1. 米国の中高年25人中1人に重大な薬物相互作用リスク
2. 冠動脈ステント留置術を受けた抗血小板薬抵抗性の患者でシロスタゾールは血小板凝集阻害を増強
3. OTC医薬品流通変革と消費者の行動変化についての調査結果を発表
4. 老舗4校の調整機構離脱に「モラル問われる」と批判
おまけ. ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?
米国の中高年25人中1人に重大な薬物相互作用リスク
2009. 1. 19-日経DI
[要約&コメント]
米国では、中高年者の9割が医薬品やサプリメントのいずれかを使用しており、重大な薬物相互作用のリスクが懸念される組み合わせが4%に見られることを示した。
調査対象2979人の中で91%は医薬品/サプリメント使用者、42%が1製品以上のOTC薬を、49%が1製品以上のサプリメントを使用していた。最も多く使用されていた処方薬またはOTC薬は、高脂血症治療薬、抗凝固薬を含む心血管疾患治療薬(アスピリン、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン、リシノプリル、メトプロロール、シンバスタチン、アテノロール、アムロジピン、フロセミド、エゼチミブ、バルサルタン、ワルファリン、クロピドグレル)。重大な薬物相互作用が懸念される組み合わせの半数に、非処方薬が関わっていた。また、半数弱に抗凝固薬(ワルファリンなど)や抗血小板薬(アスピリン)が関与していた。
原題は「Use of Prescription and Over-the-counter Medications and Dietary Supplements Among Older Adults in the United States」
Saya's 薬学ニュース vol.59で高齢者は薬への感受性を受けやすいことから、高齢者に投与すべきでない薬について紹介したが、今回は相互作用に関する内容である。OTC医薬品やサプリメントの服用は、日本に比べて欧米のほうが多いように思う。セルフメディケーションが進んでいることもあるが、アメリカの場合は治療費や薬剤師の問題も絡んでいるだろう。日本でもOTC薬やサプリメントは少なからず利用者がいる限り、その点も含めた相互作用にはさらに注意を重ねていく必要がありそうである。
冠動脈ステント留置術を受けた抗血小板薬抵抗性の患者でシロスタゾールは血小板凝集阻害を増強
2009. 1. 19-日経DI
[要約]
冠動脈ステント留置術を受けたhigh post-treatment platelet reactivity (HPPR)症例に対して、標準的抗血小板療法(アスピリン+チエノピリジン系薬)にシロスタゾール*を追加した3剤療法の有効性が検討された。
アスピリンとチエノピリジン系薬の2剤による抗血小板療法(2剤療法)は、PCI施行例あるいは急性冠症候群の長期予後を改善することが知られている。一方、シロスタゾールは血小板と血管平滑筋細胞のPDE-3の選択的阻害により、細胞内のcAMP濃度を高める作用を持ち、待機的ステント留置術では、3剤療法(アスピリン+チエノピリジン系薬+シロスタゾール)は、2剤療法と比べてADP惹起血小板凝集が高く、新内膜過形成を抑制することが知られている。
研究結果から、「対象症例数は少ないが、冠動脈ステント留置術を受けたHPPR症例において、シロスタゾール追加は、クロピドグレル高維持量投与に比べてHPPRを抑制し、血小板凝集阻害を高めることが示された」との結論を導いている。
*シロスタゾール
商品名:プレタール(抗血栓薬)
副作用:頭痛,動悸,むかつき,軟便など
シード・プランニング、OTC医薬品流通変革と消費者の行動変化についての調査結果を発表
2009年01月19日-マイライフ手帳@ニュース (プレスリリース)
[要約&コメント]
今年6月からコンビニなどでも一部医薬品が買えるようになる薬事法の改正による消費者動向の変化と流通の変革について調査した。登録販売者がいればコンビニやスーパーで医薬品を購入する人は66%に達することがわかった。
年代別に比較すると肯定的見方が最も多かったのは40代で7割を超えた。一方、60代では4割が「そう思わない」と回答した。年代によって若干の差が見られる結果となった。また「夜間緊急時に医薬品を買いにいく店舗」として女性消費者の85%がコンビニをあげ、「他の買い物のついでに医薬品を買えたら便利な店舗」としては84%がスーパーと答えた。
今回の薬事法改正は、医薬品販売に多いな変化を与えることになりそうである。不景気により、医薬品購入事態は減るだろうが、利便性が増すことによりアクセスの量が増えるのでもしかしたら、OTC医薬品売上は上昇する可能性もある?かもしれない。しかし、無駄な医薬品使用が増えることは避けたいことである。その判断を、どこまで薬剤師・登録販売者がつけられるか、が今後求められてくるであろう。
老舗4校の調整機構離脱に「モラル問われる」と批判
2009年01月20日-薬事日報
[要約&コメント]
東京薬科大学、星薬科大学、昭和薬科大学、日本大学薬学部の老舗4校が、調整機構を介さず、独自に確保した実習先で実習を行う態度を鮮明にしたことについて、薬学教育協議会の望月正隆理事長(東京理科大学教授)は「モラルが問われる」と痛烈に批判。
各大学の調整機構に対する不満の最大は、調整機構を介した実習では、最後まで学生が具体的にどの薬局で実習をするかが分からない点にあるという。また、大学独自のカリキュラムを生かすため、やむを得ない措置だと説明する大学もあるが、そうした勝手な行為をした結果の実習で、どれほどよい実習が保障できるのだろうか」と疑問を呈した。
おまけ...たばこ
ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?
2009年1月20日-m3.com 提供:共同通信社
[要約&コメント]
ニコチンは導管を流れる水と一緒に根から葉に向けて移動。NtJATというタンパク質がニコチンを取り込み、葉の細胞内にある液胞という袋にため込んでいたことがわかった。この働きを邪魔すれば、ニコチンを含まない品種のタバコ(吸った気分はそのままに、ニコチン中毒からの脱却を助ける禁煙用たばこ)が開発できる可能性があるとのことである。
ニコチンが入っていなければイライラ感などは消えないだろうし、吸った感じは同じと言えるのかは疑問であるが、禁煙の推進に向けて大きな一歩であることは確かである。
2 件のコメント:
こんにちは☆
日本はだんだんと少しずつ暖かくなってきました。
梅とか咲き始めて、春が近づいてるんだなーと感じます。
OTC流通変革に対する消費者の意識調査の記事は興味深いですね。
これまで日本の医薬品業界がOTCに関して、売り手を介さずにセルフで商品を買わせることを追求した販売戦略を行い続けたことも原因なんでしょうね。
それにより、店に来るまでにすでに買いたい商品が決まってしまっている人が多くなり、誰から買うか?に興味なくなっちゃったんでしょうね。
大丈夫かな、薬剤師の立ち位置・・・。
薬科大の調整機構離脱の記事は、個人的には面白いと思います。
今の薬局業界全体を考えると収束に向かうのは間違いないので、みんなが一度に同じことをやってしまっては、やっぱり一つのゴールに収束するしか道が見つからないですもんね。
それなら例えリスクがあったとしても、あえて他と違うことをして道を分けてくれたほうが可能性が広がると思います。
次の世代はそれを元により良い方法を作り出す感じで。
とりあえず今回の件は、近くに展開している教育制度の整った調剤チェーンと連携すれば簡単に解決しそうですよね。
「どんな薬局に行くか分からない」よりも、たしかに意外とそのほうが安心かも。
>健さん
度々コメントの投稿ありがとうございます。
健さんの意見をうかがうことができ、さらにまた考えさせられました。
このようなやり取りを続けていけたらと思っております。
日本へ一時帰国していたり、他の市へ旅行していたり、と薬学ニュースを更新する時間がとれず、コメントに対するお礼も遅れて申し訳ございません。
OTC販売に関しては、今後6月の改正により大きく変化するかもしれませんね。登録販売員がどのように活躍するのか、そして薬剤師の役割は?そこは私も気になっています。
OTC販売時に、第一類に関しては薬剤師が対応することになりますが、果たして薬剤師がどこまで説明できるのか。OTCに関する勉強は大学内では行われていない所がほとんどなので、その点を会社がどこまで対応しているのかが気になる点です。ガイドライン(公的な教科書)のようなものができるといいのですが。
調整機構の話は、実は自分の母校でも話が挙がっていたので「とうとうきたか」といった感じでした。しかし、この記事の中に自分の母校の名前がなかったので逆に「あれ?」と思いました。
健さんのおっしゃる通りで、特徴を出すにはいつまでも同じことを繰り返しているわけにはいかないのでしょうね。記事では悪者のように書かれていますが、この変革期においては起こるべくして起きたことのように思います。これもすべて学生のために下した決断だったのでしょう。
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