2008/12/13

Saya's 薬学ニュース vol.28-抗生物質の長期使用は腸内の有益な細菌に悪影響 /ネット販売でヒアリング/利尿剤の配合剤2製品が登場へ/医薬品ARB・利尿剤の配合剤2製品が登場へ /一般薬リスク分類を見直し‐酸化マグネシウムが第2類

抗生物質の長期使用は腸内の有益な細菌に悪影響
2008/12/01 -Dr赤ひげ.com

[要訳&コメント]
抗生物質を長期間または繰り返し使用すると、腸内の有益な細菌に悪影響を及ぼす可能性のあることが新しい研究で判明した。腸内細菌はヒトの栄養摂取、代謝および免疫反応のさまざまな側面で役立っている。
今まで、体内の有益な細菌に及ぼす害は少ないと考えられていたシプロフロキサシン*に焦点を当てた研究で、抗生物質治療が終了した後、腸内細菌がほぼ治療前のレベルに戻るまでに4週間を要することが判明したという。ただし、腸内細菌の数に変動がみられる間、腸障害の徴候を訴えた被験者はいなかった、との報告もある。

抗生物質が処方された患者様に対し、「腸内細菌のバランスが崩れることで便が緩くなることがあります」。という説明は、新人の薬剤師でも行っていることだが、この説明が理論的に説明されているのが今回の研究である。悪い菌(細菌・真菌)を殺す抗生剤は、体内の善い菌(腸内細菌)を同時に殺してしまう事は想像できるものであるが、このように腸内細菌には時間がかかっても再生能があるため、服用を中止すれば便の状態も改善する、ということも理にかなった説明であったと言える。ただし、回復までにかかる期間が想像よりも長いことに驚かされた。
*シプロフロキサシン
商品名:シプロキサン
分類:ニューキノロン系
適応菌種:ブドウ球菌,レンサ球菌などの化膿菌や,リン菌,大腸菌,シゲラ属,インフルエンザ菌,緑膿菌,そのほか炭疽菌などの病原菌等
呼吸器,泌尿生殖器,のど,眼,耳鼻科領域の感染症,乳腺炎や外傷・手術後の感染予防に広く用いられている薬。

【民主党議員懇】ネット販売でヒアリング
2008年12月01日-薬事日報

[要訳&コメント]
民主党の「適正な医薬品販売を検討する議員懇談会」は、厚生労働省や内閣府の規制改革会議、日本薬剤師会から医薬品のインターネット販売についてヒアリングした。参加者はそれぞれ
日薬:「会員薬局からは、今回のネット販売規制で地方の薬局が困るという声は1件も来ていない」と回答。
規制改革会議:、▽利便性を求める消費者の声▽地方の中小薬局が困るという声▽ネットでも安全性担保が技術的に可能--とする根拠に関し、「事業者が把握した根拠がある。ネット上で効能・効果等を読むことで店頭での説明の代わりが可能と考える」などと回答
厚労省:「そもそも薬は危険なものであり、他の商品とは全く異なる」との認識を示した上で、「年内には厚労大臣と相談し、省令化したい」とした。
民主党は、「薬は他の商品とは異なる。市場原理に則ると危険だ」とし、対面販売が原則との認識を示し、今回のヒアリングはあくまでインフォーマルな会合であると説明した。

規制改革会議からは、ネット販売を行う会社などの訴えに似た内容を意見しているが、それに対して特に無反応な形で他の参加者(日薬・厚労省)が意見しているように感じた。意見交換ということなので、このような形でもよいと思われるが、規制改革会議が発言した「ネット上で効能・効果等を読むことで店頭での説明の変わりが可能と考える」ことに関しては、私も完全ではないが納得出来る部分がある。消費者も少なからず薬は他の商品とは別物と考え、最低初めて服用する際にはどんな注意があるのか、どんなふうに飲むのかなどは読むのが自然ではないだろうか。果たして他の参加者はどのように感じたのであろうか。

【薬食審医薬品第一部会】ARB・利尿剤の配合剤2製品が登場へ
2008年12月02日-薬事日報

[要訳&コメント]
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は新たな8成分(配合剤含む)と、名称変更などを審議、承認を了承した。承認されたのは以下の薬。
・高血圧治療薬<ARBと利尿剤の配合剤>
「コディオ配合錠6・25、同12・5」(ノバルティス・ファーマ):バルサルタン/ヒドロクロロチアシド
「エカード配合錠4、同8」(武田薬品):カンデサルタンシレキセチル/ヒドロクロロチアジド
・パーキンソン病
「トレリーフ錠25mg」(大日本住友製薬):ゾニサミド(「エクセグラン」と同一成分)
・加齢黄斑変性症
「ルセンティス硝子体内注射液2・3mg/0・23mL」(ノバルティスファーマ):ラニビズマブ(遺伝子組み換え)
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)(効能追加)
「アドエア250ディスカス」(グラクソ・スミスクライン):サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル

ARBと利尿剤の配合剤は「プレミネント(ロサルタンカリウム/ヒドロクロロチアジド)」につづいて2番目となるらしい。今回二種類のARB(ディオバンとブロプレス)で2個所から販売が承認されたが、どのような違いが出てくるだろうか。これから出てくる新薬にも注目しておきたい。

【厚労省】一般薬リスク分類を見直し‐酸化マグネシウムが第2類
2008年12月02日-薬事日報
[要訳&コメント]
一般用医薬品のリスク分類見直しで、制酸・緩下剤の「酸化マグネシウム」を第3類薬から第2類薬に変更された。医療用酸化マグネシウムの添付文書で重大な副作用の追加の添付文書改訂が行われたことに基づくものであるという。
参考記事:「酸化マグネシウム」の長期投与に注意

酸化マグネシウムの副作用に関しては、Saya's 薬学ニュース vol.24で紹介しているが、これがきっかけとなりリスト分類の見直しを早急に行ったことに多少驚いている。対応が早いではないか。
いまや「酸化マグネシウム」は比較的安全な薬ですよ、とは言えなくなってしまった。第一類第二類には、それなりの理由があって分類されているので、その理由に関して個人で勉強が必要と感じた。対面販売が重要視されている中、対面販売によるメリットを何かしらの形で示すことができれば、薬剤師の職能も向上するのでは?そのためには、積極的な勉強が必要である。

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