日本の用量では患者は救えない
2008年11月7日-nikkei BPnet
[要訳&コメント]
日本と米国とでは用法・用量が大きく異なる例がある。特に重症の患者に対しては、米国流の大量投与が救命に必須となるケースは多い。「感染性心内膜炎*に対するペニシリンGの投与」例をあげて比較してみよう。
米:1日2000万単位を持続静注または4時間ごとに分割点滴静注
日:1回30万~60万単位を1日2~4回。「通常量より大量使用」が認められているが、用法が筋注のみで、点滴薬としての使用は承認されていない。
厚生労働省による承認段階では以上のように決められているが、実際のところこの用法・用量どおりに使用されていないとのこと。
日本の厚労省は、薬の承認に対し一般的に厳しいという見方がある。これは、害を最小限とし少ないながらも益を得ようという、とても日本人らしい考え方である。もちろん、欧米人と比較して体系も遺伝子も大きく異なることから、欧米のデータをそのまま使うことは出来ないというのは確かである。しかし、治療において一番大切なのは患者を良い方向へと導くこと。患者を助けたい、という思いと、規則を守らなければならない、という思いの板挟みになっているのは医師なのではないだろうか。そんな医師におんぶに抱っこにならないよう、薬に関しては的確なアドバイスを出せるように、日頃から文献などを読んだり、世界で行われている治療に関しても目を向ける必要があることを、この記事から学んだ気がした。
*感染性心内膜症とは?
感染性心内膜炎は、心臓の内側を覆う膜(心内膜)および心臓弁に生じる感染症。 症状が、他の感染症とあまり変わりがないため、診断が難しいとされている。
原因:細菌(または頻度は少ないが、真菌)が、血流中から侵入して心臓弁にとどまり、心内膜に感染することで炎症を起こす。通常正常な血液中に最近は認められないが、傷口などから侵入することもある。
症状:
・急性:38.9〜40℃の高熱、頻脈、疲労感など
・亜急性:疲労感、37.2〜38.3℃の軽度の熱、中等度の頻脈、体重減少、発汗、赤血球数の減少(貧血)など
こころとからだの相談室:医薬品の販売方法が変わるそうですが?
2008年11月10日-毎日新聞
[要訳&コメント]
Q:薬局で購入した薬のパッケージに、【第1類医薬品】という表示がありました。以前はなかったと思うのですが、どういう意味でしょうか?
A:平成20年4月よりリスク(副作用など)の程度に応じて3つのグループに分類されました。
新たな制度では、リスクが高い第1類医薬品は、必ず薬剤師が説明したうえで販売することになります。一方、リスクの比較的低い第2類医薬品・第3類医薬品については、薬剤師だけでなく、「登録販売者」という新たな専門家が適切な情報提供や相談対応をすることで、販売できるようになります(表)。
第1類医薬品は、これまで医師の処方せんに基づいて医療用医薬品として使われていた成分を含むものがほとんどです。効き目のよい分、副作用などにもより慎重に注意する必要があります。第1類医薬品は必ず薬剤師にご相談のうえ、ご購入ください。
薬事法の規制緩和を目指す特区を提案-香川県NPO法人
2008年11月14日-nikkei BPnet
[要訳&コメント]
現在の薬事法では、特定保健用食品(トクホ)を除いて、素材の機能性などを食品に表示することはできない。そのため、機能性食品を開発する多くの企業が、“薬事法の壁”に苦労している。トクホの許可取得などは、人での臨床試験なども含め億単位の資金が必要だからである。一方、薬事法で認められた成分以外にも、食品の中には機能性などにおいて明確なエビデンスを確立しているものもあるため、そういった製品に対し「機能性食品において配合素材の機能性やエビデンスなどの表示を許可する」構造改革特区の提案を内閣府に申請したという。
私がお世話になった研究室でも、化粧品などの開発に励んでおり、今回ハンドクリームの販売スタートした。この製品も、自分たちで人体実験をしたところ、あらゆる不都合点を改善したことから、効能効果をうたえるほどの製品であることが判明。しかし、トクホ申請するには莫大な費用と月日がかかることから、医薬部外品としての販売をかいしさせた。“薬剤師法の壁”は想像以上に大きいようだ。
そのようなケースを見ているからこそ、上記の申請に関しては賛成であるが、気をつけたいのは「効能効果や機能性」がやたらと表示されるようになると、消費者の混乱を招くということである。
その中で、薬剤師が表示されているエビデンスを正しく読み取り、患者さんに的確なアドバイスと適正な製品を選択して差し上げることにより、薬剤師の新しい役割が見出せるのではないだろうか。
おまけ…在宅医療に関して
Intel、在宅患者向け医療管理システム「Health Guide」を発表
2008年11月11日 08時10分-ITmedia
[要訳&コメント]
Intelは、医療機関が遠隔から慢性疾患を持つ患者や高齢者の健康状態を監視し、患者に病状説明やアドバイスを送信できるシステムの予備実験を開始する。
患者の血圧や心拍数のデータ管理、処方せんや医師の診察などを患者に知らせる通知機能、患者と医療機関との通信ツールを含むインタラクティブなツールを提供。医療機関は患者の症状を常に把握でき、患者は自宅にいながら症状について問い合わせることができる。
最近では「テレビ電話」の技術がかなり進化し、誰もが"無料"で使える時代となった。声だけでなく、顔を見ると妙に安心するもので、海外と日本とのやり取りにも関わらず、あたかも相手がすぐそばにいる感覚にさえ陥ってしまうから不思議である。これを医療に応用することで、在宅医療で「何かあったら…」と不安を抱えている患者の"安心"を得られるかもしれない。
これを薬学の背景で捉えたらどうだろう?薬の質問においても、「このOTC薬は飲んでも大丈夫?」という質問があった場合など、そのパッケージなどを視覚でとらえられる事などが可能だ。また、電話ではどうしても相手の顔が見えない分、誤解などを招くこともあるが、TVを通して薬剤師が笑顔で答えるだけでも、薬局での服薬指導と同等の効果を得られるのではないだろうか。
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