOTC薬に画期的な事象を巻き起こす可能性のある記事であるが、2つ目の記事でそれを大きく覆されるような、マイナスの内容の記事である。同じ薬であるため比べることはできないが、この内容を見て厚労省が果たしてGoサインを出すのだろうか。4日後の記事であるとはいっても、タイミングが悪いとしか言いようがない…
しかし、日本でしっかりとした審査により承認した薬が販売されれば、逆にネットなどで海外の安全性が確保されていない薬に手を出すことを減らせるかもしれない。厚労省の判断はいかに?

2009/02/02

Saya's 薬学ニュース vol.71-昨年の医薬部外品市場は横ばい/厚労省処方希望カードを配布 後発薬使用促進/「薬歴管理」は薬剤師の新たな役割/ パーキンソン病治療剤の製造販売承認を取得/21%の453万世帯が滞納

<Today's news>
1. 昨年の医薬部外品市場は横ばい
2. 処方希望カードを配布 後発薬使用促進で厚労省
3. 「薬歴管理」は薬剤師の新たな役割
4. パーキンソン病治療剤の製造販売承認を取得
おまけ. 21%の453万世帯が滞納 08年、国保で過去最悪 保険料上昇で支払えず

昨年の医薬部外品市場は横ばい
2009/01/21 12:22-キャリアブレイン

[要約&コメント]
昨年の医薬部外品市場は、前年とほぼ同額の1兆978億円だったことが、マーケティング会社「富士経済」の調査で分かった。項目別では、「薬用スキンケア」「薬用ヘアケア・スカルプケア」が微増だった半面、「薬用オーラルケア」や「ドリンク剤」などが減少し、全体では横ばいとなった。 4月の改正薬事法の施行に伴い、一部の医薬品が薬局やドラッグストア以外でも販売可能となるため、「機能や訴求の競合する一部の医薬部外品については、少なからず影響を受ける可能性がある」としている。

法改正によりコンビニなどで購入できるようにはなるが、この不景気ではそこまで大きな伸びを見せるかは疑問である。緊急時の薬へのアクセスが容易になることは喜ばしいことだが、安易な薬の使用などが起こることは避けたい。コンビニ内であれば、薬剤師よりも登録販売者の存在が重要となるので、4月以降の状況が楽しみでもあり、不安でもある。

処方希望カードを配布 後発薬使用促進で厚労省
2009年1月21日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
厚生労働省は20日までに、患者が病院窓口や薬局で提示して後発医薬品(ジェネリック医薬品)の処方を希望できる「お願いカード」を、中小企業の従業員らが対象の協会けんぽや後期高齢者医療制度の加入者に配布する方針を決めた。
後発薬の普及率は17%(06年度、数量ベース)にとどまり、12年度までに30%以上に引き上げる国の目標達成は厳しい状況。08年度の診療報酬改定で処方せんの様式が変わり、医師が後発薬への変更を認めない場合だけ「変更不可」欄にチェックするようになったが、医師や薬剤師の理解不足もあり後発薬の使用はあまり進んでいない。

後発品の普及率は17%。確か、H12年度が12%(16%?)であった気がするから、ほとんど変わっていないということである。国の政策によっても伸び悩みは隠せない状況である。処方希望カードの配布がどこまで影響を与えられるか。今までにも、すでに処方希望カードが存在していたのが少ししか利用されず、使用してもよいのか躊躇している患者も多くいた。後発医薬品の処方を希望する人の割合が多いことから、処方カードが定着すれば控え目な患者の手にも後発医薬品を提供できるようになるかもしれない。もう少し様子を見ていきたい。
参考記事:沢井製薬 患者さん対象調査報告~ジェネリック医薬品での処方・調剤を依頼する患者さんが着実に増加 前回13.2%から20.5%へ~

「薬歴管理」は薬剤師の新たな役割
2009/01/22 20:12-キャリアブレイン

[要約&コメント]
医業経営コンサルタントグループのMMPG(メディカル・マネジメント・プランニング・グループ、東京都中央区)は、「どうなる日本の医療2009!」をテーマに、定例研修会を都内で開いた。薬学部の定員増に伴う薬剤師の増加については、高齢者への重複投薬を防ぐための薬剤師の新たな役割として、『薬歴管理』を提案している。
その他、がん患者の不安を取り除くための取り組みとして、英国の任意団体「ディペックス」の映像データベースについて紹介された。消費税率引き上げの是非について言及しているが、消費税率を上げることはやむを得ないとしても、高齢者への臓器別医療やメタボ健診など医療の無駄を省くべき、と主張している。

薬歴管理に関しては、日本は進んでいるように感じる。ここカナダでも一部の州で薬歴の管理を薬剤師の仕事としてとらえているところもあれば、細かく管理していない州もある。患者一人一人の投薬記録などは勿論みたことがない。薬歴管理は勿論行っていくべきと考えているが、時に薬剤師の仕事をしばりつける原因ともなり得るとも感じている。待ち時間の延長や、患者の負担割合増加にも影響している事は確かである。薬歴の本来のあり方などを再度見直し、有効に活用されるような法規制が必要ではないだろうか。

パーキンソン病治療剤の製造販売承認を取得

2009/01/23 10:29-キャリアブレイン

[要約]

大日本住友製薬は、パーキンソン病治療剤「トレリーフ(R)錠25mg」(一般名・ゾニサミド)の製造販売承認を取得した。ゾニサミドは国内では抗てんかん剤(製品名「エクセグラン(R)*」)として1989年に発売されている。同社では、トレリーフの作用機序について「まだ完全には解明されていないが、ドパミンの放出を促進すると共に、ドパミンの分解を阻害することが考えられる」と説明している。レボドパ含有製剤と併用する。
*エクセグラン
一般名:ゾニサミド
薬効・薬理:てんかんのけいれん発作を予防
副作用:肝臓や肺の障害、血液の異常、尿路結石など

おまけ...

21%の453万世帯が滞納 08年、国保で過去最悪 保険料上昇で支払えず
2009年1月19日-m3.com 提供:共同通信社 ※m3.com閲覧には会員登録が必要です

[要約&コメント]
厚生労働省は16日、自営業者や無職の人が加入し市区町村が運営する国民健康保険*で、保険料(税)を1カ月でも滞納した世帯が2008年6月1日現在、453万世帯に上ったと発表した。同4月に75歳以上が後期高齢者医療制度に移ったため世帯数自体は減少したが、加入世帯に占める割合は20・9%で過去最悪となった。
「無所得や低収入の加入者が増え、年々上昇する保険料を支払う余裕がないため」と分析している。09年は景気後退でさらに事態が悪化する可能性が高い。
*国民健康保険
国民健康保険 農家や自営業者向けの公的医療保険として始まったが、近年は高齢者や無職者が約半数を占める。健康保険組合や協会けんぽに入っていた人が離職すれば国保加入となる。75歳以上は昨年4月から後期高齢者医療制度に全員移った。所得が低い人が多い一方で高齢化から医療給付費が膨らみ、一般的に保険料負担は健保組合などより重い。加入者全員に掛かる「均等割」と所得に応じた「所得割」を合算して保険料を決める自治体が多い。低所得者には軽減措置がある。

保険に加入していない世帯が453万。国民皆保険を誇ってきた日本にとっては信じられない数字である。景気後退によりさらなる無保険者が増えることが予想されるが、その人たちを守っていくにはどうすればよいか。Saya's 薬学ニュース vol.24vol.26で、日本の医療はアメリカの医療に近づいている、という事実に警鐘を鳴らしている。