2009/02/16

管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?/吸入指導なしでは「処方した」とは言えない/ディスペプシアに対する最良の第一選択薬?/第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?

<Today's news>
1. 管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?
2. 吸入指導なしでは「処方した」とは言えない
3. ディスペプシアに対する最良の第一選択薬は制酸薬
4. 第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?


管理不良の糖尿病患者に厳格な血糖管理は有効か?
2009. 1. 23-日経DI

[要約&コメント]
2型糖尿病の罹病期間が長く、最大用量の糖尿病治療薬を用いてもなお血糖管理不良の患者に厳格な血糖管理を行った場合、心血管リスクは減少するか、という疑問を検証すべく行われた研究において、標準的な血糖管理を行っても厳格な血糖管理を行っても、心血管リスクへの影響は変わらないことが示された。
糖尿病発症からより早い時期に、低血糖を回避しながら厳格な血糖管理を行えば、心血管リスクに好ましい変化が見られる可能性はあるとしつつ、現時点では、心血管危険因子の適切な管理がリスク低減において最も有効なアプローチではないか、と述べている。

血糖の値が高いほど、血糖のコントロールの指導を行うことは、当たり前と考えられてきた。多くの薬剤師もこの事実に関して疑いを持っていないだろう。それが、厳格に行っても行わなくても変わらない、という結果はある意味ショックである。しかし、だからと言って指導しないのではなく、生活習慣病である糖尿病とどのように共存し向き合っていくかの指導が必要なのではないだろうか。いかに無理をして血糖を下げるか、ではなく変えにくい生活習慣を少しずつ変えていくように促し、無理のない程度に生活に反映させていくことを、二人三脚で行うことができるのは医師よりも薬剤師であると考える。食事の指導や運動の必要性など、薬以外でも指導できることがあるのではないだろうか。

吸入指導なしでは「処方した」とは言えない
2009. 1. 23-日経DI

[要約&コメント]
高齢の喘息患者は、老化に伴って身体能力や理解力に大きな差が生じるため、一律な処方ではうまくいかないことも多い。吸入ステロイド薬をいくら処方しても、患者が正しく効果的に吸入できていなければ、宝の持ち腐れ。個人に合った薬剤選択や吸入指導が必要である。
それぞれの吸入ステロイド薬には、剤型、吸入器具(デバイス)、粒子の大きさなどによって患者との相性がある。「適切なデバイス選択と正しい吸入指導は、患者のアドヒアランスに直結する重要な要素。処方時に吸入手技の確認は欠かせない」という。

それぞれの吸入器における、高齢者への注意点などが細かく記載されており、服薬指導時の注意点に直結しているのでとても興味深いと感じた。普段の服薬指導に生かしていただきたい。
ちなみに、カナダのアルバータ大学の学生が1年生の現場実習で行う内容は、外用薬機器類の使用方法のカウンセリングである。カナダでは、1年生のうちから機器の使用方法カウンセリングの重要性が認められているのである。

ディスペプシアに対する最良の第一選択薬は制酸薬
2009/1/26-健康美容EXPO

[要約&コメント]
ディスペプシア*の治療では、最初に一般的な制酸薬を使用し、その後、必要に応じてより高度な薬剤に変更するほうが、最初からより強力な薬剤を使用するよりわずかながらも費用を抑えられることが、新しい研究によって示された。「新規のディスペプシア患者の大多数に対して、検査よりも観察に基づきプロトンポンプ阻害薬(PPI)が用いられるため、PPIは世界で最も多く処方されている薬剤の1つとなっており、社会的にも莫大な費用を要している」という。
*ディスペプシアdyspepsia
消化不良の医学的用語※編集注=慢性の腹部痛あるいは不快感を意味する。器質的疾患のない機能性胃腸症functional dyspepsia: FDをさすことが多い

医療経済の観点が入っている研究内容である。海外(オランダ)の論文である事からも納得であるが、実際の治療方針を経済の観点から再検討し、評価するという見方はある意味重要である。特に今の日本は負債を多く抱えていることもあり、経済的な無駄を省くことは実際に求められている。医師の経験によるもの(当り前)と新たな情報をどのように評価していくのだろうか。

第2世代の抗精神病薬は本当に第1世代に優るのか?
2009. 1. 26-日経DI

[要約&コメント]
第2世代の抗精神病薬は高価であることから、その利益が本当に第1世代の薬剤に優るのかどうかについての議論が今も続いており、今回の研究で主な症状に対する効果において、第1世代製品と差がない第2世代製品が少なくないことを明らかになった。
用いられていた第2世代製品は9剤(アミスルプリド、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドン、ゾテピン)。対照薬として、95件の研究がハロペリドールを用いていた。その他(クロルプロマジン、ペルフェナジン、フルフェナジン、フルペンチキソール、ペラジン、チオリダジン、レボメプロマジンなど)。

錐体外路系有害事象の面で、第1世代より第2世代のほうが有効であると考えられていたがどうやらすべての薬剤(第2世代)に対して言えるわけではないようだ。これも、医療経済の観点から考えると、無駄をなくすことにもつながる。一剤ごとに比較して検討されているので、興味深い結果である。

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